異世界からの帰還
俺は柳雪。普通の21歳男性だ。俺はある日、車にひかれて異世界転生を果たした。よくありがちな設定の世界、魔法に剣、勇者に魔王、もとの世界に未練はないがこの世界では力がすべてだった。そんな世界よりは元の世界の方がましだ。そして転生してから10年、俺は仲間とともに魔王を倒し、異世界同士をつなぐゲートを開くことに成功した。
・・・
「本当に帰るのですか?」
「まあな。この世界でやれることはやり切ったし。」
「お前がこの世界に残ったら地位も名誉も思いのままなのによ。」
俺はこの世界で最強となっていた。スキルと呼ばれる能力的なものも数えられないぐらい持っているし、レベルも化け物並みに高くなっていた。きっとこの世界で暮らせば何も不自由はしないだろう。だが…
「それでも俺は戻る。うちに妹を置きっぱなしなんだよ。」
異世界で暮らしている時間が元の世界ではどうなっているのかはわからない。同じく10年なのかもしれないし、一瞬の出来事かもしれない。逆に想像もできないほどの年数が経っていてもおかしくはない。妹がいなくなっている可能性の方が高い。それに俺は元の世界ではもう死んでいるのだ。そんな俺が戻ったらどうなるのかすら分からない。それでも帰らなければいけないのだ。
「俺は元の世界の方が好きなんでな。」
「そうですか…そこまで言うなら止めません。」
「そんじゃ、元気でな。」
「ああ、三人も元気でな。」
そして俺は仲間たちに背をゲートをくぐった。
・・・
この世界は突如として崩壊した。今から10年前、世界中に穴が開いた。その穴からは大量の化け物が現れだした。人類は滅びるのを待つことしかできないと思っていた。だがその穴…ゲートが現れたとともに人類にもハンターと呼ばれる特殊能力、スキルと呼ばれるものを発現した者たちが現れた。その者たちの力によってゲートはなくなっていった。だがそれからこの世界には定期的にゲートは現れるようになった。
・・・
私は春霧絵里、Bランクハンターだ。ハンターはA~EそしてSに分類されている。ランクが上がればいけるゲートも増え、給料も上がるのだ。Bはまあまあのお金を稼ぐことができる。
「ハンターも楽じゃないわね。」
今日は急に現れたゲートの調査だった。ゲート出現後三日で魔力量を調査する。魔力量が高いとゲートのランクも上がっていく。その魔力調査の期間はB以上のハンターが監視につくことになっている。
「急に現れたゲートとは聞いてたけど、かなり小さいわね。」
サイズ感にして人1人がくぐれる程度、中から猛獣なんかが出てくるとは思えないサイズをしていた。
「Dとかかしらね。」
私がそうつぶやいた瞬間、爆発音が響き渡る。爆発音のした方向を見ると魔力量調査を行う機器が壊れていた。周りの作業員があわただしい。
「何かあったんですか?」
「そ、それが魔力量調査を行ったところ機械で調査できる魔力量を超えて機械が壊れたそうなんです!」
「な!?」
今回使われた機械はAランクゲートでも壊れることはない。Sランクゲートでも下位のものならギリギリ測れるレベルの性能はしていると聞いている。それですら測れないとなるとこのゲートは・・・
「!?」
作業員たちが慌てているとゲートから何者かが出てきた。服装はよくある漫画の世界のような服装。腰には刀を携えている。顔を見ると30代程度だろうか。髭の手入れをしていないのかぼうぼうに伸びきっている。そして彼が出てきた瞬間、ゲートが閉じた。
『嫌な予感がする…』
ゲートはボスを倒すか、中の魔物が全て消えない限り閉じることはない。そして魔物が減ると放つ魔力の量も減る。つまり、彼一人がSランクゲートの中位から上位程度の魔力を持っているということになる。私がどうするか考えていると彼が一瞬でその場から消えた。
『!?どこに!?』
私が首を振ろうとした瞬間、首に冷たいものが当たる。
・・・
俺がゲートから出ると森林のような場所だった。そして俺が出た瞬間ゲートが閉じる。一度きりの片道切符のようなものなのだろう。そして俺は辺りを見渡す。周りには数人の作業服を着た者たちがいる。元の世界なのかもしれない。そう思わせる服装だ。確実にさっきまでいた世界ではないだろう。だが確実に元の世界であるとは言えない。だから俺は一番多くの魔力を放っている人物の後ろに行くことにした。
《スキル:縮地》
・・・