126話 「ドグルス」ノ行動
ルティーナ達は、『オブシディアン・ストーン』の採取を始めた。
しかし、予想以上に発生する魔物デリエジに苦戦する。
ロザリナも杖を使うことで平常時でも光魔法が使える収穫もあったが、現状、効率が悪い状況が続く。
サーミャとシャルレシカをとりまとうデリエジを退治したが、毒と痺れに冒され2人はうなだれていた。
ロザリナはすぐさま、『キュア・ポイズン』と『キュア・ヒール』をかけ回復させるのであった。
「た、助かったぜリーナ」
「えっくえっく……お、嫁にぃいけませ~ん」
「マコマコにぃ~また恥ずかしい姿をぉ~」
(あははは……)
さすがにシャルレシカはトラウマになってしまい、戦意喪失してしまった。
それを見ていた馬琴は、根本から先に叩かないと1日で終わらせるのは難しいと判断した。
「ん? ルナ黙り込んで? あ、そうかそうか、シャルで興奮しちまったマコマコを説教してんのか?」
(俺って一体……)
「ううん、海とここまでの経路を潰してしまえばいいんじゃないかなってさ」
「問題は、シャルのやる気次第なのよねぇ~」
馬琴の考えは、デリエジは鉱山全体に居るわけでなく水路に沿って流入しているに過ぎないと。
なので、シャルレシカに魔物の気配を細かく探らせることで水路を把握できるという。
「なぁ元気だせよぉ~シャル様ぁ?」
「……」
「(駄目そう……)私もシャルみたいになっちゃうの怖いけど、シャルの為に頑張るね」
「! 駄目ですぅ! ルナを穢す奴らはぁ許せませんっ! 私がなんとかしますぅ~!」
「「(あはは……シャルはやっぱり、ルナの事が大好きなんだね)」」
シャルレシカは奮い立ち魔物の気配を細かく調べ、その内容をロザリナに伝えた。
ロザリナはその情報を的確に、地面に地図のように描き始めた。
「なるほどな、これで大体どっかからか共通して通っている水路が読めるってことか?」
「で、それがわかったらどうすんだ?」
馬琴が狙うのは、海から繋がる最終的な1本か2本の水路を断ち切ることで、鉱山に残るデリエジを殲滅することでの永久封鎖であった。
数分後、ロザリナの描いた水路の地図を元に水路の源を発見する。
その場所に対して、サーミャに『ロック・バスター』を放たせ、そこのドリル状の岩の後ろにルティーナが4mほどの大きさにした【堅】を描いたクナイを差し穴を掘らせる。
『ロック・バスター』でもある程度の岩壁しか一度に破壊できないため、あと追撃で同じことを繰り返し、その内に水源にたどり着き同時に噴き出す水とデリエジに対して、【堅】を『起動』して根本から凍結させる作戦であった。
「なるほどな、あたいの魔法で凍らせたら何時か溶けちまうが、ルナの『能力』で堅くしちまえば、解除さえしなきゃ一生そのままなんだったな」
「よっしゃ! 一発ぶちかましてやるよ」
そして、馬琴の作戦は見事に成功し、デリエジの発生経路を完全に封殺し、残るは鉱山内の水路に残るデリエジだけとなるのであった。
ルティーナはそのまま地面に手をつき、鉱山全体に【乾】を描き広げ、サーミャ達を助けた達のように水分を蒸発させデリエジを完全に死滅させることができたのであった。
「やったのか? これで……」
「シャル~ありがとね! あなたが頑張ってくれたおかげよ!」
「えへへへぇ」
ルティーナ達は日が暮れる前に、採掘作業を続け、原石をある程度掘り起こし集めた。
預かっていた荷袋をいっぱいにすると50kgぐらいと聞いていたので、おおよその量を採掘したところで、袋詰めは翌日にし、日が暮れる前にルティーナの実家に戻ることにしたのであった。
「ということで、ミヤとシャルはあたしの家で、風呂で穢れをゆっくり洗い流してくださいね」
「あぁそうだな、そうさせてもらうわ。流石に体が気持ち悪すぎだわ」
「お風呂ぉ~お風呂ぉ~」
「「「あはははは」」」
そして4人は、ルティーナの家に足早に戻るのであった。
「あ~ぁ、風呂って幸せだなぁ~」
「ミヤ~長いですぅ~私も一緒に入りますぅ~」
「しかたねぇだろ? じゃんけんに負けたのはシャルだろ~」
「わかったよ、ちょっとまってな」
少し遅くなったがシャルレシカが風呂から上がったら、ロザリナと一緒に隣町の宿場まで移動し、翌日の早朝にノスガルドに移動する予定であったが、ルティーナは1つだけやっておきたいことがあった。
そして、シャルレシカが満足した顔で風呂から上がってくるのであった。
「ねぇシャル、ここ数か月で、この家に誰かが入って来た痕跡を調べられるかしら?」
「そういえば、この家は荒らされていたって言ってたな?」
シャルレシカは早速、家の中のものを色々触れ始め何があったかを水晶に映し出すのであった。
そこには想像だにもしなかった人物が映っていた――。
「こ、こいつ……ド、ドグルスじゃねぇかっ!」
「お知り合いですか?」
「いやゲレンガの仲間さ……何故こいつが……やっぱ、ただ事じゃねぇ~ぞっ」
(お父さんが何か大事なものを……持ってたってこと?)
(でも……何もなくなった様子は……一体何を)
「他に何人か居る……やっぱり、何かを探しているわね?」
しかし、そこに映る様子は、目的を達成できなかったような顔をしながら荒らした後を元通りにして去っていく姿であった。
馬琴は、戻していった理由をなんとなく悟るのであった。
それは、あくまでも何かを所有していると思われているバルストを暗殺する目的ではあるが、魔物に襲われて殺されたことにする必要があった。
それを探す為に実家が荒らされている状態になったままだと、ただ単に空き巣の可能性もあるが、不慮の事故でなく暗殺に繋がる可能性を残したくなかったのではないかと。
(……)
「目的が何かまでは……さすがに無理かぁ」
「ルナぁ~」
「でも、ありがとシャル、それがわかっただけでも十分よ」
歯がゆい気持ちは残るものの、ロザリナとシャルレシカは予定通りノスガルドに移動を始めるのであった。




