8話―「不器用過ぎんだろォォぉォォォォおおおおおッッッ!」
こんにちは、腎臓くんです(*'ω'*)
いつも書き終わったのをコピペしているので、投稿が楽です( *´艸`)てへぺろ。
本日も残り1分で遅刻です。
よろしくお願いしますの腎臓くんでした( ..)φ
――あれから1週間が経った。
防衛省で仲間達に別れを告げてから冒険省に電車で向かっていた――。
この世界は海を対面に180度が岩壁で囲まれている。
空には動かぬ太陽、夜になるとまるで照明が切り替わるように太陽を脱ぎ捨てて月光に変わる。
まだ灯を着る太陽は25個の地区を照らす。
その内の第3地区に今回の会場がある。
別名「京」と呼ばれる第3地区には冒険省が建っているだけあって冒険者があちらこちら歩いている。
既に冒険省の入り口近くには冒険者資格の合格者たちが個性的な恰好をして、門が開くのをまだかまだかと待っていた。
そこに――ビシッとリクルートスーツを着た少年のような顔立ちの青年。
おかっぱ頭に陰キャラしか付けそうにない黒縁の眼鏡、さらに首までぴっちりとボタンを閉めた正装。
個性的な恰好やチームのロゴが入った中二病満載の服装をした人たちの中で浮いているその恰好に、周りは「え、こいつ場所間違えてない?」と言わんばかりの視線が集まっていた。
「ここか。 冒険省――」
夢にまで見た冒険省をその目で見つめる僕は興奮の熱で心臓が高鳴った。
ゴゴゴゴといかつい音を立てて門が開く。
中に入り開会式の会場まで案内される。
会場に一歩足を踏み入れると、数百人はいる冒険省の関係者が椅子から立ち上がりスタンディングオベーションで迎い入れてくれる。
雪がなだれこむように合格者が入っていく。
僕は辺りを見回し、主催者の声が届くであろう中央部まで移動する。
人ごみをかき分けて進んで行くと――。
「あ」
「え」
二人の間に静かな沈黙が流れる。
ん?
……。
なぜ。
なぜこの人がいる?
目の前には見覚えのあるダル着。
染みついたたばこの香りがトゲトゲしく臭う。
お互い顔を見合わせたまま動かない。
「お、おう。 お疲れ」
「あ、お疲れ様です……」
また沈黙が流れる。
「きょ、教官。 な、なにされているんですか。 あ、防衛省の関係ですか」
「あ、いや。 あぁ……言ってなかったっけ? 俺も冒険者に転職した」
「……はは、ご冗談を」
「……」
「……」
「……まぁ、とりあえず外に行くか」
「……はい」
なんと鉢合わせしたのは僕の元教官である「六教官」。
初戦の件で隊長を任された僕は無理難題を押し付ける六教官と対立する部隊をまとめるために胃に穴が空くほど苦労した。
そのため、あまり会いたくはない人物でもあった。
とはいえ、その実力は教官の中でも屈指で高い。
また、一見なにも考えていなさそうでかなりの戦略家だ。
意外に情に厚いところはあるが、僕の所属していた15部隊前線歩兵隊の半分は辞めていった。
そして、驚きすぎて、ようわからんすぎて冷静な僕だった――。
2人は外に出ると、六教官だけいつも通りたばこを吸い始めた。
「まぁ、とりあえず冒険者資格合格おめでとう」
「はい、ありがとうございます」
「試験はどうだ? 難しかったか?」
「あーあ、そうですね、薄い封筒が届いたときは落ちたと思いました」
「あははは、俺もパッと見たとき落ちたと思ったよ」
「はは、そうなんですね」
あれ?
