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冒険者ギルド加入


 少し歩いて、暇だったのでガイドブックを読みながら歩くことにした。


 地図は、一般的な地図のようで、そうでもないようだった。

 あらゆる道と町やダンジョンが記されているのは勿論、自分の向いている方向や、歩いている位置がリアルタイムに表示されている。確かに紙でできているが、「切り替え」と記された長方形を触れると描かれる情報が変わる。

 標高や水の有無などが書かれた地学的なものや、魔物や植生の分布が書かれた生物学的なもの、今はまだよくわからないものもあった。

 +や-といった記号に触れると地図の映す範囲が変わり、角に書かれた時計は秒針まであった。

 鉛筆やインクのように見えるものが常に変化しているのは…不思議だ。


 ガイドブックは最初に目次があり、巻末には単語とその説明が載ったページ数が五十音順に載っていた。目次を見ると、


生活

戦闘

生産

ダンジョン

その他


の五章で構成されているようだった。

 読んでみよう。


生活


 生きるためには食料が必要です。人から購入するか、自然から採取しましょう。

手に入れた食材はそのままでも食べられないことはない(一部例外有り)ですが、基本的には料理したものの方がいいことがあります。料理が成功すれば、その料理に祝福がかかります。

 祝福されたものには様々な効果が付与されます。

例えば、生肉を焼いただけの「焼肉」には体力回復増強(小)の効果があります。

(※生肉をそのまま食べると腹痛を起こすことがあるのでなるべく火を通すようにしましょう。)

また、祝福にはその食材の劣化を修復する効果もあるので、腐りやすい生ものなどは腐る前に料理しておきましょう。料理されたものは基本的に腐りにくくなります。

 料理についてさらに知りたかったら、生産の章の料理のページを読んでみましょう。



 この章を読み進めても良いかもしれないが、次の章も見てみることにした。


戦闘


 生きていくうえで、戦わないといけないこともあります。

 戦闘技術は大きく四つに分類されます。

近接、遠距離、魔術、奇跡の四つです。

近接は攻撃が自分と相手と接しているものが該当し、遠距離は接しないものが該当します。

例えばナイフで攻撃するとき、直接切りつければ近接、投げつければ遠距離になります。

魔術や奇跡はその名の通り、魔術や奇跡が該当します。

ただ、遠距離や近接も兼ねるものや魔術だけれど近接になるものなどもあります。

例えば、魔力によって生成した氷の槍で攻撃したときは、魔力を帯びているうちは魔術兼近接ですが、

魔力が抜けた後は、普通の氷で攻撃したときと同じように近接です。奇跡でも、同じです。


 次に装備について説明します。

 服や剣などは利用できている時に、装備しているということになります。

ですから、肌が触れているだけで装備品の効果は得られるわけではなく、逆に布越しでも柄を握ることができるのならばその武器を装備していることになります。たとえ口に武器を咥えるとしても、それを扱えるならば装備できます。

 装備品にも祝福がかかっています。

元々装備品として作られたものは勿論、道端に転がる石も、普段は祝福がありませんが、装備したときに祝福がかかります。

 入手方法は、自分で作るほかに、ダンジョンの宝箱などがあります。



 一度本を閉じてみると、意外と町が近くなっていた。門番と会話している人が見える。

本に地図を挟みなおし、わきに抱え、歩を進めた。


 門番は二人いて、片方は話をしているので、もう一人の方に声をかけることにした。


「こんにちは」


「おお、どうした坊主。お母さんはどうしたんだ?」


 どうやら心配してくれているようだった。確かに、小さい子供が一人でいたらまともな人間は心配するだろう。ただ、僕は神によって生まれたそうなので、母親は神様ということになるのだろうか。


「いえ、一人で来ました。この町に入っても問題はありませんか?」


「…ああ、そうか。おう、今は戦争してるわけでもないから自由に出入りできるぞ。よく来たな。」


 その声にはどこか憐れみを感じた。なんとなく釈然としない。


「そうですか。ありがとうございます」


礼を済ませて町に入る。


さて、これからどうしようか。


背のほうから声がかかった。


「ああ、そうだ坊主、つきあたりの冒険者ギルドで登録すれば支給品がもらえるぞ、頑張れよ」


振り返ってその門番を見ると、こちらに親指を立てた。


「わかりました。ありがとうございます」


そしてその動作を真似してみる。挨拶か何かだろうか。

/


 綺麗なローブだけを着た、黒髪の孤児が石レンガの道を歩いていくのを眺めていた。

門番の相方は知り合いの冒険者との世間話を終えたのかこちらに話しかけてきた。


「あの子、どこから来たんだろうな」


「ああ、近くの村は、子供を一人にするようなところではないし、かといってあのローブの綺麗さを見るにそんなに遠くから来たわけでもなさそうだ。荷物も本以外なさそうだったし。」


