この世界における異世界人
アンスが団長に就任したころ
「お呼びでしょうか。陛下」
「アンス団長。待っていたよ。就任式の時にも言ったが、魔導士団長就任おめでとう。」
「ありがとうございます。」
「まぁ楽にしてくれ。堅苦しいのは私も苦手なんだ。」
「失礼いたします。それで話とは?」
「きみは異世界人を見たことはあるかい?」
「いえ、、、この国にもいることは存じていますが、話したことはおろか、見たことすらありません。」
「私はねこの国にいる異世界人全員と話したことがあるんだけどね?きみも今度話してみるといいよ。みんな面白い話を聞かせてくれるからね。」
「そうなんですね。それで、、、、異世界人の話なんですか?」
「そう。知っておいてほしいことがあってね。」
「知っておいてほしいこと、、、」
「この世界では異世界人は重宝されていることは知っているかい?」
「はい、知っています。この世界にない知識を持っていてそれを提供してくれた、してくれていることでこの世界もまた発展できているから ですよね。」
「その通り。そして異世界人の多くは日本という国の人間なんだよね。日本という土地そのものに何かあるのか、日本という国の習慣が原因なのかはわかっていないけどね。もちろん、日本以外の国の人もいる。」
「その話はあまり学校とかでは教えられない内容ですよね。」
「この世界にとって、異世界人は異世界人でしかないからね。それに、異世界人が10人いれば9人は日本人だからね。あとのことはどうでもいいってことはないけれど、現状は問題ないかな。」
「そうだったんですね。」
「ここからが本題。今、異世界人たちはこの世界で好きなように過ごしているよね。」
「そうですね。」
「それはもちろん、人道的な理由もあるんだが、、、、」
「だが?」
「昔、やらかした国があったんだよね。今はもう滅んでないけれど。」
「、、、もしかして滅んだ理由って、、」
「きみが考えている通りだと思う。異世界人たちが滅ぼした。」
「、、、何があったんですか。」
「異世界人たちを奴隷として扱っていたんだよね。異世界人たちはこの世界に来ると同時に莫大な魔力を手にする。つまりこの世界に異世界の知識と莫大な魔力を持った戦力があるってことなんだよね。」
「奴隷にすることで、その力を国が保有し、兵器として利用していた、、、と?」
「そういうことだね。もともとは、その国の王と友人だった異世界人が王の子供がさらわれたことで、子どもとも仲の良かった異世界人が切れて、さらった連中を殺したんだけど、、、戦いが一方的で現場は凄惨たるものだったそうだ。子供は救出できたようなのだが、その現場を見ていた子供は異世界人を恐れるようになってしまったらしい。そして異世界人は王に奴隷にすることで暴れないよう自分を縛ってほしいと懇願した。最初は渋っていた王だったが、最終的に根負けし、奴隷とはいえ、万が一の場合のみ縛るという制限を付けてその申し出を承諾し、奴隷としたのが最初のようだ。」
「現状では滅ぼされる理由はなさそうですが、、、」
「問題はここから、その時の王とその子供が王の時代は何の問題もなかった。ただ、時代が過ぎるにつれて、異世界人を奴隷にしたという結果だけが残るようになった。もちろん、奴隷にした理由を知っているものもいたが。ある時、王族の中に一番最初に奴隷になった異世界人の強さ知り、異世界人を兵器として利用しようと考えたものがいた。その結果、その者は王になり、異世界人を王城に招待しては眠らせている間に奴隷にして、その力を兵器として利用した。実際、モンスター相手でも人間相手でも無類の強さだったそうだ。考えずともわかり切ったことだが、異世界人の意志とは無関係にその魔力を扱えるのだから強いに決まっている。だが、奴隷にした異世界人の中で奴隷として契約を無効化できるように魔眼を成長させたものが現れた。その結果、奴隷になっていた異世界人たちがそれまでにたまっていたものをぶつけるように暴れだし、国を滅ぼした。というのが滅んだ理由だ。」
「そんな歴史があったんですね。」
