べトン捕縛作戦ーイクル戦
ぶつかり合う錨と戦斧
一瞬の拮抗状態を経て
イクルは瞬間的に身体強化魔法を使い晨弥に競り勝つ
バックステップを踏みつつ体勢を整えると同時に
晨弥は魔力そのものに質量をあたえることで土煙をあげ
すがたを紛れ込ませる。
お前はそっちのタイプか!
イクルの中にはすでに侮辱されたことへの怒りはない。
晨弥を殺せばすべて解決するとイクルの中で解決している。
あとはイクル視点この戦いを楽しむだけである。
異世界人を殺すという側面と
戦闘狂の側面の両方を同時に持ち合わせていた。
姿を煙の中に消した次の瞬間
ゴウ!
煙の中から炎がイクルへと向かう。
これは予想していたのか
軽くかわす。
かわしたところに今度は速度の速い炎の弾爪?が4発
かわしにくい位置に置くように放たれる。
「チィッ!」
かわしたのとほぼ同時に放たれたこともあり
かわさずに受ける選択肢をとる。
錨に魔量を纏わせ一撃をもって消し飛ばす。
消し飛ばした風圧は土煙も同時に消し飛ばし
再び晨弥とイクルは相まみえる。
「九世のわりに随分と小心者だな。煙に乗じるってのは。」
「興がのらねぇってか。俺の知ったことじゃないな。」
「いや?興が乗らねえことはねぇな。異世界人を殺すときはいつだって。九世のわりに情けねえ、戦闘をせずに暮らしていた異世界人のあがきでしかねぇ。それにお前が魔眼を使えない状態にあるって聞いていたが、、どうやら本当のようだな。未来視を持っていて、わざわざ俺と戦いになるルートを選ぶはずがねえ。」
未来視の話題を振った時、一瞬の表情の変化をイクルは見逃していなかった。
「シュポーロで聞いた異世界人殺しの噂は本当だったんだ。性格の悪さも本当っぽいし。てことは女癖が悪いのもホント?」
「あ?なんだよ。やっぱ俺のこと知ってんじゃねえか。女癖がわりぃってのは心外だがな。俺に女が寄ってきてるだけだ。女癖がわりぃとか言ってる野郎は女に寄られるだけの実力がねえだけだ。九世になったんなら言い寄られた経験あるだろ。」
「、、、あるわ。貴族から」
厄災討伐後の夜会を思い出し
面倒くさかったことがわかるような声で返答する。
「貴族から?そりゃいい。お前を殺せば貴族に相手してもらえる可能性があるわけだ。」
「俺を殺したやつに言い寄るやつとかたかが知れてる気もするけど。」
「そりゃどういう意味だ?」
「俺を殺して貴族から言い寄られる実力示せばわかるかもよ?」
「ふっ、お前に間違った認識を持っていたようだ。」
?
なにを言っているのか晨弥にはよくわからないが
纏っている雰囲気が変わったことは理解できる。
「お前は!俺と!同類だ!」
言い放つと同時に錨が射出される
イクルの武器の錨はコンモンアンカーのと形がよく似ており
持ち手のシャンク部分とクラウンが魔力を流すことで分離し遠くに射出することができる。
(クラウンと一緒にシャンクのクラウンに近い部分も射出されている。)
もとは射出するだけの魔道具であり
打ち終わったら射出された部分は霧散し持ち手部分で再構成される形式だった。
が
それをそのまま使うほど王級は優しくない。
「同じ部分があることは認めるけど、同類は失礼だろ。おれに。」
同類と言われたことに文句を言いつつもかわし
武器の考察を始める。
錨って言われて一番最初に出てくるような形してるもん。
そりゃ伸びるわな。海底にぶっさすもんでしょ?これ。
持ち手とぶっさすところを魔力の線?がつながってるし、まぁそういうことよね。
などと考えつつまだ飛ばされた部分が地に着く前に魔力の線に岩の剣を飛ばしてみる
お。素通りした。通常魔法だったし、、根源魔法と、、物理的にぶった切ってみるか。
根源魔法は適当に水を飛ばし素通り
物理的に戦斧で殴ってみるがやはり素通り
このタイミングで射出部位が地につき
引き戻されていく。
それを即座に回避していたことで巻き込まれずにおわる。
つーことは、だ。これ他人が干渉できない代わりに
魔力の線自体もこっちに干渉できないみたいな契約魔法かな。
幽幻刀で切れるのかもしれないけど、、切れるイメージができないから
今の俺では無理。
干渉可能かなオンオフあるかもだけど、、一旦パスかな。
んでもって
持ち手と飛ばした奴をつなぐだけなわけないよな?
