130話 「シャルレシカ」ノ出生
ルティーナとサーミャとシャルレシカは、サーミャの持つ『エクソシズム・ケーン』をヴァイスに託した老婆が住んでいると思われる『ジェイスト村』に訪れた。
老婆は簡単に出会えることができたもののルティーナとシャルレシカは塩対応されるも、サーミャを『救世主様』とあがめられるのであった。
老婆の名前は、ヘルセラ=ベルメン。
姉のヘルアドが、ルティーナと馬琴の出会いの起点である『王都爆発事件』に巻き込まれて亡くなったと聞くのであった。
馬琴は、意固地になりきってしまったヘルセラからどうやって情報を引き出すか悩んでいた。
そこにサーミャがルティーナにささやくのであった。
「(マコマコあたいがなんとかする! 任せなっ)」
「なぁばあさん、その杖を何でヴァイスに託したんだい?」
「救世主様、それは、私も姉ほどではありませんが未来視ができます」
「その事件の後、私は姉の代わりに杖を使うにふさわしい者を占い、それにかかわっていたその男に託すことにしたのです」
「だが信じられないっ、あなた様が、このような輩と一緒に行動されていたなんて――」
「ちょっと待ってくれねぇか? この2人は災いをまき散らしてねぇぞ」
サーミャはヘルセラに、彼女たちに出会うことがなかったら自分は廃人のまま、人生を終えるところだった話しの下りを説明した。
それだけではなくロザリナやエリアルも運命を好転するきっかけを作ってくれたのだと……。
「な、災いをもたらすどころか、幸せを呼び込んでいるですって! そんな馬鹿なっ」
「姉の予言は絶対のはずっ!」
「そもそも、そこの碧い瞳のガキからは、2つの思念を感じるぞっ」
(ガキガキ言うなっ!)
(まぁまぁ落ち着けルナ~)
(でも凄げぇなこの婆さん……俺の存在も解るのか? シャルもそうだったな)
ヘルセラはサーミャの言葉を信じたかったが、自分たち占い師の一族の未来視が一度も間違っていたことはないと否定するのであった。
シャルレシカが自分もたまに予知夢を見ることがある話をしようとしたが、彼女を邪険にしょうとした時、あることに気付く。
「黙――……な、なぜ! お主がその水晶をもっておるっ!」
ヘルセラはシャルレシカの水晶が目に入り、取り乱し始める。
その水晶は、15年前に亡くなった自分の姪のサハナの所有物であり、彼女は紛失していまったと言っていたのであった。
「ま、まさか貴様が盗んでおったのかっ!」
「ちょちょ! 落ち着けよ、ばあさんっ」
「これはシャルが、18年前にアジャンダの孤児院に捨てられた時に一緒に身に着けさせられてたもんなんだっ」
「まさか……18年前じゃと! 流産したと聞いておったのに……娘、可愛さに生かしておったのかぁ~馬鹿者がっ」
「もし娘が生まれたら殺せと、姉上に言われておったではないか!」
「ばぁさん、おかっかねぇことを口走ってるが、なんでシャルが生きてたらまずいんだよっ」
ヘルアドから聞かされていた未来視では、サハナに息子が生まれたらなら占い師を継承させ、娘なら災いを呼ぶ元凶となる為、葬るように言われていたのであった。
「私はぁ、要らなくて捨てられたんじゃぁなかった……う、うっく…………」
「シャル~良かったね」
「あなたの事、大切に思ってくれてのことだったのね」
「うんっ……お母さぁ~ん……わ~ん…………」
「……」
「な、ばあさんっ、頼むから、こいつらを悪の元凶みたいに言わないでくれねぇか――」
その時、シャルレシカは泣きながらも、突然騒ぎ出すのであった。
「あ、凄い悪意がぁ近づいてぇ? 消えたぁ?」
「どうしたのシャル?」
「一瞬ん、悪意が近くにぃ……」
「や、やはりお主らは、災いを運んで」
ルティーナ達を睨みつけながら、ヘルセラはシャルレシカの様に敵の存在に気付いているわけではないが、感覚で危険を感じ始めていたのであった。
「2人ほどぉ、悪意が一瞬だけ反応がある人影が、この家の周りにぃ……」
「一瞬だけ?」
(悪意を殺しながら近づいて来たってことか?)
「囲まれてるのか……んっ、なんか焦げ臭くねぇか?」
外にいる不審者は、ヘルセラの家の周りに火を放っていたのであった。
(殺しに来ずに、放火で殺すってことか?)
(直接手を下さず事故に見せかける手法……まさかドグルスの所属する組織のやつらか?)
「ルナっ、どうする? このままじゃ」
ルティーナはシャルレシカに2人の居場所の方向を教えてもらう。
サーミャはヘルセラに、とにかく黙って見守るように説得した。
ルティーナは、ヘルセラとシャルレシカに手を当て2m程の【硬】を描き身の安全を確保するのであった。
続けてルティーナは床に両手をあて、シャルレシカの指示にしたがって敵の居る方向に対して、それぞれの手を軸を外向きにした16m程の【凍】を2つ描き、氷柱を発生させ炎の拡大を抑えつつ、外にいる不審者を拘束した。
「ミヤっ、そっちの奴は任せたわよっ」
「あいよっ」
しかし2人の不審者は氷に拘束された瞬間に、自害するのであった。
「ルナぁ~っ、こ、こいつら死んでるぞっ! お前やりすぎたんじゃねぇのか?」
「なっわけ……まさか、正体を知られないために……」
「なぁルナ、こいつらはあたい達を狙ったのか?」
「マコトが言うには、ノスガルドから転移と飛翔を使って移動しているから、最初っからここに来るって解ってなければできない計画だと……」
「てことは、ヘルアドさんを?」
ルティーナは安全を確認して、ヘルセラとシャルレシカの硬化を解除した。
「な、今のはなんじゃっ、か、身体が動く?」
「ヘルセラさん? 命を狙われる理由はありませんか?」
「ふ、ふざけるなっ、私の家をボロボロにしよってからにっ!」
「ああぁ……これはですねぇ、あいつらが放火してきたから止む得なく……」
「これを引き起こしたのは貴様らが元凶ではな――」
「いい加減にしろよっ、なんでわからねぇんだっ自分が狙われたって! あんたも気づいてるんだろ?」
「う……」
ヘルセラが襲われた理由を探るために、シャルレシカは自殺した1人の男に触れ記憶を読み取ろうとしていた。
「(こ、こやつ……我々一族とは逆の過去視ができるというのか? やはり異端……)」




