103話 守護ノ機械
ルティーナ達はヘギンズに頼み、以前、謎の魔物の気配を感じた場所まで馬車で連れて行ってもらうことにした。
その移動中、ルティーナは8年前に起こった出来事をヘギンズに問うのであった。
そこで知った内容で、馬琴が疑問に感じていたことの大半の糸が繋がり始めていた。
そして――。
ただいま探索中
ルティーナと馬琴は、自分達は8年前から同じ時間を過ごしていたことを知り、『王都爆発事件』から一連の繋がりが出来たことに驚いていた。
馬琴は、自分の存在を知られることは避けていたが、この『イスガ王国』の件が片付いたら、皆に事情を説明して、シャルレシカにルティーナの記憶を探ってもらうことを決めるのであった。
そんな事を思う中、目的地に到着するのであった。
「みんな、無事に帰ってこいよ」
「そうだサーミャぁ、襲撃の件片付いたら葡萄酒を飲みあかすって約束を忘れんじゃねぇ~ぞっ」
「そうだったな後回しになっちまったけど、この美女がサシで付き合ってやるよ」
「サシって……もうちょっと色気を見せろよ」
「「「「あははっ」」」」
「さぁ、行くわよっ」
ルティーナは、4人に【軽】を3重と【微】を描き、小さく軽くして懐に入れた。
そして、【翼】を自分の背中に描き空を舞い、以前に見つけた謎の建物らしき物がある方に向かって飛翔した。
「皆、振り落とされないでね」
「「「「大丈夫よ」」」」
ミレイユからの説明では、『イスガ王国』が眠る場所の上には楔のように物体が浮かんでおり、彼女からもらった『鍵』を持っていれば5km付近にまで近づけば自動的に導かれると聞いていた。
そして、その目印が見えた瞬間、急に鍵が光だし5人を包み込んだかと思うと、部屋に居たのであった。
「こ、ここは……」
ルティーナは床に降りて懐から4人を取り出し、『能力』すべて解除するのであった。
「これが、イスガ王国の地下なんですか?」
「話通りだと、この銅像に『鍵』を差し込めば地上に戻れるってことですね」
「あとは、このイスガを完全に封印する制御室ってところに行かないと」
「じゃ、鍵は誰が持っておく? やっぱルナだよな?」
「みんな一緒に行動することが必須だから気を付けてね」
「5人居ても結局1箇所づつしか探せないのは、なんか効率が悪いですね」
しかしシャルレシカは、何かスッキリしない顔をしていた。
彼女は半径20m以内であれば魔物や悪意を自動的に感知できるのだが、生き物でもなんでもないが危険なものがウヨウヨしている気配があると困惑していた。
彼女は無機物の索敵は出来ないことは知りつつも、ルティーナは広範囲索敵をしてみるように指示した。
すると、この部屋の周囲には、同じような謎の危険な気配が数十存在し、2km範囲内であれば悪意は感じない魔物が大量に居ると皆を驚愕させた。
2km範囲ということは城外、つまり、城下の街……国民が居た場所にいる大量の魔物の存在に違和感を感じる馬琴であった。
とにかく、今いる部屋の先にある階段を降りる5人であったが、そのうちに目の前に扉が現れた。
シャルレシカは、さっきの危険なものが扉の向こうに居ると慌てるのであった。
「フレーディルさんが目的を果たせなかった理由……確実に危険な何かがこの先にあるって考えたほうが無難ですね」
「うかつにはこの扉は開けられないぜ……」
「でも開けるしかないぜ。それなら例の奴やったらどうだ?」
サーミャは、ルティーナにいつものように【棘】と【斬】で撃退する方法を提案したが、馬琴から駄目出しをされルティーナから説明させた。
それを使うことで、施設に亀裂を与えしまい天井が崩れる可能性や、地上が砂が流入する可能性がある為に使えないと。
そして彼女にも、火などの爆発系魔法は施設に影響を与える可能性があると警告するのであった。
「マジか」
「八方塞がりじゃねぇ~か」
「とどのつまり、扉を開けないと話が始まらなさそうだね」
「いざとなれば私がすぐ防御壁を展開しますから、攻撃はよろしくおねがいしますね」
「シャルは後からついてきてね、私たちが先導するから」
「はぁ~い」
「とりあえずぅ、この向こうには誰もいなさそうですよぉ」
「わかったわ、扉を開けるわよっ」
ルティーナは慎重に扉を開け、外を覗いたのであった。
その先は、通路がひたすら続いており、その両脇には不自然な鎧の人形が連なって並んでいたのであった。
「どうだい? ルナ」
「特に危険はなさそうなんだけど……」
「あのたくさんの鎧は一体、これがシャルが言っていた危険なものなのか?」
「剣と盾を持ってるけど、襲って来るわけな――」
すると突然、鎧の人形が動き出し襲って来た。そして、シャルレシカを守りながら4人は迎撃を開始するのであった。
そして、サーミャは『フリーズ・ゲージ』で、鎧の人形の1体を凍らせるが、中から氷を砕き再び動き出すのであった。
「げっ、効かねぇ」
「んじゃ、私の出番ですねっ! たぁ~っ!」
ロザリナは、振りかざされた剣を素手で受け止め、腹部あたりに拳をぶち込み後方に吹き飛ばし変形させるが、全く効いていないかのように再び立ち上がって襲ってくるのであった。
「な、なんなのよぉ~こいつぅ」
「それなら、『ソード・オブ・スラッシュ』っ」
(【斬】)
エリアルは剣をかわしながら、人形の腕を切り落とした。
すると切り口から見えた物は――。
(き、機械っ?)
(き・か・いって何?)
(そうか、ここの国の文明はルナ達の住んでいる世界ではないものを作り出している)
(??)
馬琴はルティーナに、サーミャとエリアルに雷系の攻撃に徹し、ロザリナには相性の悪さからシャルレシカを守るように指示した。
そしてルティーナは、手裏剣に8m程の【水】を描き、奥の鎧の人形たちの真ん中あたりに投げ込むのであった。
(水なんかで?)
(ルナがミヤに使っただろ?)
(あ、そっか)
手裏剣からは大量の水が吹き出し、鎧の人形たちは水浸しになるのであった。
「ミヤっ! 『ライトニング・スプレッド』を奥にぶちこんでっ」
「なるほどな!」
サーミャが呪文を放つと、奥から攻めてくる鎧の人形たちは一瞬で煙を上げ動かなくなった。
そして、周りに迫っていた鎧の人形たちはエリアルが雷の剣で一刀両断にし、その場にいる人形を全て撃破し、全く動かなくなったのであった。




