100話 王国ノ真実 ~後編~
ミレイユは『イスガ王国』の姫であった。
そして彼女は、砂漠の下に今でも存在する『イスガ王国』の真実をルティーナ達に語りづつけていた。
フレーディルはもともとイスガの平民の出身でありながらイスガ王が皇太子であったころに街で市民の生活を勉強していたころに偶然出会い、一目惚れされ王宮に迎え入れられていたのであった。
フレーディルは昔に戻ったと思えば今の生活は苦ではなかったが、それを王宮生活をしていたミレイユに押し付けるのは不憫だと嘆くも、彼女は父親を亡くした辛さを受け入れ、自ら孤児院の子と友達になり遊んでいたことに、嬉しさを感じていた。
そして、翌朝に孤児院にミレイユと一緒に訪問することにしたのであった。
「すみません、こちらの院長様はいらっしゃいますでしょうか?」
「はぃはぃ、どちらさ――あらっ、ミレイユちゃんじゃないの。では、お母さまですか?」
「院長さん、おはようございます――」
「ご挨拶が遅くなって申し訳ございません。わたくし、フレーディル=イス…… イスタナと申します」
「本日は、娘から働き手を募集されているとお伺いし参りました」
「え、本当ですか? ここではなんですから、客間でお話しませんか?」
フレーディルはミレイユに他の子供達を遊んでくるように伝え、院長と2人で応接室に行くのであった。
院長は働いてもらえることには感謝したが、まともに給料は支払えないことを謝罪したが、フレーディルはここに住まわせてくれるだけでそれでいいと。
幼少のミレイユの面倒をみながら働けない現状と、宿暮らしであることを説明し院長を納得させ、住み込みで働くことに了承してもらうのであった。
そして、その事を素直に受け入れてくれるミレイユに、フレーディルは胸をなでおろすのであった。
しかし、孤児院の生活は思ったより大変で、子供達は0歳~15歳までが32人、あと18歳までの子とミレイユを併せて40人の面倒をみながら、少ない食料と国からの若干の支援金で生活をやりくりするものであった。
子供たちは16歳になったら、社会に出られるように外で働くようになり、その稼ぎから少し援助してもらうようにし、その後1人立ちできる様になれば自由に巣立ちしていい選択権を与えていた。
――それから10年が過ぎ、院長が老衰で亡くなり、遺言でフレーディルが引継ぎ孤児院を運営をまかされるのであった。
さらに月日が流れ、ミレイユは22歳になった時、同じ孤児院で一緒に育った同い年のスウエンと結婚することとなった。
スウェンはもともと剣を扱うのがうまく、それを認められ16歳の時にバルステン王国の騎士団の見習いとして入団しそれなりの力を着けていった。
彼は、騎士団で支給されたお金を毎月、孤児院に援助していたがミレイユとの結婚を機に退職し、彼女と一緒に孤児院の運営を手伝うことにしたのであった。
そして3人で孤児院を運営していたある日の事――。
「ミレイユとスウェン、あなた達には、この先、孤児院を運営してほしいのです」
「急に、どうしたんですか? お母様」
フレーディルはある決断をしていた。
そして今、ミレイユが幸せになり心強いスウエンが傍にいてくれることで、王妃としての勤めを果たす時だと話しを切り出してきたのだ。
「スウェンには、ちゃんとお話しておかなければいけないことがあります」
「私とミレイユは、イスガ王国の王妃と姫だったのです」
「――!」
フレーディルは、過去の経緯をスウエンに語った上で、ミレイユも知らなかった話も『イスガ王国』が何を作っていたかも全て話すのであった。
「これから私はイスガ王国に戻り、彼の意思をなしとげなければなりません」
「お、お母様っ」
本来であれば『イスガ王国』が正しく封印できていれば、1週間もすれば広大な大地に変わるはずだった。
しかし、今だ数十年経っても広大に広がる砂漠のまま、大地に変わる様子はまったくなかった。
彼女は、イスガ王から大地に戻らなかった場合は、なんらかの誤動作があった可能性があり、そうなれば誰かが王都にもどり手動で起動しなければならないと伝えられていた。
「……封じ込めたもを停止しなければらない。それが私の最後の役目」
「戻るって……脱出に使った棺は……確か」
「大丈夫です。実は王国に出入りする方法はもう1つあるのよ」
「それがこの『鍵』なのです。この『鍵』をもって王国に近づけば、王宮の地下に導いてくれる空間転移を実現したイスガの技術があるのです」
「そんなことが……できるの? 『鍵』は2本ある理由は――」
「これから私は王国に戻り、砂漠地帯を元の大地に戻して完全に封印します」
「これが王妃としての役目なのです。やっと私の願い……愛する彼と一緒に眠れるのです。わかってミレイユ」
「でも、もし砂漠のままだったら、私の身に何かが起こったということ……」
「な、なんでお母様が――」
「ごめんなさい。ミレイユ」
そしてフレーディルはミレイユにもう1つの『鍵』を託し、万が一、自分が失敗した時に、どんな手を使ってでも役目を果たしてほしいと願うのであった。
フレーディルは封印できれば地上に戻ってこれるから安心するように伝え、2人に孤児院を託し、その日の夜に1人イスガ砂漠へと旅立つのであった。
――しかし、フレーディルは戻ってくる様子もなく、1週間過ぎたが砂漠は何も変わっていなかった。
それから約60年が経過し母親との約束も果たせず、今に至っていたことが語られた。
「「「「「……」」」」」
ルティーナは重い雰囲気の中、口を開くのであった。
「ミレイユさんは……イスガ王国の姫」
「そして、この『鍵』は残されたイスガ王の最後の希望……」
「はい。さすがですねルティーナさん……私が何を皆さんにお願いしようとしているかお解りのようで――」
それを聞いたエリアルは、昨年亡くなった前院長であるスエインから子供のころに聞いた昔話が事実であったことに、驚きよりも何故か嬉しさが湧くのであった。




