110話 封印ト脱出
エリアルは魔物の正体を知ってしまったが故に、シャルレシカに土葬するように魔法を乱発させる。
その隙に、爆弾の部屋への扉に群がろうとした魔物を近づけさせない為にエリアルが現地に向かう。
しかし、シャルレシカは魔力切れでその場で眠ってしまった。
――サーミャが瓦礫の下敷きになってしまう30分程前に話しは遡る。
エリアルは必死に扉に群がろうとする魔物を殺せずに剣を振りかざし風魔法で吹き飛ばし続けるしかなかった。
そしてシャルレシカの方にも風魔法を放って近寄ろうとする魔物にけん制をするが遠くであるため威力が及ばず、ついに魔物の手がシャルレシカに伸びようとしていた。
その瞬間――。
「うぉりゃぁ~っ! シャルから離れろっ」
ルティーナは手裏剣に30cm程の大きさの【爆】を描き、魔物の方に投げつけ爆破で魔物を攪乱させた。
そしてシャルレシカのもとにロザリナが先に駆けつけ、魔物達を拳で吹き飛ばすのであった。
「ルナぁ~リーナっ! ありがとう」
「早くシャルを連れてこっちに来てくれっ! 例のやつを見つけたんだ!」
「魔物はどうするの?」
「この人達はそのままにしておいてあげてくれっ!」
馬琴は魔物の容姿からエリアルの言葉の意味を察し、ロザリナに『エクソシズム・ケーン』を持たせ、シャルレシカに【微】と【軽】を描き懐に入れて、まずはエリアルの元へルティーナ達を向かわせた。
そして合流したエリアルは、シャルレシカが読み取った魔物の記憶の事を簡単に2人に説明した。
「それって! まさかっ」
(魔物化する息吹? 謎の組織が作っていたものは……真似しようとしていた……のか)
その話を聞いたロザリナは、『エクソシズム・ケーン』を使って『シャイン・レストレーション』を広域で放てば……一瞬でも人に戻れて少しでも楽に成仏させてあげられるはずだと考える。
偶然にも魔力をほとんど使っていなかったため、全力で魔法を放ち周辺にいた魔物を優しく暖かい光で包み込んだ。
すると予想通り魔物たちの動きが止まり、体中から緑の液体が噴き出し人間の姿を取り戻して、幸せそうな顔をして朽ちていくのであった。
「(全員救ってあげられなくてごめんね……でも、少しだけでも人間として人生を終えられてよかった……僕は非力だ……)」
施設の中に入ったルティーナは扉に手をあて、【硬】と【鍵】を包み込む大きさで描き、外からの魔物の侵入を封殺した。
そして、そのまま部屋まで案内されたルティーナとロザリナはその光景に驚く。
それ以上に馬琴は、実際ではなく本やネットでしかみたことがない『核爆弾』が目の前にあることに震撼した。
(これって……なんでこの世界に)
馬琴の驚きぐらいに圧巻されてしまったルティーナも、いつものように意識に語りかけるつもりで声をもらしてしまう。
「なに? カクヘイキって――はっ」
「る、ルナ、これを知っているのかい? さっき、シャルもこれを作った経緯を探ろうとして、意味はわからないけど名前が『カクヘイキ』だって言ってたんだ……」
「う、うん……」
エリアルは例の話と悟り、その件はあと回しにし時間もないことから王国の封印を急ごうと話しを進めた。
「確かに、この最初に来た部屋にあった銅像と同じだし鍵穴があるね」
「これで封印できると思いますが、どうやって最初の部屋に戻るか――」
するとロザリナはエリアルに手書きの施設図を見せ、自分たちがここに来れた経緯を説明した。
「そんな物が……」
「そう、この部屋の扉の配置からすれば、私たちはここに居ます」
「ですから、あの右の扉から通路を通って進めば、皆が散り散りになってしまった場所まで戻れるはずです」
なんとか戻る方法は解決できたが、シャルレシカが眠ってしまっている為、今、サーミャがどうなっているのかが全く把握できていない問題があった。
しかし、分断された時に自分たちのところにサーミャが来なかったことで、最後の扉……つまり、この部屋に繋がっている通路にいるはずだと推測し、封印を決行することにした。
「よし『鍵』をさすよっ」
そしてルティーナが銅像に『鍵』を差した瞬間、銅像は突然輝き始め天井に向かって光柱が放たれた。
その瞬間、何かが崩れ始める大きな音が響き渡るのであった。
「「「!」」」
そして、銅像から声が響きわたる――。
「さ・ば・く・か・い・じ・ょ・ま・で・・・あ・と・に・じ・ゅ・っ・ぷ・ん・で・す」
(砂漠解除まで後20分……だと)
(なに? どういうこと――)
「急いで、最初の部屋まで戻ろうっ」
ルティーナは銅像から『鍵』を抜き取り、決めたルート通りに全員で移動を始めた。
念のため扉の罠を警戒するために、エリアルが剣の斬撃を強化し扉を斬り開けた。
通路に出た後、ルティーナは爆弾の部屋に向かって【凍】を部屋中に展開し氷漬けにするのであった。
その後、扉があればエリアルが剣で破壊していったが、何故か不自然な形で通路に飛び出した。
「隠し扉? いきなり通路なんて」
そして目の前には、大量の鎧の人形が煙を吹き出し壊れて転がっていた。
彼女達は、サーミャが対処したものだと判断し、この先に敵は居ないことと安全に目的地まで行けると確信していた。
「あっち側の通路は壊れた人形だらけですね……」
「ミヤが暴れた跡ね……戦闘している音は聞こえないから、居なさそうね」
「時間がないから、急ぎましょう」
そして4人は、この先でミヤが待っていると信じ、3組みに分断された場所まで戻ってくることができた。
そのまま最初の部屋まで走り続けた。
「この扉だったよね! 開けるよっ」
「……」
「…………」
「ミヤ? どこ~っ! 1人になってすねちゃっ――」
「さっきの通路の先に……それとも外に居る?」
「外にでてたなら、異変に気づいて戻ってくるはずよ」
動揺する中、銅像から残り3分で砂漠化の解除が行われると部屋の中に響き渡る。
もう後戻りできないと唇を噛みしめるルティーナであったが、サーミャも『鍵』を持っていたため、分断されたこととで行動を制限してこの部屋で待っていた可能性ともあると馬琴が元気づける。
しかし、ルティーナは彼女はそんなことは絶対しないと涙目になる。
そんな中、遠くから爆発音が響き渡る。
このままでは全滅すると判断した馬琴は、心を鬼にしてルティーナを鼓舞する。
そして、ルティーナは不安の表情で――。
「ふ……2人とも私につかまって……」
「ルナ? ミヤはどうす――」
「お願いだから……つかま……って――」
「「……(泣いてる)」」
ロザリナとエリアルは、無言でルティーナの腕にしがみつき、ルティーナは涙を流しながら銅像に鍵を差し込む。
すると、4人は光に包まれ地上に転移されるのであった。




