118話 「アンナ」ノ記憶 ~前編~
ルティーナ達がアジャンレ村に旅だった後、残されたロザリナとエリアルはギルドに出向き『零の運命』が仕事をしているように見せる為に任務を探していた。
案件探しに苦戦するロザリナであったが、偶然、依頼に来たガイゼルに出会い商品輸送の任務を請け負うことができた。
しかし、そこにはスレイナの魔の手が迫っていた。
それから数日後、ルティーナ達はついに目的地『アジャンレ村』に到着するのであった。
バルスト/ルティーナ/アンナ
ルティーナ達は夜遅くになってしまったが、アジャンレ村に到着した。
ルティーナは親を脅かそうとニヤニヤしていたが、シャルレシカはそんな彼女を見て少し笑った。
「何よシャル?」
「それはですねぇ」
「る、ルティーナじゃないか!」
「! お、お父さん?」
「シャル、知ってたのね!」
たまたま村の外に出かけていたバルストと遭遇したルティーナは、あてが外れて残念な気分であったが、久しぶりにバルスト逢えた嬉しさに笑顔がこぼれそうになったが、束の間――。
バルストは、周りを気にせず泣きじゃくりながら彼女に飛びつくのであった。
(げ、やばいっ)
それの姿を呆然とサーミャが見つめる……。
「(え、え、えぇ~……剣……ごぅ……って言ってなかったか? マジかぁ~ここまで親バカだったとは)」
バシンッ!
「痛てててっ」
「あなたっやめなさいっ! シャルちゃんとお嬢さんがドン引きしちゃってるじゃないっ」
「う、おぉう、半年も連絡がないから心配してたんだぞぉ……あたりまえ――」
「なわけないでしょっ」
「ごめんなさいねぇ~情けない所を見せちゃって……お嬢さん」
「あぁ……いえいえ、大丈夫ですよ。アンナさんですよねぇ」
「はい、そうです。ルナのお友達ですか?」
「あ、お母さん、お父さん、紹介するわ」
「私の仲間の冒険者、でウチの大魔法使いのサーミャ=キャスティル……通称ミヤよ」
「よ、よろしくお願いします」
(さすがに、いつものしゃべり方はしないな)
(あはは)
しかし、バルストはミヤの名前を聞いたときに首を傾げた姿をみて、サーミャは口に人差し指をあてバルストをけん制した。
彼は何かを察し、それ以上、語るのをあえてやめたのであった。
夜も遅くなり外で立ち話は何かと、アンナは孤児院の客間に3人を連れて行くのであった。
客間に案内された3人は、お茶を入れてもらい近況報告をバルスト達にするのであった。
「ほぉ~ルティーナは冒険者でうまく活躍しているんだな」
「まさか、たった半年で『零の運命』を結成して、頭をしているなんてのぉ……それだけでなく、武闘会で優勝? あの不思議な力のおかげか……」
「あなた、それにしてもサーミャさん凄いわよね……5種類も攻撃魔法が使えるなんて……しかも転移魔法なんて聞いたことがないわよ」
「えへへ、あと2人も凄いわよ」
「1人はお父さんと同じ剣士のエリアルと、もう1人はお母さんと同じ回復師ロザリナ……2人とも金の冒険者だよ」
「私も元銀だけど、そのロザリナさんって凄いのね」
「剣士もおるのか? しかも金かぁ~逢ってみたいもんじゃの」
「エリアルが剣豪って聞いて、うらやましがってたからきっと喜ぶよ」
話しが盛り上がる中、ルティーナはここに来た理由を2人に話し、アンナに2つの質問をした。
1つは、自分が大怪我をしていた時の詳しい状況を知るため、シャルレシカに記憶をのぞかせて欲しいと頼むのであった。
シャルレシカはアンナから記憶を読み取り水晶にその時の状況を映し始めた。
しばらく記憶を探っていると、水晶には血まみれになったルティーナが映っていた。
「こ、これが私……」
(酷いな……よく無事だったな)
「おい、さっき、あそこ光ってなかったかっ」
「もう一回だ、もう一回っ!」
「ふえぇ~実際にぃ見た記憶ですからぁ~、そんな都合よくぅ~できませんよぉ~」
とりあえず記憶を一旦見終わった後、もう一度、最初からみんなで目を凝らしながら、アンナの記憶を覗くことになった。
結局、ルティーナを見つけてから、治療してその場を立ち去るまでの記憶の間に、確かに光るものが近くの木の上に確認できたのであった。
「あの木が茂ってるところの崖の上が、お花畑なんだよね?」
「そうね、私がお昼ご飯に呼びに行ったときに見当たらなかったから探していたの。崖の手前にあなたの靴だけがあったから、慌てて下を覗いたら血の気が引いちゃったわよ」
ルティーナは『水晶の破片』に触れ、馬琴の魂が乗り移ったショックで驚いて転落していたのを発見されたのはほぼ確実だった。
アンナの事ばかりルティーナが夢中になっているのを、寂しく思うバルストは今の話に乗じて、彼女が大怪我をした前日に「王都爆発事件」があったことを話し出す。
ルティーナもその話は、ヘギンズから聞いたことはあったが、まさか自分が意識を失う前日と聞いて驚きを隠せなかった。
さらには、その事件の最中に、夜空には大きな彗星と、四方八方に広がる光が飛び散ったのを目撃したと話した。
それを聞いた馬琴は、大きな彗星の事は意味が解らなかったが、その時に飛び散った光が『水晶の破片』ではないかと想像した。
「え、お父さんはそれを見たの?」
「あぁ、その時は、王城の爆発に王様が巻き込まれてしまって大怪我したらしい。城内は大混乱で、それどころでなかったから気付いた奴はあまり居ないじゃないかな?」
「……そういえば、その時一緒に仕事していたベルハットの奴、その事件から2年後に故郷に帰ったと聴いているが……全く音沙汰がなかったな」
「!」
(王様が大怪我? どういうことだ?)