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☆見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました!  作者: うにかいな
第漆章 ~無明長夜《むみょうちょうや》~

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145話 手加減無

 サーミャ達は、ロザリナを誘拐したガベルが実の父親であったことを知る。

そして、ヘレンも異母姉妹であることがわかった。さらにガベルから組織について調べようとするが、ナガアキの能力により爆死させられる。

いたたまれない空気になってしまったが、2人は今のルティーナ達の状況を確認すべくヘギンズの元へ転移する。

そしてシャルレシカを残し、サーミャも参戦準備に入る。


 その頃エリアルは、デダイパスにヘレンを人質にとられ部屋中を糸だらけにされ、相手が有利な状況下になり苦戦していた。

デダイパスはまるで準備が出来たかのように、ヘレンの首元に毒爪をちらつかせた。


「おい、その物騒な魔法剣を2本ともそこに捨てな」


「くっ」


デダイパスは、エリアルが投げ捨てた剣に糸を飛ばし絡め奪い取った。


「ごめんなさいっエリアル~」


「気にするなっ、大丈夫」


「ほぉ余裕だな……おまえはこの剣がなきゃ、何も出来ないんだろ?」

「お~っと、変な動きをすんなよぉ~俺の複眼は360度すべて見渡せるんだからな」

「しかし不思議だな、これは……ただの剣にしか見えないぜ」


「(こいつ距離を開けて、僕にとどめを刺してこないと言うことは、普通に魔法も使えると警戒してくれてるのか?)」

「(しかし、手はある……)」


そして、デダイパスは糸を噴射し、エリアルとヘレンを繭のように包み込み始めた。


「見えないく動けない状態で、何をされるか恐怖におののきながら殺されるんだぜぇ~たまんねぇよなぁ?」


エリアルはデダイパスが余裕で圧倒していると思い込み油断していると悟った瞬間、大剣が奪われた方向に背中を向けようとする。



 ――なぁエリアル。剣士が剣をなくしたらどう戦う? ――



「(……今が、その時ですね師匠。試してみます)」


「くっくっくぅ~さぁて、どっちから串刺しにしてやろうかなぁ~まぁ一撃では殺さねぇけどなぁ」


「貴様っ! ヘレンさんには手を出すなっ、人質がなくなったら後悔するのはお前だぞっ」


「なんだなんだ? この期におよんで、まだ騎士様気取りかよっ」

「(やはり面倒なほうから先に殺るべきだな……)お望み通り~っお前から先――」


デダイパスが、毒爪をエリアルの繭に突き刺そうとした瞬間――。

攻撃が通るより早く大剣が、エリアルに吸い寄せられるように飛んで行き、繭を引き裂き背中の鞘に戻るのであった。


「なっ剣が勝手に……」


「『ソード・オブ・ボルケーノ』っ」

(【(ほのお)】)


 エリアルは剣の柄をもち背中に閉まったまま広範囲に炎を広げ、自分を取り巻く繭を燃やし尽くすのであった。

それを見たデダイパスは慌てて後方に距離を置き、エリアルは剣を抜きヘレンも繭から救い出した。


「大丈夫か? ヘレンっ」


「えぇ、大丈夫よ。ありがとう」

「でも、足が拘束されていたせいで動かないわ」



「くそっくそっくそぅ~っ、なんで奪ったはずの剣が……」


エリアルの持つ大剣とそれをいれる鞘には『アース・マグネ』が施してあり、毎回充電は必要だが発動すれば対象になる大剣が10m以内であれば自分の元へ呼び戻すことができるのであった。


「さて君を確保させてもらうよ」


「くそっくそぅ~っ (確保だとぉ~秘密をばらしたら、俺の命はねぇ)」


覚悟を決めたデダイパスは、部屋中にはりめぐらしている糸に毒を拡散し始める。

すると彼の周りからだんだん侵食するかのように気持ち悪い紫色に染め上がり、エリアル達の足元へ迫っていた。

エリアルは牽制しながら、急いで『エクソシズム・ケーン』を拾い、ヘレンに投げるのであった。


「ヘレンさんっ、これで特大の火炎魔法をっ」


「はいっ、『フレイム・インボルブ』っ」


ヘレンの放った一撃は、張られていたすべての糸とデダイパスもろとも一瞬で燃え尽き灰にしてしまうのであった。


「え……こ……これが5倍の威力?」


「ご、ごめんなさいっ……証人を――」


「しかたないよ。ヘレンさんが無事でよかった」

「さすがに怪我をしている君を1人にするわけにはいかないから、後はルナ達に任せよう」




 一方、浜辺で交戦中のアンハルトは、凄まじい剣撃をデブラクにあびせるが、硬い甲羅に攻撃が跳ね返され苦戦を強いられる。

さらにハサミによる反撃で、アンハルトの盾は真っ二つにされてしまった。


「けけけけぇ~、このハサミは普通のデブラクより3倍ぐらいの切れ味かあるんだぜぇ~」

「気を付けねぇと、足や手が胴体からさよならしちまうぞ」


デブラクはハサミに注意をひきつけ、口から消化液を吹き付け始めた。

その液によりアンハルトの剣や鎧の半分近くが溶けかけ、さらに苦戦を強いられていた。


「(くそっハサミにも注意しなきゃならないのに……あの泡も厄介だな)」


「ほら~ほら~ほら~どうしたんだ? いかに高速で動き回ろうと、もう装備がぼろぼろじゃねぇか? 俺に任せろとか生き甲斐ってたクセに『碧き閃光』の(かしら)が聞いてあきれるな~」


「ふん、言ってくれるね」

「お前たちにはロザリナをどうするつもりか聞かなきゃならないから、どうやって殺さずにどう倒そうか? なんて甘い考えを――」


「はぁ? 殺さずに倒すぅ~だとぉ~俺は、お前を殺してやるがなっ」



そしてデブラクはハサミを突き出しアンハルトの胴体を狙った、その時――。


「あっぎゃ~っ?」


「どうしたんだい? 俺を真っ二つにするんじゃなかったのかい?」


「は、は、ハサミがぁ~っ」


アンハルトの剣先は的確にハサミの支点に突き刺さり、破壊していたのであった。


「なっ、俺の装甲がそんな溶けかけの剣でっ」


「なぁに、甲羅の隙間の間接を狙っただけさ」


「あんな攻撃の最中に的確に1点だけ狙えるはずが――な、なんだその目はっ」


アンハルトの目は生まれつき動体視力がずばぬけており、それは巨大な魔力を持ち合わせていながら魔法が使えない副作用だとオリハーデに鑑定されていた。

それに加え高速移動ができるのも魔力の恩恵であり、あまりにも動きが早すぎ周りに誰も居ないところでなければ本領が発揮できないというのが弱点であった。

彼は、さらに目に魔力を集中することで碧い魔眼となり相手の動きを、スロー再生のように眼で追うことが出来るようになる。


デブラクはハサミを1つ失ったことで攻撃が単調になり、消化液を乱射するがアンハルトに簡単にかわされ全く掛からなくなってしまった。

そしてアンハルトは容赦なく残る手足7本すべての付け根に正確に剣を打ち込み、体だけにするのであった。


「手足にサヨナラするのは君だったようだね」


「ぐわぁ~」


「(これを使うしか勝ち目がなかったが……視力が回復するまで時間がかかるのが欠点だな)」

「(ルナリカ、後は任せたぞ)」

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