113話 「ルティーナ」ノ秘密 ~前編~
~伍章の振り返り~
ルティーナ達は『武闘会』での賞金で『零の運命』の拠点の建設に入り、完成する1か月間バルステン王国に情報あつめもかねて長期の旅行に出かけた。
そのバルステン王国に行く途中にある『イスガ砂漠』を通過していた時、シャルレシカがその砂漠で巨大な魔物の反応を見つける。
ルティーナとシャルレシカは2人で調査を進めるが、手ごたえは無かった。
そんな中、偶然にエリアルと再開する。彼女の故郷がバルステン王国だと聴き、一緒に連れて行ってもらうことになった。
エリアルは『武闘会』での資金を自分の育った孤児院に寄付していたが、それを知った下衆な連中が彼女がいないときに襲撃する計画を立てている事を知る。
ルティーナ達はそれを知り、エリアルに協力して孤児院を守るのであった。
その手際とエリアルとの関係を知った孤児院の院長ミレイユは、『イスガ砂漠』に沈む『イスガ王国』の話しを彼女たちにする。
ミレイユは『イスガ王国』の姫であり、約80年前に巨大な魔物の襲撃にあい崩壊する中、魔物とともに砂漠の下に沈んだ王国から母親と脱出していたのであった。
だが、未だに砂漠の状態は完全に封印できていないと母フレーディルは封印をするためにミレイユに孤児院を託して帰国するが、結果、砂漠は変化がなく彼女も帰ってこなかった。
そこで、自分に変わって封印をしてほしいと5人に依頼する。
そして、彼女たちは『イスガ王国』に行き、無事に封印をすることができた。
だが、『イスガ王国』でのルティーナの行動や知識が異常なことに4人の不信が積もる中、封印の依頼が終わったらすべてを話すと……それまで自分を信じてほしいと願うのであった。
そして、ついにその日が来た。
後方左から エリアル/ロザリナ/サーミャ/シャルレシカ
手前はルティーナ
バルステンで死に分かれてしまったと思っていたサーミャが生きていたことに嬉しさに感極まるルティーナであったが、不安も抱えていたのであった。
『碧き閃光』の拠点で再会を祝した大宴会は明け方には終わり、皆疲れて寝てしまった。特にルティーナ達は不眠から解消されぐっすり眠ってしまった。
しかしルティーナは、寝不足にも関わらず皆が寝静まった後、新しい拠点に向かうのであった。
(結局、昼前だね)
(ははは、いつもの通りだな)
(ところで、急にどうしたんだ? ルナ)
(たまには1人で、ぷらっと出歩きたいなぁって~)
(嘘つけ、皆に俺の事を話すのが不安なくせに)
(バレてるかぁ……でも、私達の秘密を知っても……これからも、一緒にいてくれるかなぁ?)
