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107話 未知ノ魔法

 3組に分断されたルティーナ達。

エリアルとシャルレシカは、皆とは別の見知らぬ通路に転移させられていた。

しかしシャルレシカが居るおかげで他の3人の位置を理解しつつ道を突き進むと、大きな部屋を見つける。

そこで見たのは、イスガ王と他要人達の遺体であった。そしてその先には、数千年前の技術で作成した核爆弾が眠っていた。

これで封印する理由と場所はわかったが、彼女たちは『鍵』を持っていないため、他の3人と合流しなければならない状況であった。



サーミャ

挿絵(By みてみん)

 ルティーナ達と完全にはぐれてしまった、サーミャは1人、半ばヤケクソな状態で通路を突き進み、鎧の人形を倒し暴れていた。


「くそっ、扉を開けてもあけても、人形しか居ねぇじゃねぇかっ」

「これじゃ、さすがのあたいでも魔力がもたねぇ……」

「あいつらと早く合流しなけりゃいけねぇのに、1本道しかねぇ選択肢が突き進むしかねぇとはキツイぜ……やっぱり戻るか?」


引き返そうとしたが、突き当りにある扉がいつも開けている扉と違うことに気付く。


「まさかその先に、強敵が居るなんてオチは勘弁してほしいがな……いや、ここかもしれねぇ」


ここにきて初めて期待感を寄せるも、連戦続きであったために少しでも魔力を回復するため壁にもたれて、倒した人形を椅子代わりに腰掛けるのであった。

そして15分ぐらいして息が整ったところで、雷撃系の魔法を途中まで詠唱の準備をしながら、その扉を開けた。


「――ほ、本? 本がたくさんある部屋? なんだここは……書庫なのか?」

「それに、この部屋は入口しかないから、行き止まり」

「まいったなぁ~、どうすりゃいいんだ?」


あきらめずに、その部屋に隠し扉でもないか探してみるのであった。


「しかし、たくさんの本棚が邪魔だな。それにこの大量の本には、そもそも何が書いてあるんだ?」

サーミャは無作為に本を手に取って目を通すことにした。

本の内容自体は『ムルシア語』で書かれていたため、読むことに問題はなかったが、その本には魔法の詠唱について記載されていた。


「『フリーズ・ランス』……なるほどね呪文の詠唱と効果がまとめてあるのか」

「こいつは水魔法関連の本ってことか、あたいの知ってる事ばっかり……くっだらね――」


「!」


「『フィルス・フリーズ・ランス』……なんだこれ? 聞いたことがねぇぞっ」


そこに書いてある呪文を、試しに部屋の何もない壁の方に向かって詠唱を放ってみた。

すると、通常の『フリーズ・ランス』とは異なり、詠唱に少し時間がかかるが、従来より温度がさらに低い三叉の氷の槍が生成された。

威力が異常だと思った彼女は、詠唱は破綻させ放つのをやめるのであった。


「おいっ! こりゃ、魔法の威力が各段に違うじゃねぇかっ!」

「まるで、『エクソシズム・ケーン』で魔法の内容を倍化するってのとはまた違う……別物だ」

「これがイスガの魔法技術なのか?」


それから興味が沸いてき、そこら中の本を適当に開き中を読んでみるのであった。


「今まであたいの知っている魔法とは、どれもこれも各段に威力が違う詠唱が書いてあるじゃねぇか」

「覚えて帰ったら凄いことになりそうだが……」

「無理だな、頭悪りぃ~からなあたいは……実戦で使っていくうちに実践で体で覚えていく方から……苦手だな」


そして色々な本をあさっているうちに、杖について記載している本を見つけ、読んでいるうちに『エクソシズム・ケーン』の事が書いてあるページを見つける。


「あの杖はイスガで作られたものなのか……仕組みは魔法の威力の増大と基本呪文の詠唱を記憶する試作品……て?」

「っつうことは、ここで作られた試作品が流出してたってのか?」

「確かにあんなもん、どうやって作ったか謎だったが……」


彼女は奇妙な縁を感じていた。巡り巡って自分の物になった『エクソシズム・ケーン』……この部屋に導かれたのは運命だったのかと、それともルティーナに出会えなかったらと考えると彼女には感謝でいっぱいになった。


「ルナが居れば、この本を小さくして持って帰りたい放題なんだろうが、もったいないな……これがあればあたいはもっと最強になれたのかもな」


しかたなく興味がある内容だけ選りすぐり、その部分を本からページを破り、おもむろに懐に入れるのであった。

しかし30分も経ったぐらいに、今まで通ってきた道に見落としが無かったか通路を逆走し全員が分断された場所まで注意深く戻ることにしようとした時、本棚に肩が当たり2冊の本が落ちてくるのであった。


「!」


落ちた本の開いたページの内容が、偶然、彼女の目に飛び込んできたのであった。


「こ、これは……て、転移魔法……『ディメンジョン・テレポート』?」

「すげぇじゃねぇか魔法でそんなことができるのか? たしかに……こんな魔法があるなら、ここに来れた理由も納得できる」

「ってことは、これを詠唱すれば好きなところにでも行ける……それなら一発解決じゃねぇか!」


早速、ルティーナのことを思い浮かべて詠唱を試してみたが何も起こらなかった。


「はぁ? 詠唱……間違えてねぇよな? これはもしかして……攻撃魔法じゃねぇから使えねぇのか? シャルとかリーナなら使える系か?」

「文章に続きがあるな……! ろ、6属性を扱える者でなければ発動できない……だとっ」


この転移魔法は、『光魔法』と5種類の攻撃魔法が使えるもののみ使用できると、そこには記述されていたのであった。


「……6属性の魔法使いなんて……あいつ入れても、この世界に2人か3人しかいなかったはず……(だが、あいつは『闇魔法』だから無理だな)」


そしてもう一冊の内容は、全8属性持ちしか使えない『時間』を操る魔法のことが記載されていた。

この2つの魔法とも自分には到底無理だと理解しながらも、情報として必要な部分だけを破りとり懐に入れた。

この王国を封印したら、この有意義な本も全て失われることに未練を残しながらも、彼女は部屋を後にするのであった。


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