116話 「サーミャ」ノ奇跡
サーミャが『イスガ王国』での危険な状況から脱出できたのは、偶然、書庫で見つけた本に記されていた『ディメンジョン・テレポート』という転移魔法のおかげであった。
しかし、それは6種類の魔法を扱える者しか使えないものであった。
偶然、持ち合わせていた光魔法の属性がある『鍵』を持ち合わせていたことで、実現したのではないかと馬琴は推測する。
この魔法の今後の優位性から、早速、実験を行うのであった。
馬琴の指示でサーミャは、ルティーナの『ヒーリング・ストーン』を借りて『キュア・ヒール』を発動している状態で、外にいるエリアルの事を想いながらシャルレシカを抱え『ディメンジョン・テレポート』を詠唱した。
すると、サーミャとシャルレシカは黒い玉の様な空間に包まれ、2人は一瞬で消えた。
そして1秒も経たない内に、外からエリアルの悲鳴が聞こえるのであった。
(よっしゃ)
(成功したの? それにしては――悲鳴)
(思った通りだ、この魔法は希少だぞ! 今後、活動が楽に――)
(いや、だからエルの悲鳴が……)
馬琴の狙い通りサーミャは転移魔法を成功することができた。
そして、3人は興奮気味に部屋に戻り、サーミャはルティーナに抱き着いた。
「すげぇ! すげぇぞ! マコマコっ言った通りだぜ! 流石だぜ」
「ミヤ……く、くるしい」
「これでルナに飛んでもらわなくても、簡単に知ってるやつの所に行き放――」
「いや、でもさっき……エルの悲鳴が……」
エリアルはアンハルトの証言から黒い空間が現れるとは聞いていたが、いざ自分がその経験をすると思わず悲鳴を上げてしまったようだ。
彼女的には、初めて遭遇して……しかも中から人が飛び出してきたらびっくりするだろうと。
相手によってはどこに居るかのか、何をしているのかも解らないし、人によっては逃げられたり攻撃体制にはいってしまうのではないかと危惧する。
「確かに……出る場所は気を付けるとしても、相手は事前に知っていないと普通は……私ならぶん殴りますね」
「間違いなく……死ぬなそれ……(あたいは、偶然、墓参りで非武装だったからアンハルト達に攻撃されなかったってか……あぶねぇ)」
「あたしが居ればいいけど、この魔石を充電できるシェシカさんみたいな回復師が転移先にいないと使えないわよ?」
「それに『ヒーリング・ストーン』はルナの誕生日祝いのプレゼントでしょ?」
「う~ん、ミヤがシャルに杖を貸す感覚で、いいんじゃないかな」
「転移先は、事前に連絡できるといいんだけど……」
「黒魔法でも使えれば……無くもないが」
「操作魔法で動物を操れば、意識共有で会話ができるぜ」
「そうなの? なら、ヘレンを引き抜く?」
「「「「あははは、流石にむりだな」」」」
ルティーナの馬琴の事を語り始め、いろいろな謎が解き明かされる中、ものは次いでにとサーミャは最後に1つだけシャルレシカに調べてほしいことを願うのであった。
「そうだ、まだシャルは眠くないよな?」
「大丈夫ですよぉ~」
「結局ぅ~ルナや魔剣のぉ過去は途中で見えませんでしたからぁ~まだまだぁ元気ですよぉ……むにゅ?」
「この『エクソシズム・ケーン』も見てくれないか?」
「?」
サーミャは、血まみれの紙をあさりながら『エクソシズム・ケーン』の記述してある紙を探した。
一部、読めなくなっている箇所もあったが、皆にイスガで作られた試作品であることを説明するのであった。
「この杖が何故、4年前にヴァイスは見知らぬ老婆からもらったって言ってたんだけど、あたいの手元にあるのが運命なような気がしてさ……」
「それで、経緯を見てほしいんだ」
「わかりましたぁ~」
そして、シャルレシカは『エクソシズム・ケーン』に触れながら、杖がイスガから持ち出された経緯を調べようと、一生懸命に水晶に映し出そうとしていた。
しかし、10分近く頑張ったが何も写らなかった。
シャルレシカが言うには、調べることが過去であればあるほど時間がかかるという。
そのため、ヴァイスがもらった時期から順に出来事を追いかけることにした。
改めて映ったのは、ヴァイスがたまたま依頼で1人出かけていたジェイストという街で、『エクソシズム・ケーン』を持つ老婆に絡まれている姿。
そして、無理やりヴァイスに杖を押しつけ、その場を去っていく様子が映っていた。
「そういや、『あなたに託します。ふさわしい方に渡してください』と言われて意味も解らずにこの杖をもらったって言ってたな……」
「シャル、さっきの老婆をもう一度、映しておいてください! 似顔絵を描きます」
(リーナはこういうの得意なのか?)
「がんばりますぅ~」
「こいつに逢えば、より詳しい情報が得られるってことだな」
「そういえば、ジェイストってどこにあるんですか?」
「確かぁ、アジャンレ村からならぁそう遠くないですよぉ~」
その話しを聞いたルティーナは、あることを思いつく。
「これは私個人の意見なんだけどさ――」
「私のお母さんに、逢いに行ってみない?」
「その魔石をくれたのは母……そして、私が倒れていた場所も知ってる……」
「なるほど、魔石の見つけた場所を教えてもらえれば、あたいは気兼ねなく転移魔法が使えるってことだな」
「まさか、たくさん探して、全部、私に充電させる気ではないわよね?」
「……バレたか」
「でもぉ、ルナがぁ倒れていた場所にぃ行けばぁ~マコマコがぁ、どうしてそこに居たかも解るかもですねぇ」
(一度、お母さん達とミヤが逢ってくれれば、いつでもアジャンレに行けるしね)
(そっちが目的だな)
しかし、ルティーナ達がバルスト暗殺を阻止した後、逃げ隠れたアジャンレ村まで普通に移動しても10日はかかる。
当時は、馬車も早々見つからないがシャルレシカの索敵でうまく探して乗り継ぎ、時には、短距離を飛翔しながら移動したが……。
「なら、シャルにルナのお母さんの顔を水晶で――」
「やめて、お母さんショック死しちゃうわよ」
サーミャは簡単に転移で行けると提案しようとしたが、ルティーナに速攻却下され、逢うところまでは自力でという方針となった。
「ギンさんに馬車を出してもらえると話しは早いんだけど……お父さんの事を知られるとね……」
「……で、行くのは私とシャルとミヤにしたいんだけど、いいかな?」
「僕とリーナは留守番だね」
「全員で出かけると、組織に目を付けられて本末転倒ですし。いいと思いますよ」
「それなら僕達は、しらじらしく皆がいるフリをして任務をやっている方がよさそうだね」
そしてルティーナのもう一つの目的は、アジャンレの近くにあるジェイストにも立ち寄り、サーミャと謎の老婆を探すことにあった。
「なるほどな、んじゃ『ヒーリング・ストーン』の場所を聞いてから、寄ってみようぜ……どうせ、かえりも長旅だし――」
「それは大丈夫よ、お母さんも回復師だから魔石に充電できるわ」
その内にシャルレシカは魔力切れで眠ってしまい、皆も夜が遅くなってしまっていたことに気づき簡単な行動計画を立てて就寝することにした。
そして翌早朝――。
ルティーナとサーミャは、まだ眠ったままのシャルレシカを小さくして持ち運び2人で、カルラの宿を出立するのであった。




