帰還者
私は一瞬にして背後を取られてしまった。もし相手が私を殺す気だったなら・・・想像するだけで寒気がする。だが状況は変わっていない。
「ここはどこだ?」
「!?」
私は驚いた。ゲートが出てきた者が日本語を話すなんて聞いたことがない。どことなく聞き覚えのない訛りはあるものの確実に日本語を話している。
「ここは・・・日本の山梨県です。」
「・・・今の西暦は」
「2035年です。」
「ふむ…その装備はなんだ?」
「これは…ゲートから現れたモンスターを狩るために人類が作り出した対モンスター用の武器です。」
人類はモンスターに対抗するためにいろんなものを作り出した。剣や銃などを強化し、魔法を使いやすくするために杖を作り出しもした。装備もゲート内から発見された素材を使って作られているものもある。
「モンスターとはなんだ?」
「モンスターは約十年前に現れ始めたゲートから現れた生命体の総称です…」
「なるほどな…なら俺もモンスターに含まれるのか?」
「・・・はい」
・・・
久々の日本語で異世界での訛りが残ってしまう。きっと変なしゃべり方になっているだろう。だがそんなことは気にしていられない。この女性の返答を聞く限りここが俺がいた世界でほぼ間違いはないだろう。何故ゲートが現れた?とかモンスターが何故ここに存在する?とかは後回しとして…俺がモンスター判定されているのは非常にまずい。今の俺の力を使えばこの女性程度なら一瞬で肉塊にできるだろう。だがその後は?きっとこの情報はすぐ流れる。この女性のように武装した者の中に俺より強い奴が混ざっていたら?その時は俺はなすすべなく死ぬことだろう。ならここで俺がとるべき行動は・・・
「俺は君を殺さない。そう約束しよう。そして君は俺を君たちのトップに合わせて欲しい」
どの道会うことになるはずだ。聞いたところ、モンスターは人間の形をしていない異世界にいた奴らのようなモノっぽい。それなら人型の俺を単純に殺して研究素材にってことはないだろう。それに彼女は俺より弱い。それならこの条件を否定するはずがない。
「わかりました…」
そして俺たちはハンター協会事務所に向かうことになった。
・・・
車で移動中いろんなことを聞いた。この10年で世界は大きく変わったらしい。俺の妹が生きているかは分からないが易々と死ぬような人間じゃない。
「着きました。」
「ああ。」
車を降りるとそこには大きなタワーが建っていた。中に入ると彼女…絵里さんは受付に話をしに行った。俺は入り口の方で待っていると、数分で話は終わったようで俺を呼びに来た。
「会長との面談が許可されました。今からエレベーターに乗って8階まで上がります。」
「わかった。」
そして俺はエレベーターに乗り8階のボタンを押す。そして1分もかからずに目的の階につく。
「あの部屋が会長室です。」
そう言われた部屋は異様な雰囲気を放っていた。俺は警戒をしながら扉を開く。
・・・
彼が扉を開いた瞬間、2人の男女が彼に襲いかかる。そこまでは見えた。だが瞬き程度の時間で目の前から2人が消えものすごい風が吹く。それとほぼ同時にドーンと爆発音のような音がする。音の方向を見ると2人が血を吐いて倒れている。男性の方は腕が変な方向に曲がっている。女性の方は腕が潰れて骨が見えそうになっている。
「ふむ、ここの会長とやらはこういうのが好きらしいな。」
瞬間気づいた。いや気づかされた。彼が放っている殺気に。それだけで気を失いそうになる。だがどうにか気合いだけで耐える。きっと私より下のランクだったら一瞬で気絶しているかもしれない。それほどの殺気を彼が放っていたのだ。
「すまないね。Sランクゲートから現れた日本語を話す人型モンスター警戒しない方がおかしいというものだ。」
そう言いながら出てきたのはハンター協会会長の清水春政。ランクはSで強力なスキルを何個も持っていると聞いている。
「2人ともSランクなんだがね。まさかこうなるとは…君は何者だい?」
「俺は柳雪。帰還者だ。」




