13話―「弱者の学習能力、なめんなよ」
こんにちは、腎臓くんです(*'ω'*)
最近は新刊の漫画をチェックするのですが、やっぱり面白い物語で溢れてますね。
読めば読むほど「なるほど、こんな進め方もあるんだ」って勉強になります( *´艸`)
よし!今日も頑張るぞい!
以上、オタクの腎臓くんでした(*'ω'*)
観客が思わず立ち上がり歓声をあげる。
『うッぉぉぉおおおおおおおおおッ!』
一瞬にして今まで観客の抱いていた染へのイメージがひっくり返る。
それだけにとどまらず淡い期待すら抱き始める者まで現われる。
ドっと闘技場の熱気が盛り上がる。
アバランはにやけた染に少し恐怖を抱いたのかすぐに2撃目が出ない。
これまでに自分のフルパワーを防がれたことがないアバランには、瞳に映る染が自分よりも大きななにかに見え始めていた。
さらに平均男性よりも小さな身体の染がなぜ耐えられたのか不思議でしょうがなかった。
染は盾を持ったまま微動だにしない。
反撃に出てもいいはずなのだが、まだ剣は抜かずに両手で盾を構えている。
混乱したアバランは木製アックスを染に目がけむやみやたらに振り回しまくった。
「ぐぅぁぁぁあああああッッッ!」
――が、当たる位置をピンポイントで予測し盾を両手ですぐさま動かし防ぐ染。
バンッ! ガンッ! ダンッ! バンッ!
徐々に盾をアバランに向けながら押し進める。
押しやられるアバランは、フィジカル面でも現在の状況でも優勢であるはずなのにノックバックされているかのように攻撃しながら一歩ずつ足を後ろに動かす。
一見すると攻防の一体なのだが、観客には不思議な光景だった。
圧倒的な防御術でリクルートスーツの変な恰好をした小さな人間が巨大な怪物を後ろの壁に徐々に押し寄せている。
今まで見た事のない闘い方に理解が追い付いていない様子だ。
染にどの角度から攻撃しても、力一杯振りかざしても、なにをどのようにしても一歩も下がらない。
アバランとの歩幅を徐々に攻め絶望を与える、まるで小さな鋼の重戦車。
意味不明な恰好で試験に参加し、意味不明なステータスを持った染にアバランの顔付きは自信に満ち溢れた戦士から病に侵され終わりが近づく老人の如く変化していった。
「ぐぁぁああ!」
バンッ!
「ぐっぅうううッ!」
ガンッ!
「ぐぉおおおッ!」
ダンッ!
そしてついに――アバランは壁を背に一歩も下がれない所まで下がり終えてしまった――。
目の前には一歩も動かないリクルートスーツの重戦車、背後には今までの人生で見たことも無い距離感にある石壁、周りには自分の将来を見定める観客と審査員、テレビの奥には自分の理想を叶える為に英才教育をほどこしてきた完璧主義の両親が見ている。
いくつもの責任にいくつもの期待、いつの間にか試合よりも自分の精神的な居場所を探していた。
だが、いくら探しても見当たらない。
いや、最初から私欲を寄せる家族も周りの仲間も何もかも全てが「本当の居場所」ではなかったのかもしれない。
ここが墓場だと悟ったとき、アバランの何度も何度も振り上げてきた木製アックスが柔らかく染にストンっと落ちる。
それを感じた染は剣を抜き、ついに反撃に出る。
「よしッ! これからは僕の番だッ!――」
間合いを読んで盾を避け、剣を振りかぶった。
だが、もうそれは必要ではなかった――。
アバランは白目を剥き、泡を吹いて染に倒れ込む。
ちょっとした異常性に気付いたのか、染は優しく盾で受け止めた。
ぶっ倒れるアバランを盾のへりを使ってゆっくり横に流す。
観客は奇跡を見たかのように歓声を上げ、スタンディングオベーションで立ち上がる。
『うッぉぉぉおおおおおおおおおッ!』
審査員までもが今までの出来事に唖然とし、人によっては黙って拍手をしている者もいる。
倒れたアバランからなにかを感じ取ったのか、見つめていると小言で「ユルシテ、クダサイ。 ゴメンナサイ……」と呟いた――。
ご愛読ありがとうございます(*'ω'*)