102話 空白ノ八年
ルティーナ達はミレイユから『イスガ王国』の状況について説明を受ける。
それを理解したうえで、友達であるエリアルの力になると『イスガ王国』の完全封印の手伝いをすることにした。
その時、魔剣がエリアルに渡った経緯も知ることになるが、魔剣はエリアルにしか扱えなかった。
同じ力を感じる馬琴には違和感しかなかったのであった。
ルティーナ達は、夜が明ける前に子供たちを起こさないようにこっそり孤児院を抜け出し、警備隊の所に向かった。
「ギンさん~遅くなってごめんなさいね」
「一体どうした? 片づけに時間がかかったみたいだな」
「こっちはもう大丈夫だ、ほとんど俺が状況を説明しておいたぜ」
「ありがとうございます。助かります」
ヘギンズからは、彼らの悪行は朝市に街中に公表され、1年間投獄後に国外追放にされるという処分が科されたと聞かされエリアルは安心するのであった。
これで、しばらくの間は留守にしても馬鹿なことを考える連中はいなくなると。
「ところで、ギンさんにはまたお願いしたいことが――」
ルティーナは、ヘギンズが友達の家に帰ろうとしたところを捕まえ、これからする事を説明した。
彼は二つ返事で、ルティーナとシャルレシカを以前降ろした砂漠の街道まで連れて行くことを了承した。
そしてそのままヘギンズに馬車を出してもらい、一旦、砂漠入口の宿場まで移動し、全員一睡もしていなかったこともあり、昼過ぎから睡眠をとることにした。
そして夜中の内に、ルティーナはヘギンズと一緒に操車席に座り、彼女が目印で残している窯の場所を目指して移動を始めた。
そんな中、ふとルティーナはヘギンズにある話を問いかけるのであった。
「8年前、ノモナーガ王国で何かあったんですか?」
「ん? 急にどうしたんだ?」
「8年前かぁ……あ、あれか! 『王都爆破事件』があった時だな」
「王都で?」
ルティーナはヘギンズから、当時の事故の原因は未だ不明であったことと、その時に王様が爆発に巻き込まれ重体になっていた話を聞かされた。
(国王が重体?)
(国王は怪しいってマコトは疑ってたわよね?)
(あぁ、会話が変だったからな。やたら8年前にこだわっていた……)
馬琴は、ルティーナが崖から転落してた時期とスエインが砂漠の水晶を発見した時期も、なにもかも同じ時期であった事が、ただの偶然でないと思えるようになった。
ノモナーガ王は、自分の世界の事を知っている――爆破に巻き込まれて重体になった
魔剣の中には、自分の世界に居た誰かが同じように誰かがいる――剣で謎の水晶に触れたことで魔剣になった
そしてルティーナの中には俺がいる――森で何かを拾おうとして崖から転落し意識不明になった
(も、もしかして、ルナ! 森で見つけたのは『水晶の破片』なんじゃないのか?)
(え、ん~――うっ……頭が……)
(ルナっ、大丈夫か?)
「おいっルナリカ? どうした? 頭を抑えて……大丈夫かい?」
「あっ……ごめんなさいっ、急に頭が痛くなっちゃって」
「でももう大丈夫です。で、どこまで話していただけましたっけ?」
「王様が重体だった話までは覚えてるか?」
「そこから先ですね」
ノモナーガ王が無事に復帰した翌日から、今までの国の悪い政策が一変し国民の生活が潤いはじめたという。
国民から不満の的になっていた大臣の一部を更迭したり、あたらしい部署など国民の為の政策が充実した。
以前までギルドはノモナーガ王国の北側に設置されていたのを、同盟国との関係上、南側の国境が近い場所に移動し、効率よく治安を守れるようになった。
それに加え、同盟国にも『バリア・ストーン』の配置し魔物への対策がされたおかげで、商品の流通が盛んになり街にも活気が出てきた。
「ある意味、いい国にはなったよ」
(そんなに変わったんだ……やはり、王が別人になったとしか? しかし、政治や経済に詳しくないとそこまでの改善は……)
「だが、悪い噂もある……これも、8年前から怪事件が噂されてるんだ」
「怪事件?」
ヘギンズが言うには、爆破事故を境に王国の守備や護衛団の数人、それだけではなく国民のがここ8年間で連絡が取れなくなったと噂が広がっている。
噂だと言われるのは、祖国に帰ってしまっていたとか、事故に遭った人がたまたま関わってたから等の噂も入り混じってしまったからである。
その時、馬琴はバルストが、ルティーナが大怪我をするまでノモナーガ城で護衛団をしていた話しを思い出した。
そして何かの糸がつながった感じがした。
(爆破事件の何らかを知ってしまった人間は、不自然な内容に見せかけて消されているのは、ほぼ確定だね)
(故郷に帰った人は連絡がとれないって、お父さんみたいに暗殺されたってこと?)
「俺が知ってる8年前から変わったって思ってるのはそんなことぐらいかな」
「そうなんですね。ありがとうございました」
「あぁ、ルナリカとは何を話せばいいか困ってたからよかったよ。あと1時間ぐらいしたらこの前の場所あたりだと思うんだが……」
「私の作った物が撤去されてなければいいけどな」
馬琴はルティーナの当時の記憶が蘇れば、もうすし真相に近づける気がすると話す中、ルティーナはあることを思い出した。
(お花を積んでいる最中に、光るものを見つけた所まで思い出したわ)
(それを……取ろうとしたのか? 触ろうとしたかまでは……わからないけど)
(光るものかぁ……やはり水晶の可能性は高いな)
(そうだとしたら、それを触って魔剣で起こったことがルナの体に起きたとすれば、俺が存在している理由が納得できる)
(それじゃ、私の中にマコトが入ってきたのは半年前でなくって……)
(そう、俺たちはその時から目覚めるまで一緒に7年間眠っていた可能性が高い……)




