君は生活保護を受けている俺みたいな男でも好きになってくれますか?
“君は生活保護を受けている俺みたいな男でも好きになってくれますか?”
・・・最初はごく普通に仕事をしていた。
工場の社員で15年以上働いていた俺は、決して給料はそれほどよく
なかったのだけど?
それなりになんとか生活は出来ていた。
家賃が月6万円のマンションで一人暮らし。
食費を減らしながら家に居る時は自炊して、たまに贅沢で外で一人で
飲みに行く。
安くて旨い居酒屋に行くのが俺の楽しみだった。
俺は39歳独身、出会いは全くなく! もう10年以上彼女が居ない。
貯金も殆どないし、結婚なんて現実的に考えられない!
自分一人面倒を見るので精一杯の人生だったけど、俺はそれでも今の
人生を楽しんでいたし、苦労も多いけど満足はしていた。
・・・でもある時、会社が突然! 倒産になり俺は仕事を失う!
無職になった俺は職安に何度も通ってはいたけど?
資格もないし、やりたい仕事もない!
少しの間、失業手当をもらいながら仕事を探していた。
でも? 運が悪く俺は自転車で激安スーパーに買い物に行く途中、
車にひき逃げされて肩を強く打ってしまう。
車は俺を轢いた後、そのまま走り去ってしまった。
俺はしぶしぶ病院で治療してもらいに行くと? 病院の先生にこう言われる。
“リハビリしても少し後遺症が残るかもしれません。” “えぇ!?”
治療費も実費で払いその後、踏んだり蹴ったりの人生に切り替わる!
俺は肩を痛めた為、面接をしても肩の痛みがあるので面接の時に、
“あまり重いモノは持てません” と言うと、、、?
どこも俺を採用してくれる会社はなかった。
そこから仕方なく、生活保護を受ける事になったのだが......。
月に13万円も貰える、俺は普段それ以外はフラフラ公園で昼は
缶酎ハイを片手にベンチでボーっとしている事が多くなった。
夜は激安の居酒屋で安く飲む為に、お酒もスーパーで買ってきて店で
飲んだりして過ごしていた。
もうまともな生活が出来なくなっていた俺!
一生懸命、働いてもいろいろ引かれて残るお金は少ない。
それに比べて、何も引かれない上に仕事もしないで月に13万円も貰える
生活保護の生活は、なんて最高過ぎなんだろう!
*
そんな時俺は、夜中の2時に何時もより遠くにあるコンビニにふらっと
入り、寝酒を飲む為に買いに来ていた。
そこに若くて可愛い女の子が店員で働いていたんだ!
俺はその子に、“一目ぼれしてしまう。”
その子は優しい微笑みをこんな俺にもしてくれた。
『“遅い時間にお疲れ様です。”』
『えぇ!?』
『お仕事帰りですよね? だって、作業服着てるし!』
『・・・あぁ、そ、そうそう! 夜勤でね!』
『今から家に帰って、お酒でも飲むんですか?』
『まあね、これぐらいしか楽しみないからさ。』
『“お仕事頑張ってくださいね。”』
『・・・ううん、』
・・・俺は外でも家の中でもずっと作業服を着ている。
“倒産した会社の作業服。”
家にまだ袖を通していない作業服が数枚あって、俺はその服を着て
そのまま家でも着て寝るし、そのまま外にも行く。
だから彼女は俺の作業服姿を見て、俺が仕事帰りだと思ったんだと思う!
でも? 俺は生活保護者。
そんな事、カッコ悪くて彼女には言えないよ!
しかも? もし俺が彼女と付き合ったとしたら?
俺みたいな生活保護者の男を見て! 彼女はどう思うのだろう?
毎日フラフラ何もせず、昼間っから公園のベンチで酎ハイの缶を片手に
飲みながらボーっとしているだけの男を。
でも? 俺は彼女と付き合いたい!
今までまともに、“恋愛をしてこなかった男が久々に女の子にときめいている!”
ドキドキしながら彼女に会うために、俺は毎日、わざわざ遠くのコンビニに
まで足を運び、彼女に会いに行っていた。
さすがに毎日、俺が同じ時間にコンビニに行くもんだから、
彼女もどうやら不思議に思っていたらしい!
『“毎日、来てくれるけど、、、仕事が休みとかないんですか?
まさか、ブラック企業で働かされているとか?”』
『・・・えぇ!? い、いや、』
『それならいいんですけど? 毎日同じ時間ぐらいに来てくれるから、
働き過ぎなのかなって思って! “でも私は一生懸命、働く男性って好き
ですよ。』
『・・・そ、そうなんだ、よかった。』
『“体に気を付けて頑張ってください。”』
『うん、ありがとう。』
『“じゃあ、また明日!”』
『・・・明日。』
確実に彼女と俺は、少しづつ仲良くなっているのが俺にも分かっていた。
このまま毎日コンビニに行けば? いつか彼女と付き合えるかもしれない!
コツコツ彼女の居るコンビニに通うぞ!
俺は生活保護の殆どを、コンビニで買うためのお金に使う。
*
・・・でもある時、残酷な事が起きる!
“俺は何時ものように彼女が居るコンビニに行ったら?
若い男の子に代わっていた。” 俺が彼女の事をその男性に訊くと?
こんな事を言われる!
『“昨日、突然! 彼女から辞めるって店長に電話があったらしいですよ、
本当に急に辞めるんですね。”』
『えぇ!?』
『こういうの困るんですよねぇ~ 人も居ないし急遽、他の店で働いて
たのに、次の人が入るまでココで働くように店長から言われましたよ。』
『・・・や、辞めた、』
『残念ですよね、彼女! それに彼氏にかなり貢いでたらしいし、
ちょくちょく前借もしてたらしいですよ、ひょっとしたら夜逃げでもした
んじゃないかな?』
『・・・よ、夜逃げ?』
『家賃とか滞納して、彼氏に貢いで、彼女にとって最悪な人生だよな。』
『・・・・・・』
俺は何も知らなかった。
“俺より更に下の人が居るなんて、、、!”
俺みたいに生活保護を受けていても、彼女のように彼氏に貢いで、
しかも? 家賃滞納、払えなくなって夜逃げなんて俺より最悪。
彼女の人生って、なんなんだろうな?
生活保護を受けている俺が言うのもおかしな話だけど......。
今思えば? 勇気を出して最後に彼女に告白しておけばよかった。
ダメでも、心の諦めはついていたのかもしれない!
“なんか? 彼女が居なくなってからも俺のモヤモヤはずっと続いているし!”
本当にやり切れんわ!
最後まで読んでいただいてありがとうございます。