4話―「弱肉強食の世界は動物だけの世界だけじゃないんです。 人間の世界でもよく起きます」
こんにちは、腎臓くんです(*'ω'*)
まとめて5話投稿しているので、書くことがなくなってきました。なんて思わないです。
そんな腎臓くんの話。
2週間前、のんきに煙草吸ってたら会社に10分遅刻しました。
諸先輩方、ここで言い訳させてください。
朝一の煙草はマジうまいんです。
陽帝は僕の肩を優しく? つかみ大きな声で心配した。
「大丈夫か?――クズ」
あれ? 僕には「大丈夫か?」 じゃなくて「さっさと消えろよ? クズ」って聞こえたんですけど。
もしかして口2つ付いていらっしゃる?
「ああ……。 大丈夫だよ。 ありがとう」
僕は無関心な表情で冷たくあしらった。
その場を少し離れてから気づいた。
僕をクズと見て楽しんでいた大衆の目は紅一点の登場で黄色い目に一瞬で変わっていった。
既にここにいる人の視界の中に僕は映っていないようだった――。
放課後、進路相談の最終日。
僕は順番待ちをしている間、廊下に置かれている椅子にもたれていた。
先ほどの光景がみょうに頭をよぎる。
強者が弱者をくらうあのときの光景に似ているからなのだろうか――。
☩
「なぁ、あんたら本当に冒険者?」
「えぇ……一応……」
「どこのギルドに入ってんのよ? まさか冒険省のわけないよね?」
「はぃ…」
「そらそうだわなー。 見たことねぇもん。 おたくら」
「…」
ショッピングモールのど真ん中で同業者にからまれたのか。
まだ低学年の僕には明確にわからなかったが正座をさせられる両親を、僕と椿は離れたところから見ていた。
「あのさぁ、俺思うんだよねぇ。 生活費すら稼げてないのってぇほんとうに冒険者っていえんのかなぁって」
「うっ、そう……ですね……」
「なぁ。 俺さぁ、おもしれぇことが好きなんだよ。 だからさぁ」
そいつは片足を両親の顔の前に出す。
「靴。 犬みたいにぺろぺろしたらこれやるよ」
男は手を振り上げる。
同時に両親の頭の上を諭吉の札束がふりそそぐ。
その男の取り巻きの連中らが必死に笑いをこらえて見ている。
その男自身も何かのゲームを楽しんでいるかのようににやけた笑みを見せている。
父親は拳を握りながらもそっと、そのきらびやかに輝く宝石まみれの靴を――。
とたんに今まで抑えていた俺の感情が激情する。 と共に連中のこらえていた笑いも爆発する。
「まじでやったよ! こいつッ!」
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! 子供の目の前で! あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」
「信じらんねぇ! クズ親ッ! クズ親だなッ!」
「そんなにこの紙切れがほしいんだなっ! 俺のもくれてやるよ! あっははははははははッッ!」
「ほらっ! くれてやるよッ! もっとっ! もっと! 犬みたいにっ! ほらっ! あはははははははははははははは」
☩
くッ!
僕は無意識に進路書類をにぎりしめた。
この頃の僕は両親が大好きで誇らしくて仕方なかった。
稼ぎが少ないくせにいつもワクワクして冒険の話をする両親が――大好きだった。
他の冒険者から見たら圧倒的弱者だったと思う。
それでも僕と椿にはいつも笑ってくれる、あの温かい手で抱き締めてくれる。
それだけですべてどうでもよかった。
あれだけがあれば他に何もいらなかった――。
なのに――あいつらは僕たちを残して死んだ。
潜水艦の傷跡に、本来低レベルの冒険者が入ってはならない領域まで進んた跡があったらしい。
ボロボロになって帰ってきた潜水艦にあいつらの姿は無かった。
もし大切な家族がいると思ったらそんな領域まで進行しないはず。
要するに、こいつらもこいつらを馬鹿にした冒険者たちも全員、自分の「欲望」「感情」に従って生きているだけだったのだ。
自分だけが楽しければそれでいいんだ。
自分だけが生きたいように生きればいいんだ。
愛しているような素振りを見せておけば、子供なんて信頼してくれるんだ。
両親にとって僕はその程度の存在だったのだ。
さっきまで悔しい気持ちでいっぱいだったのに、今は不思議と寂しい思いでいっぱいだった――。
そこでドアが開いた。
「お、次は黒糸か」
「あっ! はい! よろしくお願いしますっ」
僕は感情をなでおろして平静をよそおい席を立ちあがると、たまたまそこに陽帝が通りかかる。
「お、さっきは大丈夫だったか? えっと~……」
「……黒糸です」
「そうそう、黒糸くん。 黒糸はどこに――」
僕の進路書類に目をやった瞬間、後ろにふりむいた。
そのなだらかで綺麗な肩が小刻みに震えている。
「そっかそっか。 ぷっ。 まぁ、それしかないよね。 ぷっ。 頑張って! ぷっ」
「……」
また小刻みに肩をふるわせながら歩いて行った――。
僕はあのときのことを思い出したからなのか、ふと佐々木にしろ陽帝にしろ同じ思いにしてやりたいと思った。
こいつらの親を殺して悲しませてやりたい。
本気でそう思ってしまった。
でも、そんな返し方をしても意味が無い。
たぶん、こいつらへの悔しさや社会の不平等への苛立ちの返し方は間違いなくこれしかないのだろう。
分かっている、自分が。
一番分かっている。
でも、それでも、僕には守るべき「家族」がいるのだ。
自分の人生の幸せを捨てでも絶対に幸せにしなくてはいけない「兄弟」がいるのだ。
だから「冒険者になる」なんて絶対にできない――。
本当は憧れている。 なんてことは言えない。
本当は旅に出てみて世界をこの手で触れてみたい。 なんてことも言えない。
僕をぎせいにあいつらが幸せになるなら、それが僕の一番の幸せだ。
それでいい。
それでいいんだ。
それで……。
僕は強く拳を握りしめてから、再び感情をなでおろした。
「なんだ? 陽帝と知り合いだったのか?」
「いえ……特に知り合いとまでも……」
「ふ~ん、そうか」
先生は陽帝の後ろ姿を数秒見つめた後、僕を連れて静かに教室に入って行った――。
ご拝読ありがとうございます(*'ω'*)
2章で陽帝は……。