それは世界の記録
聖女ヌンク・ルーエル
聖女となったのは
およそ3年ほど前
聖都にて
慈愛の魔眼を持って生まれ
祝福の魔眼を継承することで
聖女となった。
晨弥同様二つの魔眼を宿す者
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晨弥が厄災の元へと戻ったころには
再封印はすでに成功していた。
しかし
晨弥が四病の討伐を行っているうちに
さらに騎士から5名が土へと還ってしまっていた。
疫病の厄災戦に参戦した人数
九世:3名
騎士:20名
うち
死者:11名(騎士:11名 九世:0名)
戻ってきた晨弥に届いた知らせ
大陸横断の休憩中に話をした人たちであり
戦艦での移動中から仲良くしていた人もいた。
聖都から仲がいいのか晨弥自身よくわからなかったが話していた人もいた。
正直何者なのかよくわからなかった人だっていた。
そんな人たちの半分以上がもうこの世にいなかった。
結局これがこの世界で一番心に刺さる、、、、。
その苦しみをかみしめる。
死体すらないという事実を。
聖女が神聖魔法をかけようとすらしない
それもまた晨弥の心をえぐる要因になっている。
聖都の街中で聖女がだれかを癒しているところを見るのは珍しくない。
もっと言えば
聖女と街に出れば最低でも一回はそういった場面と出くわす。
目の前にけが人がいれば見返り無く手を差し伸べる。
聖女の護衛をしている人々は口をそろえて言う。
そんな聖女が動かない
「晨弥、そっちは間に合ったようね?」
そんな晨弥の状態を知ってか知らずか
モラレドが声をかける。
「、、ん?ああ、タイミング的にギリギリだったみたいだけど。」
「想定外だったわね。」
「まったくだよ。」
頭を掻きながらため息を混ぜた声で答える。
「あの骨が何だったのかもわからないし、、、」
「言ってはみたもののアスクレピオスじゃないわよね。あれ。」
「だろうね。んで?そこに横たわってる厄災は寝てるの?」
杭の中にある魔法陣の上で横たわる厄災を指さしながら問う。
「寝ているってのも間違いではなんだろうけど、、私も詳しくは分からないわよ。」
「だよね~。」
力づくではあるが話題を作ることで
頭から嫌なことを追い出す。
あとは帰るだけ
そのはずだった。
「は?」
「え?」
晨弥を中心に神聖属性を帯びた光があたりを包む。
戦闘態勢を整えるが、、、
しってる。
これが何なのか知っている。
晨弥はほぼ反射的に叫ぶ
「誰なんだ!お前は!いや、お前らは!」
『あなたがこれから見るのは、その土地の世界の記録』
「なに!、、、を、、、ウ、、、グ、、、、」
光が晨弥に収束していく。
はたから見れば叫んだ晨弥が意識を失った。
それだけの事
反応は様々だった。
騎士たちは何が起こったのかわからないといった表情を浮かべている。
モラレドは晨弥の叫びから嵐の厄災戦での神聖魔法の一件を思い出す。
そんな中
聖女が一番の反応を示していた。
しってる。
聖女もまた知っていた。
これが
この神聖魔法の感覚が
神からの神託を受けるときに感じる
あの感覚と似ている。
いや
あの感覚といっしょだ。
と
各々が思い思いの思考を巡らせる。
そんな中晨弥自身はというと
脳の処理が追い付かずに意識を失っていた。
未来視によって脳がギリギリなところに
高負荷がかかり意識を飛ばすことになった。
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なんだ?これ
「グルルルル」
今のうなりは僕か?
なんだ?
思考が追い付かない
それでも
あれ?ここは、、聖都?
見たことのある風景
しかし
どこか違う。
まさか死都か?
確証はない
僕はどこにいるんだ?
答えを出すには情報が足りない
情報を得るために視界に見えるもの全てに集中する。
一つ気が付く
人がいない?
移動する視界
しかし
どれだけ移り変わろうとも
ひとがいない。
なんで?
ここがもし仮に死都で
僕が疫病の厄災だったとしたら
人がいないのには納得がいく。
そう考えていたのだが
まて、、まてまてまて!
止まった視界
その先にいたのは
九体の化け物
まさか、、厄災、、、か、、、?