いつもと違う。
もっと、こう、なんていうんだろうか。 パリっとしていてサバサバしていて冷たい人のはずなのに。
「あ、あの。 え、ど、どうして教官が冒険者に」
「あぁ。 まぁ、あれだよ。 興味本位?」
「あ、あーあ、そう、ですか」
「……。 ごめん、嘘。 まぁ、おっさんが夢を追っかけてみたくなったんだ」
どういうことだろうか。
なんで今更この人が夢追いなんてするのだろうか。
既に防衛省の中にかなり高いポジションを見つけているのに。
「それ、深く聞いても大丈夫ですか」
「あぁ、大丈夫、だけど。 まぁ、元々俺は冒険者になりたかったんだよ」
「えっ! そうなんですか」
「ああ。 ただ、防衛省でやらないといけないこと見つけて、それに時間割いていたらこんな歳食っちまったんだ」
「やらないといけないこと?」
「……。 あぁ、まあいいかぁ。 俺にはさ、防衛省に勤めていた5つ上の兄貴がいたんだよ。 いつも優しくて頼りになる兄貴だった。 もちろん、子供の頃は喧嘩だのなんだのしていたけどお互い大人になったら意外と相談し合う仲になっていったんだ。 でも、良くないことが起きた」
「良くないこと」
「あぁ。 まぁよくある話だ」
「はい」
「自殺したんだよ。 部隊内部のいじめで」
「えっ……」
今までそんな話は聞いた事が無かった。
というより、「とっつきにくい人だなぁ」とずっと思っていたから聞く気もなかった。
でも、まさかそんなことがあったとは。
「そのとき俺は20歳で働きもせずフラフラ過ごしていたんだ。 毎日のように朝から酒を飲んでテレビ見て一日が終わる。 そんな毎日を送っていたんだ。 そんなクズ野郎だった。 ほんとうは人に厳しく言えるような人間じゃないんだ」
たばこをふかしながら遠くの空を見つめる。
「まぁ、でもよ、そんなクズでも心はあるんだよな。 あまりに衝撃的で心の中の何かが動いたんだよな。 それがなんなのかは分からない。 でも、それを知ったときに間違いなく心の奥が刺されたように感じたんだ」
僕はこの1年間で見てきた六教官とは別人を見ているようで不思議な気持ちになった。
たぶん防衛省という責任の枷が外れて口をすべらせまくっているだけだと思うが。
そんな不謹慎ことを思ってしまった。
「それからだな。 なにがしたいかわからなかったけど兄貴の跡を追うように防衛省に入隊した。 その日から海の珍獣どもを狩りまくった。 毎日狩りまくった。 1年、5年、10年って狩り続けた。 そしたらいつの間にか部下ができて隊を抱えていて、気づいたら俺は防衛省にいる隊員を守らなくてはいけないって――強く思っていた。 それがいつの間にか俺のやらなくてはいけないことに変わっていった。 自殺なんかさせるくらいだったら先に現実を見せないと。 って」
――え、もしかして、この人。
「だから、俺の下で辞める隊員は多かった。 でも、防衛省に入ってから17年。 誰一人として命を落とさせた奴はいない。 もちろん、珍獣どもの戦闘でもな」
えええええッェェェェェエエエエエ!
不器用過ぎるだろォォォォオオオオオオ!
えっ、いやっ、えッッ?
そんなことある?
確かに死人を出させていないのはすごいけどッ!
すごいけどもッ、さすがに不器用過ぎるだろッ!
「あ。 え、あ。 そうだったんですね」
「まぁ。 今思えばやり過ぎた気もする。 もっと心を通わせるべきだったかもしれない。 黒糸、お前には悪い事したな。 お前を隊長に任命したのもお前には強い責任感があると感じたからだ。 悪い事をした、すまん」
僕に向かって背筋を正し、深く頭を下げた。
「い、いえ、むしろ僕の方が謝らなくてはいけないです。 僕は六教官を分かろうとしていなかった。 たしかに不器用過ぎるというか、なんというか、というところはありますが、それでも僕が近づこうとしなかったことは僕がどこか無意識に避けていたからです。 ほんとうにすみません」
「そんなこと言ってくれるのか。 ありがとう」
「いえ、こちらこそです」
僕は1年間経って初めて六教官と腹を割って心を通わせた気がする。
個人的な感情が入ろうが相手を理解する大切さを身に染みて学んだ――。
ご愛読ありがとうございます(*'ω'*)