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第9話 もうロマンしかないだろ。

その後、蟻の大軍ともあったが、花音が「まかせろー」とか言いながら、一撃で全員仕留めてしまったので、俺とブランカは後ろに着いていただけだった。


 そして現在。重大なことに俺が気づいた。


「この大量のドロップアイテムどうするの?」


「…………」

「あ……」

 俺たちの後ろには、虫を倒した時に出て来るそいつの皮やら、足やら、頭やらが、転がっていた。

「どうしよう……//」

 花音は「ちょっと調子に乗っちゃった」と呟いて照れていた。

「…………」

 ブランカは相変わらず無言無表情を貫いていた。

 何考えてるんだろう。

 ぼーっと眺めていると、目が合った。

「瑛太のルフナでなんとかなる……?」

「は!」

 なるほど、その考えは無かった。

 沢山のものを一度に収納する、そんなものこれしか無いだろ。


「四次元ポケットー」


 花音に向かって言ってみると、俺の掲げた右手に白い、半円のポケットが現れた。

「…………それっていろんな意味で大丈夫なの?」

「これを想像したのは花音だろう、俺は関係ない」

「んなっ」

 試しに近くのドロップアイテム『蟻の頭』を持ち上げる。


「…………」


「うわ、よく持てるね、どう?」

「見た目も、重さも、触った感じも、ちゃんとリアルでキモい」

 持った瞬間全身に鳥肌が立つほどに。

 頭の先をポケットの口に少し入れると吸い込まれたので、残ったアイテムは持ち上げないで、ポケットを被せて吸わせていった。

 もちろんポケットが膨らんだり、重くなったりはしない。

 途中からブランカがやりたそうにこちらを見ていたので、やらせてあげた。

 ブランカは、その無表情を初めて崩した。


「よし、全部拾えたかな?」

 伸びをすると、真っ赤に染まった空が見えた。

「戻るか」

「門まで歩くのー」

 いつの間にか門から結構離れていたようだ。

 花音が分かりやすく顔を歪ませた。


「んー、おんぶ!」


「え?」

「…………」

 想定外の発言すぎてブランカと共に固まってしまった。

「……前にも聞いたけど、俺のこと何歳に見える?」

「7……8歳?」

「前と全く同じ回答をありがとう、ところで、小1の体ににおんぶをねだるのについてどうお思いですか?」

「ルフナ使えばヨユーだよ」


 それもそうだけど、

 そうじゃなくて、


「子供におぶらせてる鬼畜の肩書きでも欲しいのか?」

「周りの目は別にどうでも」

「そ」

 ま、別に良いけど、本人が気にしないなら。


 そんなことよりも。


「技名をどうしようか」

「なんでも良いじゃん、パワーアップとかで……」

「よかない、なんだかんだで初めて考える能力なんだぞ、一見聞くとカッコいいけどよくよく考えるとよく分からないくらいが丁度いいんだ」

「なにそれ……理解しかねるわ」

 うん、どうしよう。

 身体強化……身体……ボディ……強化……上げる……レイズ、


「ボディレイズ……」


 お、体が軽くなった。


 そういえば……、

 よくよく考えてみれば相手が理解できなきゃダメじゃないか。

 花音に伝わってよかった。

「さあ来い、門どころか宿まででも送ってやる」

「お願いしまーす」

 やっぱりルフナを使うと快楽が得られるのだろうか、今はすごく気分がいい。

「よっ」

 抵抗なく立ち上がれた。

「おー、かるいかるい」

 きっとジャンプも、ダッシュも余裕だろう。

「さー帰るぞー」

「……」

「おー」

「…………」


 もう一度言うがルフナでテンションが上がっているのだ。

 だからブランカの目がいつも以上に冷めている気がするのは気のせいだろう。




「やっぱり降ろして……」

「どうした?周りの目は別にどうでもいいんじゃなかったのか?」

「いや、その、それは……」


「あらやだ、子供におんぶさせてるわよ」

「まぁ、あんなに小さい子に」


 ビクッと花音が震えた。


「ねぇねぇママー」

「こら、指差さないの」

「でも変だよー、大っきいのにおんぶして貰ってる」

「しー、早く行くよ」


「う……」


 花音の、俺の首に回す腕が強くなった。


「降ろしてぇ……」

「えー?頼んで来たのは花音でしょー?大丈夫、ちゃんと管理所に寄ってから宿まで背負って行くから」

「!?降ろせ降ろせー!」

「暴れるなよ落ちるだろー」

「もう、落としてー!」


 何度でも言うが今はまだ、ルフナの影響でテンションがおかしいのだ。


「いやぁ〜!」


「……鬼畜」

「…………」


 ブランのぼそっと言った一言が、後の俺に大ダメージを与えた。




「素材の買取をお願いします」

「了解しました初めてですね、こちらにお願いします」

 カウンターから出てきた職員に連れられて、登録の時にも通った扉に入った。

 ちなみに職員は知らない人だ。

 またアーナスと会えるかもと思っていたが、残念。

 まあ、アーナスは位の高い職員らしいから忙しいんだろう。

 沢山ある扉の内、向かって左側の5番目の扉に通された。

 そこには高さ1mくらいの、大きい机と言うかもはや広い木の台があり、部屋のほぼ全てを占めていた。

「この台の上に持ってきた素材を載せてください」

 俺は試しに、ブランカに向かって四次元ポケットと呟いた。

 ブランカはこの世界の人間で四次元ポケットが分からないかもと思ったけど、さっき見たからか問題なく俺の手にポケットが現れた。

 使う時に花音が居なきゃいけないんじゃ大変だからな。

 台の上にひっくり返したポケットを2回振るとさっき入れた蟻の素材が出てきた。

「わあ、お2人でこんなに倒したんですか?」

「いやあいつが1人で全部倒しました」

 部屋の隅に体育座りをしている花音を指して言った。

「あ、そうなんですね」

 おっと、色々ツッコミどころはあったと思うけど全スルーか、なかなかやるな。眉一つ動いていない。

 彼女の名札を見ると、リージアと書いてあり青色、つまりランキング1位を1回取った証拠だ。

 アーナスを抑えて取ったのか、アーナスが来る前に取ったのか、まあ、リージアの見た目若そうだから、後者ではないのかな?

 とか考えながらリージアの胸の名札を見ていたら後ろから頭を小突かれた。

 なんですかブランさん、別に私は名札を見ていただけで、

「アタッ」

 振り返ったらデコピンを貰った。

 そんな生意気な顔をしていたのだろうか。


 ヒュン


 そんなことをしていると、俺たちが持ってきた素材が台から消えた。

「消えちゃった」

「素材の確認が終わったので、種類ごとに分別された倉庫に送られたのです」

「ほへー」

 便利だなぁー。

 リージアは、台の横に掛かっていた小さい麻袋を壁に並んでいる金色の蛇口の下に持っていった。

 なんだ?洗うのか?

 その蛇口を捻ると、

「金!?」

「!?」

 マジか、蛇口から金が、硬貨が出てきてる。

 ブランも俺の服の袖を掴んでバタバタと振っている。

「こちら報酬の3万6千ルーフです、ご確認ください」


「ほしい……」


「はい?」


「その蛇口は何ルーフで買えますか」


「非売品です」

 そりゃ、そうだ。

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