12話 謀殺
ルティーナの大活躍で、デフルウの襲撃から全員を守り切ることができた。
そんな無双を見せつけられたバルスト達は説明を求めるが、この場に長居するのは危険だと話はあとにしてもらう。
そして、救援を呼んでくると1人空に飛翔していくのであった。
救援を求めるべく、日が暮れる前に近隣の街へ羽ばたくルティーナであった。
(でもさルナ、デフルウがなんで大量に発生したんだろう? 『バリア・ストーン』でこの森は守られているって話じゃなかったっけ?)
(たしか国境沿いだから、たぶん、その辺の山の麓に『バリア・ストーン』が、あの辺りに――)
(ルナ? あそこ、なんか煙が出でないか? なんか、遺跡の様な……もしかしてあれが『バリア・ストーン』っ?……破壊されている?)
時間は惜しかったが、方向転換して『バリア・ストーン』らしき場所を調べることにした。
するとその近くに、二人の男の姿が見えた。
ルティーナは、飛んでいる姿が見られないように、すこし離れたところに着陸し、その男達に話しを聴こうと近寄ろうとした。
(ちょっと待った、ルナ! 様子がおかしい! とりあえず胸に手を当ててっ――)
(はぁぁ? あの? マコトさん? なに胸を触ろうとしてんのよ? 変態っ!)
(ええええええ~? いやいやいやいや! なんでそうなる? 俺には感触は伝わらないの知ってんだろ?)
男の一人が、草むらの中で1人騒いでいるルティーナの気配に気付き近寄ってくる。
ルティーナは馬琴の言うことに逆らいながらも背中に手を当て【透】を体中に展開するのであった。
「だ、誰だっ! 隠れてねぇで、出てきな……気のせいか?」
「――まだ、殺しに行ってないデフルウが」
「怖い事を言うんじゃねぇっ! この一帯のデフルウは全部、バルストの所に行ったはずだぜ! 今頃は片付いてるだろうがな」
「それよりギーダンっ! まだ着けてねぇのか? さっさと例の首輪を着けとけっ! バルストの死体を確認しにいくぞっ」
ギーダンは、あわてて懐から首輪を取り出し首にはめようとしていた。
(こ、殺すって? お父さんを――)
(どうやら、バルストさんを殺す計画を立てていたようだね)
(それなら、デフルウの大群が襲ってきた理由も納得できるけど……)
(しかし? バルストさんだけを襲うことなんて)
(マコト! あいつらから――)
(あぁわかってる、ルナ、あいつらの足元に向けて地面に手をついてくれるかい?)
ルティーナは馬琴の指示どおりに、地面に左手をつき、二人に向かって【凍】を描き始め、届いたあたりで『起動』させた。
突然凍り付く地面に二人の下半身は巻き込まれ、すっぽり氷に包まれ身動きができなくなった。
「な、なんだぁ~! き、聞いてねぇ~ぞ! 『バリア・ストーン』の護身用の罠があったなんて! てめぇなんか踏んだだろぉ! ギーダンっ!!」
「あ、兄貴ぃ~、俺は何もぉ……」
馬琴はルティーナに、怒ってる男が持ってる刃物を短剣でさばかせ、一瞬、戸惑った隙に後頭部に手を当てさせた。
すかさず、【痛】を後頭部に転写させ、彼女に距離を取らせた。
「刃物がはたき落とされたとおもったら、今、誰か、俺の後頭部を……」
「兄貴、俺は何も――」
「貴様らっ、ここで何をしている!」
「? なんか偉そうなガキの声がきこえるっ!」
(ま、マコト……、あの男に、お・し・お・き……よろしく!)
仕方ないとあきれながらも、馬琴はルティーナをなだめるために【痛】を使った『起動』した。
その瞬間、男はあまりにもの激痛に叫び声を上げ、地面に倒れ身をよじり苦しむ。
(まったく、この場面で使うために、転写したんじゃないんだけどなぁ~)
「ギーダン! ああなりたくないなら、質問に答えなさいっ!」
ギーダンは激痛に苦しむ相方を横目に、姿が見えない声に怯えていながらも意気がっていた。
しかし、男が白目を剥き始めた気を失うのであった。
「兄貴ぃぃぃぃ~っ!」
今度は自分が殺されると怯えるギーダン。追い打ちを駆けるようにルティーナは『バリア・ストーン』を破壊した理由と父親を殺そうとしようとした理由を問うのであった。
さすがにギーダンは質問に答えることにした。
彼の話では、名前も知らない男から金50を積まれ引き受けたと語る。
まずは、催眠薬を塗ってある弓矢を使って、とりあえずデフルウを一匹捕まえて体内に『カオス・ストーン』を埋め込み、バルストが森の入り口にさしかかったら、デフルウを放つこと。
『カオス・ストーン』とは、闇魔法で返り血を浴びた相手の怨みを仲間に伝播することができるため、『バリア・ストーン』の結界の周りに集まるデフルウのを確認して、爆破したらしい。
(最初の1匹はシャルを追っかけてた奴か……)
(そして、結界がなくなり集まったデフルウが一斉にバルストさんを襲った……ただの計画じゃないぞこれは!)
(な、なんで……お父さんが……狙われなきゃならないの?)