123話 「ルティーナ」ノ交渉
ルティーナ達は、『アジャンレ村』にエリアルをバルストの剣の修行の為に残して、ブクレインで待つロザリナの元に転移した。
合流したルティーナは、早速、自分が転落事故をおこした『ウェンの森』と実家がある『フォルスト高原』の近くでの任務がないか? ギルドで探すのであった。
しかし、そんな中、好待遇の案件にもかかわらず誰も手を付けてないものを見つけた。
そして、依頼者の鍛冶屋タリスに訪問する。
タリスは今回の案件について説明をはじめたが、話を聞いていくうちにサーミャの顔色が変わるのであった。
「お、おいっ、ちょっと待ってくれタリスさんっ」
「――ま、そういう反応が普通だよな……だから男の冒険者しか参加してねぇんだ……」
「(ねぇミヤ、デリエジって? 何?)」
ルティーナは初めて聞く、話しに出てきた魔物についてサーミャに質問する。
サーミャは、嫌な顔をしながら『デリエジ ――くらげの魔物――』の説明を始めた。
その魔物の特徴を聞いているうちに、ルティーナ達の顔が青ざめていく。
「あ~思い出したくもねぇ、あいつらはすぐ飛び掛かってくんだ……あいつら」
「そして、あのブヨブヨのベトベトのドロドロした体で……」
「くっつかれたらひっぺがすのも大変だし、電撃をかましてきたり、毒に刺されたらしびれて動けなくなるし、とにかく最悪なんだってぇ~」
3人はきっと、サーミャは酷い目に合ったことがあるという事を嫌なくらい理解した。
「そうとうトラウマなんですね、ミヤ」
「いやいやっ、おまえらもやられたら解るってぇ! リーナは、自動解毒できるからいいよな」
タリスは、今の『フォルスト高原』で起きている現状を説明した。
半年以上前から、何故か鉱山に大量発生し始め、鉱石を発掘しようとすると場所によっては海水が噴き出し、一緒にデリエジまで飛び出してくるという。
それによって、毒でやられ安全に採掘が進められないと。
原因は、鉱山の裏にある『ヘレンズ海』から地下水脈が繋がってしまったのではないかと推測していた。
しかも、やつらに弱い魔物には『バリア・ストーン』の効果がほとんどないのであった。
(……)
(あのぉ……マコトさん……心当たりありませんかぁ?)
(う、うん……俺達が、初めて漢字を使った実験で作っちまった池を処分するのに、翌日、半ば強引に大地を砕いて水を散らした……よね?)
(まさか、その水が……鉱山を経由して海まで繋がっちゃったってこと?)
(さすがに出来すぎじゃね?……でも、それしか原因しか思い当たらん……)
「さて、話を聞く限り、簡単そうで簡単でないのがわかりました」
(責任をとろう……)
タリスは、任務を受けると言い出したルティーナの勇気を買ったが、目標の100kgは流石に無理だろうと現状の採取状況を伝える。
もともと、3ヶ月前から『オブシディアン・ストーン』400kgの採掘で依頼は出しており、今までは常連の冒険者がこなしてくれていたが、毒を浴びすぎてしばらく活動できなくなったという。
そこで、他の冒険者も挑戦していたが採取できない者が多発し、案件失敗しても採取分は報酬として支払い、累計で300kgは採取でき、後100kg採取できれば当面1年ぐらいは営業ができるらしい。
「ところで『オブシディアン・ストーン』って、なんなんですか?」
「あの石は、発掘したての原石だと火を浴びると溶けちまうんだが、俺たちの技術で錬成すれば、強度な素材になり火も雷をもはじいちまう。だから、それを防具や武器にしてほしいって客が多いのさ」
「へぇ~」
(これは使えるぞ)
(?)
「ちなみにタリスさん、200kg以上採取しても報酬は同じですか?」
「あははは、さすがに無理だろ? いいぜ、その時は倍額を支払うよ」
そして、ルティーナはタリスに明日から3日欲しいと伝え、サーミャ達に先にカルラの宿に戻ってほしいと伝えた。
ルティーナはそのまま店に残り、タリスに武器作成の依頼を始めた。
(急に、どうしたのマコト?)
(いいからいいから)
ルティーナは、馬琴の言う通りに新しい武器のイメージを絵に書き、タリスに伝えるのであった。
タリスは見たことのない構造に悩みながらも話に聞き入るのであった。
「これを、金貨20枚ぐらいのは規模で作ってほしいんですが……駄目ですか?」
「かまわんが、出来る限り理想に近づけるが……この金属でできた細い糸状のものを作るのが面倒くせぇな」
「そうですね。そこの糸は強度がある金属を使ってもらえますか?」
「あと、この腕を通す部分は部分は、例の『オブシディアン・ストーン』で作ってください」
タリスはこんな物が武器なのかと呆れていたが、ルティーナ達が任務から戻ってくる4日後までには試作品を作っておくことを約束したのであった。
――翌朝早く、シャルレシカに付近を索敵させた上で、ルティーナは3人を小さくして日が明けないうちにできるだけ『フォルスト高原』の近くまで飛翔し、馬車を捕まえて家の近くまで移動したのであった。
そして、付近で馬車を降りると徒歩でルティーナの家に向かうことにした。
「ルナぁ~2km圏内にはぁ居ないようですぅ」
「わかったわ、そのままよろしくね」
「まだ昼過ぎかぁ~、さすがに飛翔すると短縮できるな」
ついに、久しぶりの実家が見える場所まで来たルティーナであったが、シャルレシカに『エクソシズム・ケーン』で改めて10km索敵させて自分達に敵意を持つものが居ないかを確認した上で、皆を残して、とりあえず1人で実家に向かった。
ルティーナは家の扉を開けた中に入っていったが、物色された様子は全く無かった。
(考え過ぎだったのかしら?)
(一緒に出掛けるのを監視されてたとしたら、例えば、私たちを誘拐しようとするために家に入る必要はないからな)
(あくまでも事故死にするためだから、家が物色されてたら不自然だろ?)
(確かに……)
(でも、本来の目的が暗殺じゃなかったら……)
(それ以外って?)
(例えば、バルストさんが何か大事なものを持っていたら、殺したあとに家に盗みに入ればいいだろ?)
(でも、そんな雰囲気もなさそ――)
(ち、違う……出かける前とお父さんが買ってくれた服の順番が変わってる)
(そういえば、ルナの気に入った順番に並べてたよな)
馬琴は、部屋は物色したにもかかわらず放置せず、元に戻していたことに疑問を感じた。
バルストが何か、組織が求めているものを持っていたから狙われたのではないかと……。
(これは、見つけて去った後なのか? それともなかったのか? まではわからないか……)
(この家の物を、シャルに診てもらおう!)