「ここら辺が平和でよかったな。山賊とかに攫われないでよかった。」


「本当にな。宿が見つからなさそうだったらうちに呼ぶとするか。」


 そうして、この町の門番はまた、門の外に目を向けた。

夜勤の組と交代するまで仕事をしなければならないのだ…


/『イニサル町』午前/


 レンガ造りの建物が並び、道は少し広く、街灯はまだ火が付いていないが規則正しく等間隔に置かれていた。町を歩く人々の様子は明るく、活気があった。


 冒険者ギルドとかいう場所に行くのが良いらしいのでその助言に従うことにしたが、その場所に着くまでに色々なものが見れた。


 草原でも見かけたような、武装をした人。こぎれいな服装で、馬車を引かせている人。

木箱や麻袋を建物に運び入れる人や屋台から道行く人に声をかけて何かを交換する人。

看板を掲げる建物や煙突のある住宅。綺麗なステンドグラスのある建物。

目に映るものは新鮮だった。そして、ある事に気が付いた。


 僕の服装は、ひょっとすると相当怪しく見えるのではないだろうか。


急に、ローブの下に何も身に着けていないのが恥ずかしく感じられて、足が急いだ…



 両開きの扉を開けて冒険者ギルドに入る。

人が100人は入れそうな広さで、カウンターが入口の方を向くように置かれてあった。

右手の壁には大きな掲示板に色々な紙が文章や絵と共に張り出されていて、

左手の壁には扉が一つついていた。

中に居る人のほとんどは武装しているようだ。

カウンターで立っている人は6人居て、皆同じ服装だった。


 どこも空いているようなので取り敢えず一番右端の人に話しかけに行った。


「こんにちは。登録というものをしに来ました。」


 受付の人は女性で、水色の長髪をおろしていた。瞳は髪色と同じ色をしていた。


「…なるほど。わかりました。よくここまで来れましたね。偉いですよボク君」


「門番さんが教えてくれたので」


「いや…まあ、そうですね。親切でよかったですね。」


「はい、助かりました。それで登録がしたいのですが。」


「では登録を始めますね。ボク君、読み書きは出来ますか?」


「多分できると思います。」


「じゃあこの用紙にボク君のことを記入してください。」


 鉛筆と一緒に紙を渡されたので埋めていった。


名前

 エイレ・フィロネイア

種族

 人間

性別

 男

年齢

(空白)

出身

(空白)

信仰

(空白)

能力値・適正検査を希望しますか

 希望する

冒険者ギルドの説明を希望しますか

 希望する



「なるほど…年齢と信仰は検査で分かるので大丈夫ですが出身は…取りあえずここということにしておきますね。」


「わかりました。」


「…えーっとあれは確か…ふう。それじゃあエイレ君、早速検査をしましょう。これを持ってください。」


受付の人はカウンターの下から透明な球体とそれをのせるのであろう石の台座を重そうに両手で取り出し、そのうち球体だけを持つように言った。


 球体を両手で持つ。落として割ってしまったら嫌なので慎重に。


「それじゃあこのあとお姉さんが言うことを繰り返してね。…んん、

『介入承諾。私はこの干渉を受け入れます。』」


「介入承諾。私はこの干渉を受け入れます。」


すると透明だった球体が薄く青い光をまとった。


「じゃあそれを頂戴。エイレ君」


 言われた通りに渡す。すると受付の人はそれを台座に戻し、またカウンター下から取り出した紙を台座に近づけた。

球体からその紙へと青い光が移動し、文字を浮かび上がらせていく。

紙の一番下まで光が走り、そして消えた。紙には文字だけが残っている。

受付の人はその紙を渡してくれた。


「はい、これがエイレ君の適性と今の能力よ」


///

名前

 エイレ・フィロネイア

種族

 人間

年齢

 8歳

信仰

 原初の女神エス

能力値

 肉体

  頑強さ 8 S

  素早さ 10 S

  器用さ 20 S

  賢さ  20 S

 精神

  魔力  15 S

  信仰  15 B

  精神力 20 A

 魂

  感覚  15 A

  善性  1 中庸


適性

 戦士

 魔法使い

  属性 全て

 僧侶

 商人

 科学者

 旅人

 芸術家


加護

 有


///


「確認できました。ありがとうございます。」


「ねえエイレ君、お姉さんも見ていいかな?」


 見られて困るようなことはないだろう。

紙を受付の人に渡す。


「はい、いいですよ。」


「ありがとうエイレ君。それじゃあ失礼して…

年は、うん、見た目通り。信仰は…知らない神様だ。珍しい。

能力値は…今の年齢にしてはすごく高い、しかも肉体の潜在値は全部S、精神のも決して悪くない。

適性は基本職全部出てて、属性も全て、ついでに加護がある。

まさに神がかっているわね…顔も良いし。」


「それじゃあ支給品をいただけますか。」


「ええ、それではこちらをどうぞ。保存のきく食料と初心者用の回復薬、採取用の道具とお金が入っているわ。まず装備を揃えるのが推奨されているわよ。あと…はいこれ、冒険者カード。」


