ヤンデレすずかと肉まん1
4月3日。深夜2時。暗い部屋の中、スマホの明かりだけが幽霊のようにぼんやりと光っていた。その青い光が照らすのは青白い顔、すっぴん、メガネをかけた貧乏くさい女。
名前をすずかという。
すずかのささくれた唇はブツブツ何かを呟いていた。
「いない、ここにもいない、いない」
彼女の親指は千切れんばかりの速さで左右にスライドしdiscord、Twitter、spoon。SNSアプリを開いては閉じ、開いては閉じを繰り返している。
眼球は開きっぱなしなのか充血している。口はいつから半開きなのだろうか乾燥し、口臭も酷い。まるでドブだ。
かれこれ彼女は5時間もこうしている。
なにを彼女はしているのか。
彼女は一人のユーザーを追っている。
”肉まん”
食べ物ではない。そういうユーザー名の人物だ。
熱心に、粘着性に彼女は肉まんを探し続ける。彼女は待っているのだ。各種SNSで肉まんが呟くその瞬間を。
それから何時間たっただろうか、締め切ったカーテンの隙間から光が漏れるようになった頃。彼女はささくれた唇をニヤリと釣り上げこう呟いた。
「見つけた」
その時ピョコンとdiscordの通知が表示された。
『肉まんちゃんと仲良くなれるといいね』