(彼女たちは着いて来てくれるよ……むしろ、俺の身が危ない気がする)
(あはは、そうだよね。私も最初そうだったし)
(そうそう『出ていってもらえます』とか……言われましたな)
(それ懐かしい~…………もし1人きりになってもマコトは一緒にいてね……)
(もちろん! ルナのお目付け役は俺しかいないからな)
(ありがとう)
そのうちに、ほとんど完成しかけている『零の運命』の拠点の目の前に来ていた。
中を覗こうとうろうろしていると、大工の棟梁が話しかけてきた。
「早かったなぁ、もう旅行から帰って来たのかい?」
「あと2週間かからないぐらいで完成さ、もうちょっとまっててくれ」
「ありがとうございます。みなさんも、無理せずがんばってくださいね」
「「「「「お~っ」」」」」
(私達の拠点か……)
(ルナ……)
その場を後にしたルティーナは、カルラの宿に行き予約を取った後、しばらく街をぶらぶらしながら『碧き閃光』の拠点にみんなを迎えに戻るのであった。
するとルティーナが居なくなっていたことで皆大騒ぎしていた。
ルティーナは、眠むれなかったから散歩していたことを説明して謝罪し、『碧き閃光』の拠点をあとにしてカルラの宿に向かうのであった。
しかしルティーナの表情はすごく思いつめた暗い顔であった。
さすがに他の4人も、起きたらルティーナが居なかった理由もあり、秘密を自分たちに話すことが不安になっている事に気づいていた。
「ルナさぁ、今さら、これ以上にドン引きするような事があるのか?」
「お前の不思議な能力を見て、普通じゃねぇのは最初っからわかってんだからさ」
「そうですね。イスガで、もっとありえない不思議な体験をしたんですから、今更感満載ですよ」
「説明をする前に、私自身、実は解っていないことがあるの……8年前に失われた記憶……宿に着いたらシャルに私の過去を見てもらうつもりなんだ……」
「それが解れば、もっと詳しい話ができると思う」
「(色々複雑そうだな)わかったよ。心の準備が出来るまで待つさ」
「私はぁ~出会った頃からぁ~、なんとなくわかってましたよぉ~」
「えっ、そうだったの? 気にしすぎてたのは私だけかな……」
「僕たちを少しは信用したらどうだい? ルナの事は、みんな信頼してるよ」
「ありがとね、みんな」
少しルティーナの顔に明るさが戻り始めたころ、宿に到着し、皆に見守られながらルティーナの過去を覗く儀式を始めるのであった。
「8年前ぇ、『ウェンの森』でぇお花を摘みに行ったぁ記憶を探ればぁいいんですよねぇ?」
「うん、お願い」
「……」
しばらくして、シャルレシカの操る水晶に風景が映し出され始めたのであった。
そこには、ルティーナが見ていたと思われる『ウェンの森』のお花畑の風景が広がっていた。
いろいろな花が咲き乱れる中に、光り輝くものを崖の近くに見つけ近寄っていく。
そして、その光るものが水晶の破片であることに気づくが、あまりの美しさに惹かれたように手を伸ばすのであった。
――その瞬間、水晶は凄まじい勢いで輝きだしルティーナを包みこんだ。
「なんだ? 中がまぶしくて何が起こってるか、全く見えなくなっちまったぞ?」
「これが記憶をなくす前……の私の行動」
(やっぱり、水晶に触れていたんだね)
(マコトの予想通りだったね……)
(おそらく、輝きにおどろいて崖から転落したんだろうね)
「う~ん、この後はぁ完全にぃ意識が消えてますぅ~」
「水晶に触って、意識が7年間も飛んでたってことかい?」
「僕の魔剣は水晶に触れて不思議な魔力が身についた……その水晶とは別の水晶なのかな?」
「時期は確かに重なるよね」
(……ルナ、もしかしたら俺がお前に取りついたのは、やっぱり半年前でなく――)
(水晶を触った時で……間違いないのね)
(これから言うことをみんなに説明してもらっていいかい?)
(うん。マコトに任せる)
ついにルティーナは、皆に自分の能力について語り始めることにした。
全員の認識を合わせる為に、エリアルにルティーナはシャルレシカと出会った頃までさかのぼり、自分の父親が暗殺されそうになったことを話した。
「そして、私の本当の名前は、ルティーナ=リバイバ」
「リバイバ? 剣豪バルストさんと同じじゃないか! ……確か、バルステンでも魔物に襲われてお亡くなりになったと噂を聞いていたことがあったが……ルナはもしかして……」
「それじゃ、バルストさん、いや、ルナのお父さんは魔物に襲われてお亡くなりになったんじゃなくて、暗殺されかけた? つまり……」
「そうよ。お父さんは生きてるわ。今はアジャンレ村でひっそり生活をして、世間では死んだことにしているの」
「!」
「で、ルナの親父を暗殺しようとした犯人をさがしてるんだ」
認識が揃った所で、そして皆の知らない、シャルレシカと出会う前の7年間意識を失っていた後、目を覚めた時の話しを始めるのであった。




