「煉獄の世界」も転生?!「悪魔」のトラバーユ
かつて、偏狭な神を奉じる利権集団『教会』に牛耳られていた時代に、真摯な探求心を踏みにじられ、弾圧された魂たち。
あるいは 「合格すること」のみを目的として
「学ぶ楽しさ」を知ることなく、ただ暗記したり要領よく得点することのみに憂き身を費やし、心をすり減らしてしまった魂達。
この者達の中には、「太陽が大地の周りをまわる世界なぞ 断じて認められない!」という思いが強すぎて、凛の新世界創造とそこに熱狂する周囲の様子になじめずいらだちを募らせるもの達がいた。
そういう魂達のために、自分の世界を提供したいと言ってきた神がいた。
その名もデビル君。
かつて煉獄をつくりだしたものの、そのあまりの過酷さに「地獄の獄卒」すら逃げ出し 世界経営に失敗した神だ。
凛は言った。
「前世において 苦しみ抜いた魂達を、転生先でもいじめるなんて、そんな非道なことはできません!」
「しかし 理由はなんであれ、今 あの魂たちは 憎しみ・苦しみに燃え盛っているではないか」デビル
「それらを完全燃焼させるかまどを作りましょう。
そこで 負の感情を燃やし尽くし
そこから出てくる熱を使っておいしいパンを焼きましょう。
ご飯を炊きましょう。
その香ばしい匂いに気が付いたとき
焼きあがったパンや 炊き立てご飯を「おいしい!」と味わうことができたなら
今度は あの魂たちも、新たな幸せを求めて 新天地に向かう気持ちが生まれるかもしれませんから」凛
というわけで、「悪魔の煉獄」世界が、「おいしい香りが漂い、おいしいごはんとパンが食べ放題」の「かまどの世界」に作り替えられた。
そこでは、「地獄の番人として死者を苦しめる仕事にへきえきとしていた元悪魔」の魂たちが、窯たき・飯炊き・パン焼き名人として働くことになった。
◇
元悪魔が転生して「薪係」として働く世界。
そこでは、いろいろと鬱屈した思いを抱えた魂達が、ぶすぶすと煙を出したり メラメラと炎を上げている。
最初は 行き場のない思い、もう自分でも収集が付かなくなった自分自身のあれやこれやをくすぶらせていた魂たちも、
自分を担当してくれる「薪係」たちから優しく声をかけられ、
薪だの風だのを木っ端だのを差し入れしてもらい
うまく炎が上がれば「美しい」とほめられ
火の粉を飛ばせば「きれいだ」とたたえらえ
そんな声がうっとうしいとばかりに炎や火の粉を巻き散らかすと
「いいねぇ」「元気だねぇ」と笑顔を向けられ・・
ふっと気が抜けた瞬間、鼻腔をくすぐるいい匂い
思わず食欲をそそられ、パンやごはんを口にすると、
つい「もっと食べたい」「ほかにもうまいものがあったはず」と生きる欲のようなものがわいてきて、
「せっかくだから 風呂に入らない?」と誘われ
ついつい自分の炎で湯を沸かして風呂に入ると
なんだか不満や恨みをこじらせてくすぶっているのが馬鹿らしくなり・・
ふと目を外に向ければ、転生待ち広場でワイワイ騒いでいるほかの魂や、新世界でハッチャケている魂達の姿が目に入り
気が付いたときには、わちゃわちゃと転生の列に入ることになっていたのでありました。
そして「元悪魔」たちも、今は 楽しく働くようになったのでありました。
そして 仕事に飽きたら楽しく転生
もしくは、充実した仕事人生に満足して 昇華したのでありました。
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デビル君
「せっかくだから スパでも経営して儲けようかな」
凛
「人の不幸を商売のタネにするんじゃありません!
人間の心を感情を利用するなんて許しません!」
凛にぶっ飛ばされたれデビル君は、こっそり隠し持っていた煉獄の炎の入った壺の中に、ボチャンと墜落し、
すかさず蓋をするアモン。
「デビル君入りの煉獄の炎の壺」を、アマテラスのところに持っていったアモン。
「君のエネルギーも新世界に提供してもらおっか」
アマテラスは嬉々としてその壺を受け取った。
「あなたの口癖、因果応報とやらを実践してくださいね。
あなたの作り出した煉獄世界のせいで、
多くの魂が疲弊し、この世がさらにどんよりとしてしまいました。
あなたが人々を苦しませて 搾り取ってため込んだエネルギーを、返してもらいましょう」
壺の中のデビル君にやさしくささやくアマテラスでありました。
壺の中のデビル君は?・・
さんざん怒り散らして 最後は灰となり、心安らかに旅立ちましたとさ。
「これまでさんざん鬱屈した思いを 他人にぶつけてきたが ちっとも晴れなかった。
壺の中では、己が発した思いがすべて己に帰ってくる
そうやって 否応なしに自分自身と向き合わされ
己の不満を燃やし尽くしたら 灰になっちまったぜ。
あーこれで 身も心も軽くなった。」
というのが デビル君の辞世の句であったとか。




