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3話―「ごめんね、椿。 電気止めちゃったの僕だし、本物のクズ悪魔も見つけちゃった」

こんにちは、腎臓くんです(*'ω'*)


今一番欲しいドラム式洗濯機ですが、サイズがでかすぎて部屋に合ってない事実に心がくじけました( ..)φ



 あれから1週間が経った朝。


 洗面所で冷える水を顔にうちあてた。

 電気の通わない1月の水は痛いくらいに冷たく感じる。


 らんは最近、悪魔を倒す話に夢中になっている。

 勿論、家ではなく幼稚園で見たものらしいが。


「ねぇ! ねぇ! せぇいぎのヒーローはあくまをたおしゃうんだよぉ!」

「らん、あのね、悪魔なんて本当にはいないんだよ。 早くご飯食べよう」

「つばきおねしゃんはしらないだけだよぉっ!」

「はいはい、ごめんね。 さ、早く食べて」


 こんな幸せな兄弟の会話を聞きながら、僕は黒縁の眼鏡を取りおかっぱの頭をくしで整える。

 準備はできた――。


 僕は今日も弟を幼稚園に送り届けてから学校に向かう。



 朝日が無常に頬を照らす。


 僕は運動神経にめぐまれなかった。

 そのため、昔からなにか武器をもとうと勉強だけは得意分野にしようと努力をしてきた。

 だが、この学校では勉強「だけ」の人間は未装備の人間と同じあつかいのようだ――。


「あっれ~? 今日もびっちし髪型決まってますねぇ~。 んー? く・ろ・し・くん~?」

「ありがとうございます。 ではっ」

「おいっ! 褒めて終わりなんてありえねぇのわかってんだろ? カス」


 こいつはこの学校のボス、佐々木。

 こいつの一声で数々のオタク達や立ち向かった正義感溢れる同級生は学校にこれなくなった。


 うわさでは、裏で女子生徒に胸糞悪いことをしているらしい。

 隣のクラスの勝浦くんが彼女を目の前で――と聞いたことがある。

 ほんっとに笑えないクズだ――。

 でも――僕には。


「あぁ~あ、今日もお財布忘れちゃったみたい~。 どうしたらいい? くろしくん~?」

「分かりました。 それでは――」


 僕は身構え戦闘の姿勢をととのえる。


「焼きそばパンと、のど越しの強いコカ・コーラッ! お口直しにっ学校限定販売の濃厚プリンはいかがでしょうかッ!」

「よし、ゴー」

「はいッ!」


 身構えた姿勢を購買部にむけて解きはなつ。


 僕には将来設計がある。

 このゴミkuzuに絡まれるゴミkuzuのような人生を脱出するためのエリート企業就職コースが。

 こんな所で問題を起こす訳にはいかないのだ。


(ほんとうに情けない兄でごめんよ……椿、らん。 必ず給料の良い会社に就職して2人とも大学まで引っ張ってやるからな)


 僕は悔しい思いを朝から始まる購買での争いにぶつけ、見事限定プリンを勝ち取った――。



 教室に入ると――まただ。


「ねぇ、黒糸ってプライドないのかなぁ~」

「ね! たしかに今まで立ち向かった人達っていじめられたけど、あそこまで『犬』だとなんだかねぇ~」

「あいつって、恥ずかしいとかおもわないんじゃね? 勉強しすぎておかしくなってるんじゃねーの」

「おいっ、やめとけって。 聞こえるって」

「まぁ、あいつの気持ちが分からないわけじゃないんだけどさぁ。 あいつさぁ~、何でも受け入れちゃうからさぁ~、佐々木の奴もどんどん調子にのるんだよね」

「な! 黒糸のやつマジで最悪だよな。 周りの迷惑かんがえろよな」



 よし、いつも通りの朝だ。

 頭に引っかかるとすれば佐々木のめし代が僕持ちなことぐらいだ。

 このお金を1か月計算すると……うん、椿には相談できない。


(ごめんな。 電気止めたの、僕だったかもしれない)


 また針が僕の心臓をチクリとつき刺した――。



 そこに、長身で凛々しい目の男がやってくる。


「おい! 皆ッ! そんなに言うことねぇだろっ!」


 僕の目の前にまで歩いてきてクラスと遮断するようにたち塞がるのは、この学校最強の男「陽帝 英雄」。

 僕が本来いるべきである学年1位という成績を家庭教師や名門の塾の力で勝ち取るお坊ちゃまだ。

 はっきり言って、うらましくて仕方ない。

 靴のうら舐めてでも僕に分けてほしい財力だ――。



 陽帝は僕の前に立ち、罵詈雑言から身をていしてかばう。


「もうさすが英雄くんだよね~」

「ね~。 あんなガリ勉のことまで守るなんて」

「キャーっ! 英雄くんがいじめられている子、守ってる! イケメンで高身長で学年トップで将来有望でっ! もう非がなさすぎて、ほんとうに漫画から出てきたんじゃないのッ?」

「あ~! もうッ! すきっ! すきっ! 抱いてぇ~! 1回でいいからぁ~!」


 なんだ、この茶番劇は。

 少し静まってから陽帝は困ったように頭をかいて、僕に手を差し伸べ握手をする。


「大丈夫か? 別に……なにもしてないのにな。 なんか、悪いな……」

「う、うん。 大丈夫だよ。 ありが――」


 手を強く引かれぐっとその綺麗な瞳に寄せられる。

 そして、誰にも聞こえない小声で――。


「お疲れ様。 引きたて役くん。 お前の名前なんか知らねぇけど、俺以上に目立ったら殺すからな」


 ……。 え?


「死ね。 クソ陰キャが」


 ……。


「し・ね」


(……。 あ、ごめんね。 椿。 らんは正しいよ。 お兄ちゃんね、本物のクズ悪魔見つけちゃいました)




ご拝読ありがとうございます(*'ω'*)


1章完結まで残り2話です( ..)φ

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