帰還と会議と
1月16日 王都
ミルティコア王国国王アルゼディアのもとに
晨弥帰還の知らせが届いていた。
約1か月後に行われる平和祭に向けて
少しずつではあるが人が集まり始めている。
それに伴う治安の悪化も出始めている。
現状問題を起こしているのは
階級の低い冒険者たちであるため
ギルドと連携をとることで
ちょっとしたいざこざ程度で抑えられていた。
とはいえ
これからさらに人が増える。
そうなるまえに
晨弥も交えた状態で会議の場を設けたい
国王はそう考えていたため
1カ月前のこのタイミングで
ギリギリではあったが晨弥が王都に帰還したことについて
胸をなでおろす思いであった。
そんな国王の思いなどつゆ知らず
晨弥は馬車を途中で止めてもらい
串焼きを買ったりしているのだが
それはまた別のお話
、、、、
王城
王城へと戻った晨弥
とりあえず国王への挨拶は済ませようと考えていたのだが
幸か不幸か
国王から呼び出しをくらっていた。
あーあ。挨拶パパっと済ませてもう寝たいんだけど。
とうに日は落ちており
聖都で診察を受けている最中の休息はあったとはいえ
晨弥としては
うるせえ。いいから寝させてくれよ。
という思いであり
なんなら国王への挨拶明日でもよくね?
などとも考えていたため
若干煩わしく思っていた。
相も変わらず長い廊下
王城の住人となった晨弥でも
行ったことのない場所など無数にある。
現に今通っている廊下も晨弥が初めて着た場所である。
相変わらず長いし、どこだかわかんねえし、、、本当にどこだここ。
廊下の雰囲気もいつもの場所より厳重だし豪華だし、、、
秘匿性のあるものを取り扱うならここって感じはする。
などと考えている晨弥ではあるが
このタイミングで呼ばれんだから祭りのことだよな~
とは考えており、
あとは
面倒な仕事割り振られなきゃいいけど。
と
晨弥自身でも叶わないだろうなとは思うものの
願わずにはいられない願いを心の中でこぼす。
などと言っている間に
いつも通りと言うべきか、お約束通りと言うべきか
国王の待つ部屋付近に到着する。
というかしたのだが、、、
呼ばれたの僕だけじゃない感じ?
遠目で誰なのかはわからないが扉の前にもひとりいるのが見える。
身長は晨弥よりもあきらかに大きく
全身黒の衣装に身を包み
顔も面をつけていてよくわからない。
王城に戻ったから油断していたな。感知範囲絞りすぎてる。
僕もまだまだだな。
扉の前の大男もまた晨弥に気が付いたのか
扉を開ける手を止め晨弥を待つ姿勢をとった。
なんで?
誰だかよくわからないが
でかくて怖いからさっさと部屋には行ってくれと切に願うが
だいたい叶わないよね。かなしいね。
ただ少しずつ近づくにつれて
大男の正体がなんとなく晨弥の中で固まり始める。
鬼のお面?、、、暗部、、外での諜報部隊の人か?
晨弥とて暗部のことなど詳しくは知らない。
深追いしすぎて消されたくもないので
自分から調べることも聞くこともなかった。
それでも多少は情報が入ってくる。
騎士たちとの談笑中やら魔導士たちとの談笑中などなど
嫌な予感しかしねえ。
嫌な予感以外したことねえ気もするけど。
、、、なんか前にもこんなこと思ったような、、、
大男は扉を開き晨弥に先に入るように促す。
会釈しつつ中へと入る。
重厚な部屋
普段晨弥が呼ばれるような部屋とはわけが違う。
あ、これマジなやつだ。
部屋にいる顔をざっと見渡しても見知った顔もあるものの
普段とは明らかに纏っているものがちがう。
僕が知っているのは、国王にアンスさんにバリアスさん、ヴァーロットさんまでいる。
珍しいな。あとは、、、
重鎮どもって感じか?
うっわ!気付くの遅れた。
もう一人いる。
オーラあるのに気配が小さい。この2つって両立するんだ。
なんなんだこの人、、、
仕事人ってやつ?
「晨弥くん。帰ってきてそうそう呼び出して申し訳ない。」
「いえ、戻ったら顔を出すつもりではいたので。」
「そういってもらえると助かるよ。」
晨弥が椅子に座るまでのわずかな時間ではあるものの
久方ぶりの言葉を交わす晨弥と国王
疲れてはいるんだろうけど、、元気ではありそう?
