第13話 やっぱり大した危機でもないのか。
一週間が過ぎた。
毎日その日の食費のために虫を狩って換金する、そんな生活にも慣れてきた頃。
街の至る所で同じような張り紙を見かけるようになった。
「てんとう虫の大量発生に注意?」
「でっかいてんとう虫でも迫ってくるのか?」
「うん……、この季節になるとほぼ必ず何らかの虫が大量発生する」
それが今年はてんとう虫っていう話か。だとしても貼りすぎな気もするが……。
ほぼ全ての建物に一枚は貼ってあると言っても過言じゃない。
あれ?
「4月25日って日付までかいてあるじゃん、何でそんなピンポイントで分かるんだ?」
「この街には占いのルフナを持ってる人がいるって聞いたことがある」
へー、あれもこれもルフナだな。
この一週間過ごしてわかったことがある。それは、この街がルフナに依存しきっている事だ。
例えば、明かりがない。電気は無いし、ガスも無ければ、燭台さえない。
じゃあなぜ夜が明るいかと言うと、ブランが言うには、
「この街の前王妃に当たる34代王妃がルフナで明るくしてくれてる、詳しくは誰も知らない」
だそうだ。
そう言われてから改めて街を見ると、光源が無いのに暗く無いから不思議な感じがした。
今はもう光源がないのにも慣れて来た。
他にも、この世界は医療がほぼ発達していない。あるとしても、古い言い伝えや、根拠のない民間療法みたいな物ばかりだ。ブランが言うには、
「回復系のルフナを持っていたら強制的に診療所で働かされる、その代わり給料がいい」
だそうだ。
お金に余裕のある人は狩りに行く時に、診療所から回復役に数人借りるらしい。
さらに上級者は、気に入った回復役買っているとか。
それだけ聞くと奴隷みたいだが、実際のところはわからない……。
「そういえば今日何日だっけ?」
「……4月25日」
『てんとう虫の大群が東から接近中!戦える者は武器を持って直ちに東門付近に集合して下さい!戦えない者は……』
ブランが日付を言い終わるや否や、何もない空からアナウンスが聞こえた。
「俺たちも行くぞ」
「うん!」
「ん」
閉じられた東門にはすでにたくさんの人が集まっていた。
が、空気が思っていたものと違った。何と言うか、
「なんか軽いね、もっと緊張感があると思っていたのに」
「……確かに」
周りを見ると、楽しそうに談笑していたり、だらだらと歩いて来たり、およそ危機が迫ってる街には見えない。
虫の大群が来るのはこの街じゃよくある事なのか、大した危機でもないのか。
周りを見ていると大柄な男と目が合ってしまい、にかにかしながら近づいて来た。
「ちっちゃい体なんて珍しいな、なんでそれにしたんだ」
「いや、ここに来てからこうですけど……」
「そうかそうかそのタイプか、いいと思うよそういうの」
「はあ……ありがとうございます?」
変なやつに話しかけられたー。
「能力のタイプって知ってるか?見たところ武器を持ってないから支援タイプか?」
「タイプ?」
花音とブランを見ても二人して首を傾げる。
「知らないか、まだ決まったばっかだもんな、能力をタイプで分けた方が何かと便利だからって理由で3日前くらいに考えたんだ」
こいつが言い始めたのか?それならブランが知らないのも無理ないな。
ブランを見ると何故か悔しそうにしていた。
「タイプは大きく分けて3つある、
1つ目は攻撃タイプ、敵に作用する能力
2つ目は支援タイプ、自分か味方に作用する能力
3つ目は自由タイプ、攻撃、支援のどちらにも当てはまらない、もしくはどちらにも当てはまる能力」
なら俺ら3人とも自由タイプか。
「俺達はこのタイプ分けを広めてるから、君達も知らなそうな子が居たら教えてやってくれ」
俺達?
「瑛太見て、いっぱい同じような人達がいるよ」
花音が指した方を見ると、色は違うけれど同じマークの付いたマントを着た人が、グループに話しかけていた。他にも何人か居るようだ。
あんなに居るなら俺らが広める必要ないんじゃないか?
「何か困った事があったら、このマークのマントを羽織ってる俺らに声をかけてくれ」
そう言って後ろを向いた男は、濃紫のマントの中央にあるマークを親指で指しながら去って行った。
今後も関わる気がするから覚えておこう。
「女性の顔の上に、杖と剣のクロス……」
「絶対3つのタイプのイメージを組み合わせてるよね」
「いいじゃん分かりやすくて」
カンカンカンカン……。
「てんとう虫が来たぞー!」
「門が開いたぞ!」
「よっしゃー!行くぞー!」
「きたきたー!」
「待ってました!」
「俺が1番乗りだー!」
「何だ何だ!?」
「福男選びが始まった時みたい」
花音が言うように門が開いた瞬間、そこに居た人達が一斉に外へ駆け出した。元気よく、実に楽しそうに、わくわくと……。
おかしな話だ。
自分たちの街に大量の虫が攻めてきているというのに……。
……まぁいいや。
「よし、俺らも続くぞ」
「もちろん!」
「んっ」
俺たちも門の外へ駆け出した。




