114話 「ルティーナ」ノ秘密 ~後編~
ルティーナは、ついに馬琴の存在を皆に話す時が迫っていた。
その前に、自分が8年前に意識不明なる前に何があったのかを知るために、いままで馬琴の事を知られまいと避けていた過去をシャルレシカに覗いてもらうのであった。
すると、ルティーナは『ウェンの森』で遊んでいる時に『水晶の破片』を偶然見つけ触れてしまい、そのまま崖から転落し意識不明になっていたことが分かった。
馬琴は自分が『水晶の破片』の中に居て、ルティーナが触れたことで憑依してしまったと確信した。
そして、ルティーナは、自分が目覚めた時の話しを始めた――。
ルティーナが自分の意識の中に馬琴が居ると、そして『漢字』を具現化する『能力』は馬琴のもので、自分は手を触れているだけで、作戦や知識はすべて彼が行ていたことを説明した。
その話しを聞いた4人は、そんな馬鹿な話があるかと困惑していた。
「みんなに隠している私の事は全てよ……たったそれだけなんだけど……」
「今までの私の無双って……すべてマコトのおかげなの……失望しちゃったかな?」
「「「「……」」」」
「……やっぱり、ドン引きしちゃうよね」
「私の中にもう1人居るなんて、不気味だよね」
「言いわけじゃないけど……『武闘会』は自分の考えで正々堂々と戦った事は信じてほしい……」
ルティーナは、真実を語り涙目になり、皆が無言でいることにどんどん落ち込んでいくのであった。
そんな中、皆は彼女に声をかける。
「……どんどん皆と親密になって、言いづらくなってしまったんですね?」
「納得っつうか、やっぱりルナは面白いな」
「そうですねぇ。まさか私が感じていたのはぁ、そのマコマコのことだったんですねぇ」
「その不思議な力の理由が納得できましたよ(僕の剣にも……マコトさんみたいな意識が?)」
「知識的にも心強え訳だ」
「男ってのがちょっとぉ気にいらねぇが、何度も助けてもらったからな……文句をいう筋合いはねぇだろ?」
「――皆、私のこと……」
「「「「それがどうしたのよ」」」」
「みんなぁ~」
興味を持った4人は馬琴の事について、質問攻めを始める。
サーミャは直接会話をしてみたいと言い出すが、ルティーナは自分と視覚と聴覚を共有しているだけで自分としか会話は出来ずに、彼の言葉を自分の口から伝達しているだけと返答する。
しかしサーミャは突然、ルティーナを羽交い絞めにしながら激昂する――。
「ちょっと待て……視覚を共有って言ったな? マコトぉ~てめぇ! あたいの裸を見やがったなぁっ!」
「やめてぇ~ミヤぁ、私じゃなくって……マコトは中だってぇ」
「あっそっか、悪い悪い、つい」
しかしルティーナはドヤ顔で、あのバルステンでの温泉宿での自分たちの貞操は守られたから安心するように語った。
そう、シャルレシカの豊満な胸を目の当たりにした馬琴が前後の意識と記憶を失っていた件である。
「あっ! そう言えば、あの時、急にはしゃぎ始めたのはそのせいだったんですね」
「ぷっ、情けねぇなマコトは……童貞かよっ」
「そうそう、あの時は神様に感謝したわ」
(散々な言われ様……)
笑い話で盛り上がっている中、シャルレシカだけ真剣な顔をしながらルティーナの肩に手をのせながら涙目になり、皆が動揺する。
「うううぅ~、マコマコに裸をぉ見られてしまいましたぁ~しくしくぅお嫁に行けません~」
(だからさっきからマコマコってなんだよ……あだ名をつけんなよ……っつか文字数が増えてるし)
しかし皆は、記憶がないから安心するように説得し、いざとなれば馬琴が責任ってくれるからと冗談まじりで盛り上がるのであった。
その光景に馬琴は散々な扱いをされているとは言え、どれも悪意はなく暖かさがあり、存在がバレしたことを後悔していなかった。
そしてルティーナも同様に、いつものように自分と接してくれる4人に感謝するのであった。
「んじゃ、皆、お風呂に入るときとか着替える時は、ルナには気を付けようぜ」
「「「は~い」」」
(えぇ~、まだ言うか)
(私も共犯になってるんですけどぉ)
ロザリナは、イスガで見たことがないものばかりであったにも関わらず知識があった件も、馬琴の世界にあったのであれば納得できた。
しかし、彼の世界の物が何故イスガに存在していたのかの理由は全くわからなかった。
シャルレシカは過去の設計図から爆弾や人形を開発したと読み取った経緯を語った。
(逆を言えば、この世界は……俺の世界の数千年後なのか? ……いや、ありえないもの方が多すぎる……)
「存在してもおかしくないものばかりであったことは確かみたい」
「それに鎧の人形は『キカイ』という物で、雷で大ダメージがあるっていうの理屈はマコマコの世界と同じみたいよ」
だが、ルティーナは全てにおいて馬琴の世界にあったわけではないと続ける。
それは『魔法』『魔物』『不思議な鉱石』等は、ここにきて初めて知ったという。
だが『魔物』の容姿と生態については、彼の世界に居た生き物と似ていると語った。
――それから、1時間以上馬琴への質問が続き、それにより仲間のような絆ができ始めていたのであった。
そしてルティーナは、エリアルの剣にも水晶に触れて変化が起こったことに、自分と同様に馬琴のように誰かが憑依している可能性があると語る。
エリアルも彼女の話しを聞いて同じことを思っていたので、シャルレシカに剣を覗いてもらうことにしたのであった。
(初めて見た時は、懐かしい感覚を覚えたんだが……俺の知っている人物なのか? 一緒にこの世界に呼び寄せられた誰か?)
(でも実際、ルティーナが剣を使おうとした時には何も感覚は無かった……何故だ?)
シャルレシカは剣の事を探ると彼女の水晶には、ミレイユが語っていた通り、スウエンが剣で水晶の破片に触れた瞬間にルティーナと同様にまばゆい光に包まれていたことが起こっていた。
「またかよっ! 水晶の中がまぶしくて何が起こってるか、まったくわからないじゃねぇか」
しかし、輝きが収まり始める時に、白い衣装の女性の姿が一瞬浮かびあがり、剣は容姿を変え中に吸い込まれていくのであった。
水晶に映し出された女性の姿を見るやいなや、馬琴が騒くのであった。
(と、誉美っ!)
(トモミ?)
(あぁ、俺がこの世界に来る前に結婚をしようとしていた女性だ)
そして、ルティーナは皆にその事実を伝え、剣には誉美が宿っているために馬琴と同じ能力が使えている可能性を示唆する。
そうであればエリアルも彼女とは会話ができるのではないかと……。
(状況は同じだが、何かが違う……)