「この話を知っているのは、王族と一部の人間しか知らない、今の異世界人たちとの関係性にひびが入る可能性があるからな。」
「そう、、、ですね。」
「きみは異世界人とはあったことがないといったね。」
「はい。」
「私もたまたま異世界人と話しているときに、そういう話になったから聞いたんだが、、、怒らせちゃいけない人がどんな人か知っているかい?」
「見境なく暴れる強い人でしょうか。」
「そうだね。この世界ではそういう人間は起こらせるとまずいね。でもね、異世界人の答えは違うんだよ。」
「では何と答えたんでしょうか。」
「それはね、普段怒らない、ニコニコしている人だそうだ。普段怒らないから怖く見えるというのもあるんだろうが、それを差し引いても一番怒らせちゃいけないと考えているようだ。先ほどの話とともに考えると理解できる。一番最初に奴隷となった異世界人は話を聞く限り優しい人だったのだろう。友人の子供がさらわれ、それに怒り暴れ、暴れすぎたことで怖がらせてしまったことを反省し、今後そうならないようにするために王に頼み込んだ。優しい話だ。しかし、暴れたという部分だけ見れば、かなり危険だというのも理解できる。現場が凄惨なものだったということからも理解できる。基本的にやさしい人が起こると怖いというのはこの話が証明しているよね。」
「そうですね。」
「今後、きみの前にも異世界人が現れるかもしれない。その時はよろしく頼むよ。」
「承知しました。」
====
晨弥が日本人の誠也を殺した時に戻る。
「晨弥君。大丈夫かい?」
「はい。多分。」
「何かあればすぐに言ってくれ。」
「ありがとうございます。」
その時、えぐり取った魔眼もどきが崩れてチリとなった。
「!」
「マジか。」
「解析鑑定出来たかい?」
「いえ、、、ただ、なんとなくですが仮説は立てられそうです。」
「なら一旦そっちは任せるとして、、、この4人とオーダ部隊長たちだが、、、」
「俺が来るとき、他の連中にも来るように言っておいたから、こういう場合も想定して持ってくると思うから、待ちつつ、こいつらから話でも聞こうか。」
「それは任せてもいいかい?」
「あぁ。問題ない。」
ゾアはそういうと、襲撃者の生き残りのもとに向かった。
「さて、それで晨弥君。仮説を聞いてもいいかな?」
「はい。僕が解析鑑定出来た範囲内での仮設ではありますが、、、」
「構わないよ。」
「ではまず解析鑑定した結果ですが、あの魔眼もどきは人肉で構成されていました。そして人肉にかけられている魔法によって回復というか再生を行っていた。再生しているところも解析鑑定しましたが、神聖魔法による再生ではなく、失った体の部分を作っているといったほうが近い表現かもしれません。そして再生する際は魔眼もどきが光っていましたが、再生すればするほどに光が小さく、弱くなっていきました。」
「なるほど。」
「そしてここからが仮説なのですが、、、魔眼もどきが光っていたことから最初は魔眼に似た別の力があるのかとも思いましたが、あれは魔法です。魔法の内容はおそらく、負傷した部分を構築し再生する魔法。そして構築するのは人肉で、光が弱くなっていったのは負傷を治したことで人肉が減っていったから、魔法が万全に使えなくなっていったことを表している。つまり魔眼もどきは、人肉を使って所有者の負傷を治す魔法が付与された魔道具または魔道具に満たない物 かと思います。」
「その人肉はどの種族の物かわかるかい?」
「すみません。そこまでは、、、、でも確かこの世界の人間と僕ら異世界人の体のつくりは似ているんですよね?人間以外の種族は分かりませんけど。」
「あぁ~、、、あれか、似たような体構造を持つ種族の肉ってことか。」
「でも、暴走しているだけかもしれないですけど、魔眼もどきそのものも再生してましたし、体でかくなってましたし、、、あまり関係ない、、、かも?」
「そうだったな。一番最初に切ってたもんな。」
「そっちはどうだ?」
「ソアさん。そっちはもういいんですか?」
「良くはないが、、、これ以上はどうしようもないな。何を聞いても知らぬ存ぜぬで交わされる。」
「王城に戻ってからだな、あとは。」
「天秤持ってきた方がよかったですね。」