戻しやすくなってるとか、、なわけないし。
つーことは射出の瞬間から戻すまでの間か。
近づくべきか離れるべきか、、、わからんからとりあえず
火の玉を無数に作り出す。
手数で殴って向こうからの攻撃をできなくさせる。
ドドドドドドッ!
無数の火の玉から放たれる火の雨
それをかき消すように飛んでくる錨
それをかわしつつ火力や着弾地点を更新する。
その繰り返し
と言ってしまえば簡単なのだが
戦っているのは王級以上
文面のはるか先の戦闘をいとも容易く行っていた。
とはいえこの状況が続いたのはたかだか十数秒
戻すの速いな。戻すときになにか出来るっぽいか?
などと晨弥が考えているのと同タイミング
こいつこの短時間で何百発撃ち込んできやがった?できることとしてはほんの序の口だろうがな
イクルもまた落ち着いていた。
ただ二人の思考で合致している部分もあった。
下手に時間を与えるとマズイな。
そう感じ取った二人の動きが変わる。
晨弥がイクルに向かい走り出す。
イクルもまた射出した錨で横の薙ぎ払いをもってかえす。
錨の先が今のペースの晨弥にあたるドンピシャのタイミングを見計らった一撃
しかし
急激に加速した晨弥がかわす。
炎の雨を降らせている最中にイクルのさらに先に着弾させておいた火を媒介に
重力の檻を作り出していた。
そして晨弥の右腕にも重力の檻を作り出し
二つの魔法を呼応させて急加速
イクルの目の前で重力の檻を解除した。
面食らった顔をしているイクルだが右手は錨の横なぎに使っているため
防御不可能に見えたが
イクルは左手で魔法を放とうとする。
しかし
このタイミングの攻撃は考えていなかった晨弥は
横なぎしている右腕を右腕の前腕で押しながら下を通り抜ける。
このタイミングで射出された錨が元に戻る。
晨弥の右手から放たれた火球を錨で防ぐ構えを取った時
イクルの眼にはかすかに映った
晨弥が伸ばしていた人差し指をおるところを
その瞬間
火球ははじけ散弾となってイクルに数発入れることに成功する。
火球・散
ショットガンから着想を得た
晨弥の自己流魔法改造の一つ。
くらった箇所からの服は破れ、そこから見える肌もやけどの跡が見える。
イクルは射出した状態の錨を巧みに振り回し攻撃を仕掛けながら
ゲラゲラとこの事実を笑う。
「アッハッハッハッハ!いいねぇ!昔もいたなぁ!こういう魔法の使い方ができる奴!」
晨弥が聞いていようといまいとお構いなしといった具合に
イクルはべらべらと語りだす。
「俺の腹に一発入れたやつ、、、なんつったかなぁ、、あの異世界人、、れん?だかそんな名前だったな。いやぁあいつは良かった。死に際に、、さ、、、さなんとかで死ねない!とか言ってよ?魔法を蹴り飛ばしてきやがった。これだから異世界人狩りは面白いんだ。あいつが教えてくれた!惜しむらくはそれが死に際だったこと!今!死に際でないお前が死に際に見せるのはどんなものだ!」
ザグン!
イクルの語りが終わる前に
晨弥は右腕の上腕から切り飛ばされていた。
さなんとかで死ねない!
