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第2話 マジすか。

「腹、減ったな」


 ゴォォォーっと僕のお腹が唸る。

 大変なことが起こっているというのに、体は平常運転で少し安堵する。

 起き上がり辺りを見回すと、木の壁や床に、ベット、窓が一つづつの全体的に少し大きめのシンプルな部屋に寝かされていたらしい。

 特におかしなところは無い、ただ一つを除いては……。


「んぅ……」


 右下から寝音が聞こえた。

 きっと原因は、さっきから視界の隅に見える彼女だろう。

 隣からの熱で最初から気がついていたものの、敢えて触れなかったが、限界が来たようだ。

 前髪を手ぐしでしっかりと引っ張った僕は、目だけを右下に動かす。

 朝日で輝く、胡桃色のふわふわと流れる短めな髪の毛が印象的な少女が、こちら側に膝を抱えるように眠っている。


 眩しいな。


 まず、そう感じた。

 かわいいでも、

 きれいでもなく、

 前髪越しでもこの少女は眩しかった。

 んー、

 起こすのは気が引けるし、

 待つか。




「ぅ……」


 窓から入る風を感じていた俺は、聞こえた声の方を見る。

 目が合った。


「おはようございます」

「おはようございます」


 取り敢えず挨拶を交わしてみる。

 幸いにも言語は通じるようだ。


 まぁ、


 こういう時は大体、言語理解がデフォルトでついているものだろうから心配はしていなかったが……。

 彼女は起き上がって伸びをした。

 美人は隣に居るだけで鼓動が高鳴る。

「んん……、ふぅ」

 目が合った。


 …………。


 …………。


 うう、

 これだから人と話すのは嫌いなんだ。

 話が続かない。

 色々考えてしまって話出せない。

 相手が異性であれば尚更だ。

 そんな自分がつくづく嫌になる。

「ねぇ君、名前は?」

「瑛太です!蛍原瑛太……」

 恥ずかしい。

 話しかけられたのが嬉しくてつい食い気味に返してしまった。

「あ、あなたは?」

美甘花音みかもかのん

 それから花音は「美しく甘い花の音」と続けた。

 いいなその紹介、僕も今度使お。


 …………。


 また空白が生まれてしまった。

「えーっと、一旦外に出てみますか?」

「んっ」

 そして僕は脚をベッドから下ろして……。


 …………。


 気づいてしまった。

 この違和感に、

 それに気付いていながら疑いもしなかった事実に。

 懐かしい感覚、

 けれどもう二度と合わないはずだった感覚、

 あっていいはずがない感覚。

 僕のベッドから下ろした足が床につかずに、空中でふらふらしていた。

 「何だそんな事か」と言う人もいるかもしれない。

 でも違う、

 そんな単純な話じゃない。

 僕、蛍原瑛太は17歳で、182cmだったはずだ。

 少し大きめの部屋?


 そんなはずはない、


 隣から除いてくる花音は足がついているし、明らかに2mはゆうに超えている。


 そんなはずは無いんだ、


 ならば考えられる事はただ一つ。


 僕が縮んだ、または若返ってしまったようだ。


 ならば確認しなければならない事がある。

「花音!」

「は、はい!」

 花音は突然呼ばれた事に驚いてビクッと返事をする。

 あ、呼び捨ててしまった。

 まぁそんな事はどうでもいいんだ。

「身長何cm?」

「え、えーと154cm」

「僕は何歳に見える?」

「7……8歳?」


 うん、


 僕は若返ったみたいだ。

 それも小学校低学年くらいに。


 …………。


 いやなんで!?

 こんな異世界転生なんてしてる時点で普通じゃないけれど、だからって、

「だからって!」

「ど、どうしたの!?」

 花音が叫んだり悩んだりする僕を見て疑惑の目を向けてくる。

 どんどん細まってく。

 ちょっと距離取らないでよ〜、挙動不審ですみません。

「風音ってちなみに何歳?」

「16歳だけど、ねぇさっきからいきなり呼び捨てっt……」

「僕は17歳だ」

「?……え?」

「今日で17歳だ」

 ここと元の世界の日付が同じなら。

「えー、お誕生日おめでとう?」

 まだ頭の整理がついてないようだ。

 無理はないよな、俺が逆の立場でもそうなるだろう。

「ちょっと待って、こっちに来る前は17歳でここで目が覚めたら10歳近く若返ってたってこと?」

「そうなるな」

 改めてまとめられると本当におかしな話だな。

 多分、

 最近のラノベでもここまで詰め込まないだろう。

 ここ(異世界)をこっちと呼ぶのなら花音も転生者ということだろうか?

 転生前が同じところとは限らないけど……。

 起きた事はしょうがない、気持ちを切り替えてベットを飛び降りる。


「これからどうする?」

「とりあえず外でようよ、映画の世界みたいだよ!」

 窓の外を見ながら言った花音は、跳ねる様に部屋から出て行った。

 俺が若返った話に思ったより食い付かなかったな、それよりもこの世界の方が気になるみたいだ。

 他人の若返り事情なんてそんなもんか。立場が逆だったら頭のおかしな奴としか思わないし。

 少し花音の反応にがっかりしながら後を追った。

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