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1話―「就職先はどれだけ金を堅実に稼げるかです」

こんにちは、腎臓くんです(*'ω'*)


頑張って最後まで書きます( ..)φ

よろしくお願いします。



 ここは「岩壁」に挟まれた国、『終煙国家』(スモークエンド)。

 右を見ても左を見ても、辿り着くのはどこまでも続く岩壁である。

 その岩壁の先端をたどると、大空に動かぬ太陽が1つ。

 夜には太陽が光を脱ぎ捨て、月光が光り出す。

 僕らはそれを「月」と呼ぶ。


 星は動かずその場にとどまる。

 不思議なほど動かない空が、僕らの夜空だ。

 

 これは、僕らにとってごく自然の情景だった――。



 この国は直径約50キロメートルの長さを持つ海辺を防衛する日々に追われている。

 その海辺には2本足の奇妙な生物や、戦車のような亀「戦車甲羅」と呼ばれるインベーダーが現れるためだ。

 何もしなければじゅうりんされるだけだが、相応の準備をすればインベーダーは新たな武器の素材になりうるし、新種においては国を発展させる技術力の材料となる場合がある。

 このような状況のため、世界からは「2つの職業」が常に求められていた。


 それが――

 大海原の海に住まう奇妙な怪物から国や市民を守る「防衛職」。

 未知に満ちた深海を調査する「冒険職」。


 この2つが現在、この世界の柱となっている――。




「はいっ! どうも~、水溜まりHEROのカンチ―とトチーですっ!」

「剣の角度は30度! どうも! ゆきりなです!」

「ブンブン! ハロー冒険! どうもっ!BOUKINです!」


 防衛や冒険で結果を出した彼ら彼女らは、今やテレビ、タレント業、歌手、Ktuberなどを通してお茶の間に絶大な人気を誇っている。


 その影響力は凄まじく、子供から30代までが憧れる職業、ぶっちぎりの1位。

 今では俳優女優といった花の職業を抜いて人気職業ランキングも堂々の1位。

 現代は圧倒的にこの2つの職業が頭を抜いていた――。



 憧れが強い職業ゆえに、国家事業でもある冒険省や防衛省に就職することは簡単ではない。

 

 まず防衛省は募集者の中から学力試験、基礎体力テストを受かる者のみが就職することができる。

 ここまではさほど厳しくないように聞こえるが、両方とも80パーセントを超える成績を出さないと「防衛隊員」にはなることができない。

 つまりそれ以下の成績の者は、その後の適性検査で技術職や事務職、総合職などにあてがわれる。

 勿論、最初から防衛隊員にならず技術職などを目指す者もいるが――。



 次に、冒険省は高校卒業時までに学業とスポーツの両方で結果を出すか、「ギルド」という民間の冒険職に就職して結果を出して推薦を書いてもらうかスカウトをされるのを待つか、防衛省からの転職の4択である。



 難しい条件の上、冒険職は非常に危険な仕事のため「国家冒険者資格」を取らないと冒険には出られない。

 つまり、冒険省に就職できようがギルドから推薦状を書いてもらおうが防衛省から転職しようが、国家試験を受け合格しないと冒険には出ることができないのだ。


 そういった資格制度になったのはここ数年前から。

 理由は簡単。

 勝手に深海に潜り、後日行方不明及び遺体で発見される若者が年間100万人を超えたからだ。


 いくらニュースで注意をしても、社会の熱の渦は止まらずここまで発展してしまったのだ。


 それでもなお、資格を取り個人で深海を目指す変わり者はいるが。

 基本現状では規制され、国が鉄のバリケード「インジゲーター」を張って海を管理している――。



 そして一方、僕は――。



 潮の匂いがいつもより強く感じる今日、ノイズのような雑音を鳴らす大雨が降る。

 降水量はなんと今年一番の日らしい。

 ニュースでは海岸の浸水が激しく、いつもの3倍の防衛隊員が張っていると話していた。



「それでー、黒糸」


 担任の先生が両腕を組んでハイプ椅子にもたれかかり、心配そうな表情で僕を見つめる。


「はい」

「みんな大学に行ったり、就職するにしてもギルドだったり防衛省だったりするのに、お前だけ普通の一般企業でいいのか?」

「はい、問題ありません」

「そうか。 う~ん、成績は良好だし、まだ若いから人生挑戦することも悪くないと思うんだけどなぁ」


 悩む顔がなんというか、先生というより子供を心配する親に見える。


「大丈夫です。 未来とは堅実性が全てなんです」


 はっきりとしたその言葉に諦めがついたのか、ため息交じりで了承してくれた。


「まぁ、まだ変えたいとか気持ちがあったら確定するまで一週間ある。 いつでも相談してくれ。 年老いた俺だが、話くらいは聞いてやれるからさ」

「ありがとうございます」

「うん。 よしっ! それじゃあ、解散!」


 そう言って先生は僕の肩を2回ポンポンと優しく叩いてから進路相談を終わらせた――。



 僕は下駄箱で靴をはきかえていると他の生徒の声が聞こえる。


「ねぇ! 聞いた? 英雄くん、『冒険省』からスカウトがきたんだって!」

「あの天下の冒険省から?」

「そう! 天下の冒険省様から!」

「えーーー! やばいね! やっぱ学年1位は違うよね~」

「ほんとだよね~! あ~、後もう1回告白したらとなりに英雄くんいたかなぁ~」

「あんたっ! それ以上告白したらストーカーと間違われるよ。 やめときな」


 きゃぴきゃぴした声がわずらわしい雑音に聞こえる。


 冒険省が「世界最強の就職先」であること、冒険者が現代では可能性にみちあふれていることなんて、今の時代誰にでも分かる。


 でも、僕は――冒険者だけにはならない。

 絶対にならない。

 それだけでなく、この職業にまつわる仕事もしたくない。


 僕は超安定した給料を毎月貰い、それで生きるのだ。

 それで十分なのだ。

 それで大切なモノを守れるなら、それでいいのだ。

 それが僕が導き出した「最強」なのだ。


 時代? 人気? カッコいい? 肩書?

 ハッキリ言って――くだらない。


 そんなモノのために、あえて命を落とす危険な任務に出向くのか。

 まったく馬鹿らしくて呆れる。


 命を落として大切な人を守れなくなったらどうするのだ。

 残った人が悲しまないとでも思っているのか。

 

 僕は痛いほどその悲しみを知っている。

 そして、その後の苦しみも。


 だからならないのだ。

 

 僕には――冒険者にならない「僕なりの正義」があるから――。




最後までご拝読ありがとうございます(*'ω'*)


5話で1章完結するので、そこまで読んで気に入っていただいたらこの小説と僕にご評価ください。

気に入らなかったら、そっとページを閉じる前に僕をブロックしてください。

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