でその者が感じたであろう思いを無意識で感じ取り
一瞬のスキができた。
「まったく。これだから対人戦は苦手なんだ。そーゆー意味では厄災の方がやりやすい。」
「随分と情けない遺言だな。」
イクルがこれまでの異世界人狩りで身に着けた異世界人特攻
イクルとしては相手の精神を動揺させて殺すという行為になんの問題も持っていない。
殺せればいい
それゆえに手段はできればタイマンで殺したいくらいの感情しか持ち合わせていない。
「いや、今の一撃で仕留められなかった時点でお前の負けだよ。」
「言ってくれるじゃねぇ、、か!」
晨弥から見て右側に錨が迫る。
晨弥はいつの間にか指輪にしまっていた戦斧を取り出し
重力の檻を纏わせて錨を真っ向から迎え撃つ。
再び鳴り響く轟音
射出された部分と持ち手をつなぐ魔力が波打っているのを見て確信する。
「やっぱりその魔武器、距離だな。」
魔武器
魔道具の中で戦闘用に特化したものの俗称
魔道具でも魔武器でもどっちでもよく
パッと出てきた方を使っているため、気にする人間はいない。
いたとしても学会では正式名称をできれば使ってほしい位なものである。
距離という単語を聞いた瞬間瞬時に後退を始めるイクル
そんな後退をするイクルよりもさらに速い速度で迫る晨弥
「チッ、さっきのはブラフか、、、!」
先ほどの加速を思い出しながら悪態をつく。
そんなイクルだがもう一つ疑念がある。
晨弥が右腕を再生しないこと
情報では再生できるはずなんだが、、
確か、解析鑑定も思っていたな。再生には魔眼が必要なのか?
思考は巡らせつつも
先に錨を射出し地面にさしておくことで
晨弥が魔道具の効果範囲内に入ったら起動するトラップを即席で準備する。
しかし
晨弥もそれに気が付きイクルから見て右に避ける。
さらに再び土煙をあげる。
仮にギリギリ効果範囲内に入っていてもすで右腕はないため
どうとでもなると判断したのだろう。
イクルはそうとらえる。
対人戦苦手って言ってのは本当らしいな。
「それでかわしたつもりか?」
勝ち誇ったようににやつく
イクルの魔力は多くはない
ならば遠距離の魔法を使うより
身体強化に回して遠距離にも対応できる魔道具を使いこなす方が得策
そう考えて訓練はきちんと積んできた。
自分の魔道具の使い方も研究した。
前方に向かって射出し
戻ってくる際の通り道にあるものを粉砕するのが通常
そこから距離に応じてその通り道の判定を大きくなるように契約魔法を使った。
そして
自動的ではあるが戻るのに時間がかかる代わり
持ち手と射出部分の距離を固定し
その距離応じた判定をそのままに振り回せるように
さらなる契約魔法を使っていた。
それゆえの
この発言
錨は晨弥の右肺をつらぬいた。
「ぐふっ、、、」
崩れ落ちる晨弥
完全に入ったという感触を実感するイクル
だが、いつものあの快感があふれてこない。
なぜだ?
その答えはいまだ空中に漂う火の玉にある。
それに気が付いた時
は?
崩れ落ちたはずの晨弥がたっていた。
晨弥が自身の体の再生の訓練で幾度となく
自身の指の骨や腕の骨を折って再生するところからヴァーロットに教えを請い
最終的には外への排斥の練習の際に体半分が吹き飛ぶほどの自爆を経験しながら
練習に励んできた。
もちろん回避できるなら回避するが
必要ならあえてくらって油断を誘うという狂気を身に着けてしまっていた。
立っていることに気が付いたと同時に
見せつけるかのように右腕を再生してのける。
その瞬間その光景にイクルは釘付けになった。
今度は火の玉が意識からそれた。
魔力はもうないに等しい。
「炎爪・二爪」
その瞬間
空中に漂っていた火の玉は爪となって
脳と心臓を貫いていた。
「異世界人殺しとかたまったもんじゃないからね、、」
あんまり時間かからなかったな。
他のメンバーのいる地点をみながらつぶやき
合流するために走り出す。
れん
17歳(高校2年生)サッカー全国常連校でスタメンやってました。