晨弥が姿を認識しているのは
嵐と疫病の二体
知っている厄災と同じ姿の厄災はいない
いないのだが
面影があるやつはいる。
知っている二体と似た見た目をしている厄災に目を向ける。
、、、、、ん?
ここで晨弥はおかしな点に気が付く
なんでここに全員いるんだ?
焦燥感
晨弥が知っているのは
各地に現れた厄災を討伐したのが
初代九世である。
そう
各地に現れたはずなのである。
なんでここに全員いるんだよ!
「グルルアアアアアア!」
視界の主が咆哮をあげる。
まてまてまてまて!
咆哮を皮切りに
厄災と視界の主が激突する。
「「グオオオオオオ!」」
二匹の厄災が咆哮をあげる。
それと同時に
吹雪が吹き荒れる嵐が視界の主を包み込む
どうやったのか晨弥にはわからなかったが
嵐を突破する。
僕の知ってる嵐の厄災より強くね?
ふと思う。
そんな晨弥を他所に戦闘は苛烈さを増す。
なんだこいつは?どれだ?
狼のような格好であるはずなのに
顔は竜のような見た目の厄災が襲い掛かる。
おおっ
危なげなくかわす視界の主に
晨弥は感嘆の声をこぼす。
さらに押し寄せてくる土の津波
その広さ、高さに目を見開くが
視界の主は
土の津波に突っ込みそのまま突破する。
突破したところに巨大な氷塊が降り注ぐが
すさまじい速度でこれを回避する。
この戦い方は俺にはできない、、、
氷塊を巻き込んだ大竜巻ですらも
さばききる。
ただ
こいつから攻撃はしていない。
何かを待っている?
いつかの晨弥がそうしたように
だが晨弥と全く同じというわけではない
こいつは、、、
こいつらへの攻撃手段を持ってないんだ。
なんとなく動きで分かる。
聖都でさんざん見てきた。
俺との戦闘訓練で俺への有効だがない騎士がとっていたあれ。
こいつはおそらく人じゃないそれでも
多分、人側の存在なんだ。
自分は死ぬかもしれない。
でも
ほんの一秒
わずか一秒を
作り出し
未来に託すためのこの動き
晨弥はそう思いながらこの戦いを
晨弥が生きる世代には記録すら残っていない
この戦いを瞼に焼き付けんと
見入る。
地上から噴き出すマグマのような炎
その炎を巻き上げる嵐
降りしきる雨が雹となってその中には疫病がこめられている。
少しずつ少しずつ
押され始める視界の主
晨弥は目を背けない
この戦いで少しでも
今後の戦いに優位になれる点を見落とさないために
暫定厄災
いや
本物であることを証明するかの如く
その力をまざまざと見せつける厄災
さらに動きが悪くなっていく視界の主
ここまで、、、か。
晨弥が思ったその時
「グオオオオオオオオオ!!!!」
視界の主は咆哮をあげた。
晨弥は最後のあがきだと思った。
思ったのだが、、、
戦いは思わぬ方向に向きだした。
視界の主の動きが間違いなく良くなった。
戦闘開始直後よりも明らかに。
え?
晨弥にはなにが起きたのかわからない
なぜこれほどまでに動けているのか。
魔法なのか。
何なのか。
わかるのは九体を同時に相手をして
視界の主が優位に戦闘を行っていることだけである。
戦闘は続く
永遠にも思える刹那の時間を
だが終わりは来る。
視界の主の動きが止まった。
「グオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
咆哮
これが先ほどまでのものとは違うことは明らかだった。
視界にうつる厄災たちの動きも止まった。
は?
厄災たちの体が何かに置き換わっていく。
あの鉱石に
置き換わってる、、、。
そして
疫病の厄災を除いた他の厄災が
目の前から消え失せた。
ズウウン
倒れる視界の主
そこへ
「あるがとう。アスクレピオス。あなたのおかげで間に合ったわ。」
晨弥が聞いたあの声が聞こえてくる。
お前が、、
「本当にありがとう。後は任せて。厄災は私たちだけでは情けないけど解決できない。でもいつか必ず解決するから。」
視界の主に微笑みかける女性
だれだ。
だれ、、、なん、、、、だ、、、、
アスクレピオスの視界がぼやけて暗くなるのに呼応して
晨弥の意識も消えていく。