アーティファクトである真実の天秤
これの使い勝手を良くするために
魔道具によって天秤から遠く離れた場所でも
天秤にアクセスすることにより、
真実の天秤を使えるようにしたものを
天秤と呼んでいる。
「こっち来る人たちが持ってきてくれてるといいんですがね。」
、、、、
結局、天秤は持ってきておらず、襲撃者はそのまま王城へ
そして、遺体を回収し、晨弥達も帰還することとなった。
、、、、
「以上が今回の襲撃の報告になります。」
「そうか、、、、」
国王はアンスの報告に頭を抱えていた。
「襲撃者の中に異世界人がいたことは、、、伏せておくべきだと思うか?」
「念のため、知っている人間には言わないように通達しています。」
「助かるが、、、どうしたものか、、、各国にも情報提供するために聖都に連絡するが、、、」
「何て言えばいいんでしょうね。」
「まったくだ。晨弥君は何か言っていたかい?」
「いえ、特には。言う言わないは任せるとのことでしたが」
「晨弥君目線、言うなとは言えないからなぁ。」
「そうですね。ここで晨弥君が話すのを拒否すると聖都側からの助けを得にくくなりますからね。」
「にしても、、、、人肉、、、か。」
「晨弥君もどうやって作っているのかはわからないようです。アーティファクトなのか魔道具なのか魔眼なのか、ただの魔法なのか、、、作るにしても工程があるので、各工程ごとに使っているものも違う可能性もありますし、、、」
「晨弥君自身はどうだ?」
「今は問題ないかと思う、、というか思いたいのですが、、、、オーダ部隊長が命を落とすところを見た時、だいぶ荒れていましたし、他の人の遺体にも苦い顔を向けていましたから、、、未来視を使うのがもう少し早ければと言っていたので、精神的にもだいぶきついでしょうね。」
「しかも、この世界にきて初めて殺した人間が同じ日本人ときた。晨弥君にはつらい思いをさせてしまったね。」
「王女様の方は大丈夫なんですか?」
「どうにか、、、、といったところだな。ことが起こる前に晨弥君が連れ出してくれたからね。」
「そうですか、、、、あとは捕まえた襲撃者から何か情報を得られればいいのですが、、、」
「そうだな。」
====
王女襲撃から数日後
「♪~♪~♪~」
「晨弥兄!」
「ん?」
「何を歌っていたんですか?」
「?なんか歌ってた?」
「え?」
「へ?」
「まぁいいや。晨弥兄。妹を助けてくれてありがとうございました。」
「気にしないでくれ。そういう依頼内容だったんだから、、、」
「でも、、、、」
「いいんだ。気にされる方が逆につらい。」
「わかりました。」
「ありがとう。」
「じゃぁ、、、、」
「?」
「一つ気になっていたんですけど、聞ける状況じゃなかったので遠慮していたんですが、、、」
「?」
「晨弥兄、、、髪の毛の色、少し薄くなってません?」
「へ?、、、そうなの?」
「なんとなくなんですけれど、、、、」
「気にしたことなかった、、、、ありがとね?」
「はい!じゃ!」
「元気だなぁ、、、、」
、、、、
「晨弥」
「バリアス団長。どうしました?」
「体調は大丈夫か?」
「えぇ。大丈夫ですよ。」
「そうか。」
「では」
「晨弥」
「まだ何か?」
「、、、未来視の魔眼だが、、、」
「わかっています。これまで通り最終手段としてってことですよね。」
「あぁ。もう少し早ければ、、、っていう話は聞いた。だが、それで常に魔眼を使ってしまっては最終的に生きていながら未来を見るだけの人形になってしまう。それじゃ生きているとは言わない。分かっているようだな。」
「はい。もっと早く気が付けなかったのは僕が弱いから。そして戦って負ける未来しかなかったのは僕とあの場にいた全員が弱かったから。オーダ部隊長はそう言うんでしょうね。」
「そうだな。あいつならそう言うんだろうな。」
「、、、、」
「、、、、」
「強くなるぞ。俺もお前も」
「はい。」
====
時を同じくして
アッシュウルフの生息地の峡谷を超えた先で
「全員撤退!」
エレスタシアに所属する氷の精霊以外のメンバーは窮地に陥っていた。
「ギルドに報告を、、、!」