その声から疲労が見え隠れしている。
「さて、これで全員集まったな。これより国際平和祭の対策会議を始める。」
まぁ、このタイミングならそうだよね。
「そのまえに。この場に居る者は知っているであろうが、九世に纏晨弥殿の名が刻まれた。」
そういや九世になって初めてか。ここに戻ってきたの。へんなの。
謎の感動のようなものを覚える晨弥をよそに賛辞が贈られる。
今の晨弥は九世となったことで
国王と同じ、下手をすればそれ以上の権力を持っているのと等しい状態にある。
これからは今まで通りにはいかない。
それは理解していたつもりの晨弥であったが
この状況下で再認識させられていた。
とはいえ僕からも一言必要だよね。
「今後ともこの国のお世話になるつもりですのでよろしくお願いします。」
晨弥の認識とは裏腹に権力のある人々の間では
九世は気まぐれで自由奔放な連中
というイメージもあるため
晨弥がここでわけの分からんことを言おうが
とくに何もなかったりする。
ひと段落着いたところで本題に入る。
「皆も知っているとは思うが、ここ王都で国際平和祭が行われる。厄災の復活しつつある今、開催について思うところがあるものがいるのもわかるが、開催するにしろ延期するにしろ反対意見が出るのは明白だ。ならば開催して各国のつながりを強固であることを民に示し安心を与えるべきだと判断した。」
「ここでやるのは、、そういうことですか。」
バリアスの問いに国王は何も言わずコクリと頷く。
そりゃぁ、、まぁ、、、ね?
この世界で今一番安全と言えるのはミルティコアだし。
今、ミルティコア王国が世界で一番安全なのはいくつか理由がある。
・そもそもとして魔法世界において最高水準の民度を誇ってい
・厄災が復活した地点近くに復活することが現状確認されていない
・ミルティコアが保有している戦力が世界トップクラスである
大きくこの3つにわけることができる。
最高水準の民度は犯罪率の少なさという観点からそう判断されている。
厄災については現状確認されていない程度ではあるが
復活する厄災が同じ国内で復活した記録がないことからそう言われている。
ミルティコアが保有する戦力については
ミルティコアがもともと大国であり人材の宝庫ということもあるが
各国にそう思われている一番の理由は
ジパングであった戦いによるものである。
そこに
晨弥という単独厄災討伐を成し遂げた九世が加わる。
喧嘩を売った代償が高くつくのは火を見るより明らかであった。
「オーシャル、帝国、聖都はいいとして他の国の動向が気になりますが、、ズノは今回参加するんでしたっけ?」
「ズノに関しては連絡を取りましたところ、参加するとのことでした。」
ズノの件はミードという外交を担当している男が答え
もう一つの方は
「他国の動向に関しては我々から報告させていただきます。」
結局この人たちは暗部の人たちでいいの?
「晨弥君に説明していなかったね。予想はしているだろうけど、今座っているのが現リロ家当主のゾル・リロと言う。この国の諜報員たちのトップだと思ってくれ。」
「ご挨拶が遅れてしまい申し訳ございません。ゾル・リロと申します。」
「よ、よろしくお願いします。」
僕にそんな丁寧な挨拶なんてしなくていいのに。
つーか当主自ら来るんだ、、、
本当の当主を隠している可能性もあるけど。
「では、僭越ながら私が報告させていただきます。」
ゾルの後ろに控えていた大男が前に出る。
「現在我々はシュポーロを主に情報を集めております。」
ま、そこだわな。やっぱり
「違法奴隷売買組織の動きが活発になっていることもあり注視していますが、奴隷の移送が行われており、間違いなく本国に近づいております。現状個人なのかオークションなのかを追っていますが王都に密輸するのかどうかは不明です。ただ戦力を集めているようで、こちらも万全の準備は整えておくべきかと。」
「騎士団、魔導士団の配備はどうなっている。」
「はい。現在は予定通りの展開をしていますが、状況が変われば早急に対応可能です。」
「良し。続けてくれ。」
「集めている戦力についても探りを入れましたところ、シュポーロとの取引が主な取引となっている小国
出身が多いようで、ここについても現在調査を続けています。次に判明していることに関してはシュポーロ側からも報告されている通り代表参加者はビーヌであることは間違いありません。」
ビーヌ、、、あ!あの人か。あの人なの!?
国王の方を見る晨弥
国王も無言でうなずく
まじかぁ、、、
「他国も調査をしていますが不審な点は見受けられませんでした。」
「奴隷たちがミルティコアに入るのは?」
「このままのペースですと1月中には入るかと思われます。」
「、、、シュポーロが主な取引国、、、」
「?」
晨弥が一点も見つめながらうわごとのようにつぶやく
「、、、あ。ギルマスがそんなこと言ってたな。」
「へディルトンさんが?」
珍しくバリアスがさん付けで反応する。
「はい。疫病の厄災と戦って聖都で検査やらしているときに。」
「彼はなんと?」
「最近冒険者登録が急増して調べてみたら急増した国がシュポーロが主な取引国の小国が異様なほどに急増していた、、、と。」
「小国の情勢をもう一度調べ上げます。」
「頼むぞ。」
やっぱこの手の会議は苦手だわ。




