117話 「シャルレシカ」ノ故郷
サーミャの転移魔法の実験は『ヒーリング・ストーン』で、光魔法属性を補えば実現が可能なことをつきとめた。
そして、その石の発見場所と、ルティーナの過去を詳しく知るために、『アジャンレ村』にいるルティーナの母親アンナを尋ねることになる。
その次いでに、サーミャの『エクソシズム・ケーン』をヴァイスに託した老婆の居る『ジェイスト』という場所も近いということもあり、3人でシャルレシカの故郷『アジャンレ村』に向かうことにした。
シャルレシカと村の子供達
ルティーナは、出来る限り組織に悟られないように、サーミャとシャルレシカは【透】で見えないようにして途中までの馬車に乗り込むのであった。
一方、ロザリナとエリアルも不審な行動にならないように昼前に、ギルドへ出向き任務を探しを始めた。
「よぉ、ロザリナとエリアルじゃないか? 今日はサーミャ達は居ないのかい?」
「あっグルバスさん、3人は……カルラちゃんの宿で疲れて寝ているんで、私たちで任務を探すようにルナに頼まれて」
「そうなのか、まぁお前らなら引く手あまただからな、いい任務を選べよ」
「じゃあな」
ロザリナ達は、実はレミーナが休みであったため、慣れない案件探しに戸惑っていた。
2日前後の任務であれば複数案件があったが、繰り返しギルドに2人で通っているというのは不自然さがあり、1週間前後の案件を探し求めていた。
「それなら、これかな?」
「5人必要か……これは厳しいですね。実際は2人だし、私たちの事を知らない人の案件ではうやむやに――」
「おいっ、ロザリナじゃないか? 1か月ぶりだな……そちらの女性は? もしかして」
「……ガイゼルさんっ」
偶然にもガイゼルが護衛依頼をするためにギルドへ来ていた。
ガイゼルはこれは丁度いいと、『零の運命』を指名で任務を依頼したいと求めてきたのであった。
「いいんですか?」
ルティーナの代わりにロザリナが交渉することになり、ギルドでは他人に聞かれるとまずいと判断し、アバダルト商会で詳細の打合せすることにした。
しかし、その様子を影で見つめる冒険者の悪意に気づかずに……。
――あいつらは……任務も直受けかよ。でも、2人か? 朝一にルナリカだけはどこかに出かけたようだが……。
とりあえずスレイナ様に報告だな――
そしてアバダルト商会に着いたロザリナは、ガイゼルに詳しい理由は説明できないが3人は参加できないことを話していた。
――任務の内容――
[アバダルト商会→『零の運命』指名依頼]
・ワカガン王国にある支店までの商品の運搬に伴う護衛。
・移動往復で4日、現地商品搬入で1日とする。移動中の宿泊は宿場を利用。
[報酬]
・指名依頼であるため、1人につき金貨15枚
「(6日目の朝に合流予定でから都合がいいですね)わかりました」
「だがルナリカ達が以内のは訳アリ……いや、お前らには世話になってるからな、変な詮索はやめとくわ」
「すみません。そうしていただけると助かります」
「――しつこいとルナリカが、また、この店を燃やすとか言いだしそうだからな」
「「あはは(やりかねない)」」
しかし、ここは商売人のガイゼルは『零の運命』5人で護衛してもらったつて口裏を合わせる代わりに、1人金貨12枚で交渉してくるのであった。
ロザリナは足元を見られたと理解していたが、それはそれで自分もブクレイン時には世話にもなっているので反論はなかった。
「しかし、シャルレシカの索敵がないのは残念だが、大会準優勝者の2人だけでも贅沢な護衛だな」
「(ねぇ、リーナ? この人、大丈夫なのかい)」
「(口は悪いけど、とても頼りになるいい人ですよ)」
「ロザリナ……聞こえてるぞ」
「あっはっはは」
「んじゃ前払いで金貨60枚な」
「え、計算が――」
「(本当だ、いい人ですね)」
ガイゼルは、2人分でなく5人に依頼した事にしないと帳簿上合わないと、はずかしそうにロザリナに前払いするのであった。
そしてロザリナ達はガイゼルの馬車に搭乗し、ワギン王国へ出発するのであった。
「(ルナ……こっちはなんとかなりそうです。無事に帰ってきてくださいね)」
一方、ルティーナ達は、シャルレシカしかアジャンレ村に行く方法がわからないため、昼間は馬車を探し、夜中や人気が少ない所を索敵してもらいながら、案内をしてもらっていた。
ルティーナは、夜は体力がつつく限り飛翔しては休憩を繰り返し、昼は馬車で休憩するか、自分から小さくなってサーミャに徒歩で運んでもらいながら移動していた。
そして移動して3日目……ルティーナは移動する馬車の中も疲れて眠ってしまっていた。
「ルナは、さすがにぐっすりだな……しかしよぉ、まるで子供の寝顔じゃねぇか」
「……」
「シャル見てみろよ、ほっぺたをつねっても無反応だ……」
「って、あたいらは体力が有り余って暇だわ」
「そうですねぇ~私はぁ方向しか指示してませんしねぇ~」
「でもぉお腹がぁすきましたあ~」
「シャルは相変わらずだなぁ~」
シャルレシカも村から出ることはそんなになかったが、自分の馬車索敵を使っても10日程かかる場所から、たった4日ぐらいで故郷に行き来できることに驚いていた。
それを聞いていたサーミャは、飛翔する能力を人に知られたくないと言っていたルティーナの気持ちがすこしわかった気がした。
自分も転移魔法は隠そうと……。
「さぁ~次の宿場の後、3つの森を超えればぁ~私の故郷ですよぉ」
「でもぉ……これからはミヤの魔法で移動したいですぅ……飛翔だとぉルナの懐ではぁ背中にゴリゴ――」
「おいっ! シャルそれは絶対、ルナが起きてる時に死んでも言うんじゃねぇぞっ」
「?」
「(涼しい顔してぇ~……シャルには絶対わからない悩みだな……)」
「?」
そうこうしているうちに『アジャンレ村』に一番近い、最後の宿場で降りることになりルティーナを起こすことにした。
「お、おは……ごめんね、寝ちゃってた?」
「馬車はここまでみたいだぜ」
「そっか、ここまで来たのね」
「やっぱり、飛翔は疲れるけど、前に来た時より早いわね」
(最初の頃に比べると、飛翔の技術や持続時間もかなり向上したからね)
(そうね、初めの頃はふらふらだったし、10分も飛んだら背中が痛くてしょうが無かったけど……今は慣れちゃったね)
そして、ルティーナは宿場で朝まで体を休め日が昇る前に、再び、『アジャンレ村』に向かって最後の飛翔をするのであった。
それから日が暮れる頃、シャルレシカがサーミャに目の前の森を抜けると到着すると告げる。
森を抜けたところで、サーミャは寝ているルティーナを起こした。
そうして元の姿に戻ったルティーナと3人で、ついに村の入口にたどり着くのであった。
「久しぶりですぅ~」
「しかし、この村って、森の道が入り組んでるから、知ってる奴がいねぇと簡単には辿りつけねぇな」
「でもぉ良いところですよぉ」
「子供達もみんな元気かなぁ~」
「シャルの故郷……ルナの家族か…………いいな」
「どうしたの? ミヤ」
「いいや、なんでもねぇ……さぁご対面だ」