16話―「申し訳ない。 立ち向かわせていただきます。」
こんにちは、腎臓くんです(*'ω'*)
昨日、冷蔵にしまっていたアンパンを彼女にプレゼントしました。
彼女はとても喜んでくれました。
僕もとても幸せでした。
翌日、そのアンパンは冷蔵庫ではなく冷凍庫の奥深くに住んでいました。申し訳ありませんでした。と伝えたら彼女から「え、そういうの普通言わない? 食べたらって……心配しない?」って言われました。
現在、パソコンを打つ僕は1人ぼっちになりました。
おしまい(*'ω'*)
以上、独身の仲間入りをした腎臓くんでした。
2人の間を不穏な空気が包み込む。
「単刀直入に言えば、相手としてお前では成り立たない」
「まっ、待ってくださいっ。 ど、どういうことですか。 諦めろと言うのですかっ」
まるで鼻っ面が折れた子犬のようにしゅんと小さくなる六教官。
黙り込む姿が少し情けなく見えてしまう。
「……。 申し訳ないですが六教官、僕にはどうしても引けない理由があります。 先生の先生であっても、それはできません」
「違う。 『逃げろ』と言ったんだ」
「? どういうことですか」
「いやすまん……動揺していた。 いるとは知っていたが、まさか本当に当たるとは思っていなかった」
目が泳ぎつつ、冷汗をかく六教官は複雑な表情を浮かべている。
「つまりだな、短い日数で試合を回すには1試合にかけられる時間は少なくなる。 具体的には30分にも満たない。 だから、試合中一度も戦わずにドローに持ち込むんだ」
こんな戦略を言うのは始めてだ。
常にどんな状況でも、どんなに不利でも、どんなに追い込まれても『勝ち筋を見逃すな』と言っていた六教官が最初からドローに持ち込む?
なんの冗談なのか。
「六教官、正直にお聞きしてよろしいでしょうか」
「あぁ。 なんだ」
「韋駄天さんを侮辱するつもりはありません。 ただ、最弱のギルドを形成してしまうギルドマスターであれば防衛隊員の方が優るケースがあります。 でも、こんなことは六教官も知っているはず。 その上でドローを勝ち筋にする理由が見えません」
いつもならアホな顔してぼぉーっとしてから、「まぁ、あれがこうでこうだからよ。 その方がいいんじゃねぇか」と適当な感じで返してくるが、今回は違かった。
口に手を当て、何かを真剣に考えている。
「……。 最初から話すと、まずあの方は俺の兄貴『慈生 真』の元パーティーメンバーだ」
「……じせい しん」
「今から約20年前、防衛省や冒険省が甘かった時代。 規則も制度も民度もクソだったときに自由に『パーティーメンバー』というのを組むことができた。 もちろん今も存在するがほぼ絶滅危惧種のようなものだ。 だが、昔は違った――。 自由だったんだ。 何もかも」
「昔はそうだったみたいですね。 防衛省でよく他の上官から耳に挟みました」
「そうか、聞いた通りだと思う。 自由に旅に出て、自由に海の珍獣どもと戦う。 今じゃその時代に憧れを抱く子供達は多い。 だが、規則やルールが無いということは『無法地帯』でもあったんだ。 人を守る仕事がいつの間にか人を傷付ける犯罪の温床になっていたんだ」
「はい」
「そんな現状を解決しようとパーティーを解散して4人の人間が別々の方向に向かった。 1人は防衛省のルール作り、1人はギルドの民度作り、2人は深海の旅に。 人生をかけ動いた」
「あ、ではその、防衛省のルール作りの方が――」
「そう。 俺の兄貴だ」
「……そうでしたか。 では韋駄天さんがギルドのほうに」
「あぁそうだ。 その結果、ギルドの民度は上がり今ではその恩恵を受け平和に働けている者が多い。 今でも冒険者になりたいがセンスが無かったり、子供達がギルドというものを知るために国の許可を受け採取クエストのみを受注したりしている」
「そうなんですね」
「だが、実力が無い訳ではない。 むしろ、元々海の珍獣の攻略も見いだせていなかった時代に前線で戦い、裏では警察と協力し犯罪者の逮捕にも暗躍した戦いのエキスパートだ。 丁度そんな頃に兄貴に不幸があり、俺の指導をしてくれていたんだ」
「そうだったんですね……」
「あぁ。 だから、今回はお前が弱いからとか、ダメだからと言っている訳じゃない。 相手が悪すぎる。 ちなみに、俺はあの人に1度も勝ったことがない。 はは、笑っちゃうよな」
「あはは……」
まじか。
それから解散の原因や韋駄天さんがギルド社会の立て直しに人生をかけた理由などを聞いてから、闘技場に向かっていった――。
ご愛読ありがとうございます(*'ω'*)