131話 「ヘルアド」ノ予言
ヘルアドから聞かされるシャルレシカの出生。
シャルレシカはただの捨て子ではなく、ヘルアドの姪のサハナの娘であり、一族から娘が生まれた時は抹殺するように言われていたのであった。
それができなかったサハナは、アジャンレ村に自分の大事な水晶と一緒に孤児院の前に捨てていたのであった。
それを聞いたシャルレシカは感傷に浸っていたが、突然襲来した悪意に気付く。
そしてルティーナはすぐに不審者を拘束するが、襲撃してきた理由もわからず自害されてしまうのであった。
シャルレシカは、いつになく活動的に自ら死体を触り、ヘルセラを焼き殺そうとした理由を探ろうとしていた。
「ど、どうしたんだシャルっ、お前らしくねぇな」
「んんっ、ちょっとぉ怒ってますぅ~」
「やっと出会えたぁ私の肉親がぁ~殺されかけたんですよぉ~」
「早くしないとぉ~完全に読めなくなってしまいますぅ~」
「こやつ……」
(シャルなりに、複雑なんだな)
「間に合ったかい? シャル」
「あの時ぃ……あの時と同じ光景がぁ~」
「水晶を見てくださいぃ~」
そこにはドグルスの時と同じように、豪華な部屋で誰かの前に膝まずいていた。
さらに例の入れ墨のある女と会話をしていたのだ。
「? ルナっ、入れ墨のある女だぞっ……」
「うん、生国際の屋台で聞いた話の女性よね」
(裏で繋がってる?)
「もうぅ、これ以上はぁ……」
シャルレシカはできるだけ情報を取ろうとしたが、死亡して数分で過去は見えなくなってしまうため、これ以上は調べることができなかった。
馬琴は、ドグルスの様にあがめる人物から、バルストの様に暗殺する命令がくだされたことに間違いがないと。
1つ気になるのが入れ墨がある女となんの会話をしていたのかが気になっていた。
「あぁ、まさかあんたたちに助けられるなんてねぇ……」
「なんか理由がありそうじゃの」
「あのぉヘルセラさん……話を聞いてくれませんか?」
「なんじゃ小娘」
「8年前にヘルアドさんが王宮に行った理由を教えてください」
「……あれは世界が崩壊する事件が、10年以内に起こるのを止めるためだと言っておったが」
「王都事件から10年以内て、もう2年もないじゃない!」
「止めるっつってもよ、どうやって――」
「勇者様だ! 『勇者召喚』するのさ」
(!)
「姉上の息子は召喚師と呼ばれる、全属性の魔法が使える上位の魔法使いじゃった」
「! そいつって『ディメンジョン・デストール』ってやつが使えるのかっ」
「さすがサーミャ様! 正式名称までご存じとはっ!」
「ミヤ、何よそれ?」
「例のイスガから持って帰ってきた魔法書に書いてあった魔法だよ」
「……イスガの事も知っておられるのですか?」
「そこまでご存じなら、話しても良いかもな……」
――ヘルセラは、ヘルアドの生い立ちを語り始めた。
今から約100年前のノモナーガで、ヘルアドとヘルセラは双子の姉妹として、全属性の魔法が使える召喚師の父と大占い師の母の間に生を受けるのであった。
それから10年の月日が経ち、母の占いで世界が崩壊する事件が2年以内に起こると、その当時のノモナーガ王に打診し、父はちょうど78年前にあったほうき星が通過する日に『ディメンジョン・デストール』を使って『勇者』と呼ばれる、災いを振り払う者を3人呼び寄せた。
その3人の名前までは知らないが、男2人と女1人で皆、常人でない能力を持っており、翌年に災いの象徴として現れた巨大な魔物を見事撃退し世界の平和が保たれた。
しかし、世界を救った3人が存在するノモナーガは多国間での交渉で、戦力過多によることが懸念され戦争の引き金になってしまう恐れがあったが、その後、戦争が起こることもなく、そんな事があったことすら皆忘れさられてしまった。
「『勇者』が3人?」
(やっぱり居た……『勇者』、しかし黒幕に繋がってる……なぜ)
「そうさの、しかし、その勇者達はその討伐後、全員は行方不明になったと……」
(戦争の引き金になる原因として排除されたのか? それとも元の世界に還させられた? どこかに……いや、今、生きているとしても100歳近くになる)
「その巨大な魔物は、最初にイスガ王国を襲って、その後、勇者達に倒されたと聞いておる」
「その時にイスガ王国は消滅したが、その大惨事が起こる前に1人の科学者の家族がイスガの技術を持ち出して亡命しておったのだ」
「イスガの技術を持ち出した? それがこの杖ってわけか」
「そうじゃ、そしてその娘の水晶もな」
「こ、この水晶はぁイスガのぉ……そして、お母さんの形見ぃ」
「姉上は子供の頃から占い師としての素質が高く、未来を予知することに長けていた」
「そしてその予知で、イスガから逃げ延びた家族達と出会えた」
イスガから亡命した科学者は、イスガ王が魔物襲撃の際に取る手段を理解していたため、それに逆らい家族を連れ封印前に脱出していたのであった。
ヘルセラは話しを続ける。
ヘルアドはその科学者の息子と恋仲になり、10年ぐらい後に結婚し、長女のサハリンと長男のサハリドを授かるのであった。
サハリンは占い師として、サハリドは召喚師としての素質を持っていたため、それぞれの道を歩んだ。
そしてサハリンは20歳になり占い師の男と結婚し、シャルレシカの母になるサハナを産むのであった。
一方、サハリドは召喚師としてヘルアドと一緒にノモナーガの王都に出向いたが、2人とも王都の爆発事件に巻き込まれて帰らぬ人となってしまったのであった。
(サハリドさんがマコトを『勇者』を召喚しようとしたってことなの?)
(そうなりそうだな……だけど召喚師はもうこの世には……居ない)
「そうか……私の姪になるのか……ワシが一族最後の末裔になってしまったと思っておったが」
「……100歳まで生きてみるものよのぉ」
「災いと言ってすまんかったの、みな、私を助けてくれてありがとう。改めて名前を教えてくれぬか?」
「シャルレシカ=ブルム――、いぇ、シャルレシカ=ベルメンですぅ」
「そうかシャルレシカというのか……お前たちに出会えて、私も運命が変わったのかもしれんな」
(よかった、打ち解けられて)
「でも、ヘルセラさん、ここに居たら、また命が狙われるかもしれません! 身を隠された方が……」
「そう言ってももう20年近く住んでおるこの村からは出たくないのぉ」
「もう余生もそう残っておらんし、その時は受け入れるさね」
「で、でも……」
「流石に家を壊してしまったので、家の引っ越しぐらいは手伝わせてください」
「そうかい? そうしてもらえると助かる」
「せっかく逢えた姪ともう少し話しがしたいからの」
「はぁ~い。ばぁば」
「ばぁば? わ、ワシのことか……」