 金属製のカードと布製のナップザックを受け取った。紙の包や赤い液体の入った瓶、空き瓶やナイフなどがあり、その中にまた小さい袋があった。銀貨が五枚入っていた。


「冒険者カード?」


「名前と冒険者ランク、信仰と種族と年齢が載っているわ。身分証明書のようなものね。依頼を受けるのにも使うから再発行はできるけどあまり無くさないでね。さて、それじゃあ説明に入りましょうか。」


「よろしくお願いします。」


「ではまず、この冒険者ギルドについて説明するわ。

ここは冒険者をサポートするための場所で依頼の仲介や訓練用の場所の提供、パーティの斡旋などをやっているわ。そして、冒険者ギルドは全ての町に置かれていて、ここで受けた依頼でも別の町のギルドで報酬を受け取ることが出来るわ。


次に依頼についてね。

 依頼というのは基本的に誰でも受けることができるわ。ただ、期限以内に完了報告ができないと罰則があるから難易度には注意してね。途中でキャンセルする場合もある程度のデメリットがあるからその依頼を受けるかどうかは慎重にね。受け方としては依頼の紙と冒険者カードを受付に出してくれたらいいわ。報酬はさっきも言った通りどこでも受け取れるのだけれど、お金やありふれた素材じゃなくて何か貴重なものだったり、特定の装備品とかだったりすると配達に時間がかかるから、そういうのは受けたところで報告するのが楽でいいわよ。


冒険者ランクについても説明するわ。

 依頼とかをこなしていくとランクポイントがもらえるわ。それを貯めていくと冒険者ランクが上がるの。そのランクの高さに応じて半月に一度ギルドからも報酬がもらえるわ。初心者だとお金が少しもらえるくらいだけれど、ランクが高いと希少な素材を取り寄せたり、スキルや魔法の訓練を受けさせてもらえたりするわ。ランクの高さは数字で表されるのだけれど、100までが初心者、500までが一般、1000までがベテラン…とかそんな感じに思われるわ。だからパーティの斡旋とかもこの数字で判断されることが多いわ。


あとは、訓練所についてね。

 基本的に自由だけど、貸し切りにしたいときはお金を払えばできるわ。ただ、あまり長時間使われると困るから、あまり使う人は多くないのだけれど規則としてね、だから予約して、月に最長三時間だけそうすることができるわ。でも、開放されてるときはマナーさえ守ってくれれば自由に使えるわ。

ええと…まあこんなところかしらね。何か質問はある?」


「…今のところはないです。ありがとうございました。」


「うん。困ったことがあったら何でも言ってね。」


「はい、では装備を整えに行ってきます。」


「いってらっしゃい。」


 装備品を買いに行こう。というより早く服が欲しい。そうしたらあの門番さんにお礼を言いに行こう。

/


「凄い子だったわね…」


比較的平和な町のギルドであるため暇になりがちな受付嬢の一人が、早足でギルドを出ていった少年への評価を口に漏らした。

それを聞いた隣の受付嬢が、暇つぶしに話しかける。


「何が凄かったの、セレちゃん。」


「うーん。全部ね。強さというか素質も性格も見た目も。」


「えー、そんなに?」


「ええ、最強って感じだったわ。…それに可愛かったし。」


「えぇ…まあ分からなくもないけれど。」


 隣の受付嬢は、いつも丁寧で受付嬢の鑑と言われるような同僚が一瞬漏らしたその表情を見て、ちょっとした好奇心を沸かせていた。


「適性はどんなだったの?やっぱ斥候とか狩人?旅人とか出てた?」


 斥候とは戦士系で旅人系よりの職業で、狩人は両方の中間にあるものだ。

戦士系と旅人系は適性を持つ者が多く、僧侶系や魔法使い系は少ない。


「全部出てたわ。」


「えええ。じゃあ文字切れしてたの?」


 文字切れというのは適性職業が多く、適性のある職業がその名の途中で"〇〇…"と表示されることだ。

そうなる人は数年に一人ぐらいしかいないと言われている。


「いや、違うのよ。基本職全部だったのよ。」


「えっそれマジ?」


 基本職というのはかなり珍しい。そしてかなり優れているものである。

何故なら、適性とは大が小を兼ねるものだからだ。そのため、斥候を適性で持つ者は戦士や旅人の適性を持ってはいないが、戦士と旅人の適性を持つ者は斥候や狩人の適性を持つということになる。

枝の分かれた木をイメージすればわかりやすいだろう。

基本職と呼ばれる全七種を持つということはつまり、全ての職業が適性であるということである。


「やば…」


 もしもそんな者が存在していたら、ほぼ確実に全冒険者のトップの実力になるだろう。

暇であるとはいえ仕事中には絶対に口にしない言葉がこぼれる。

しかしそれも仕方のないことだろう。国によっては国王にすらなりうる者がさっきまですぐ近くにいたのだ。


「しかも服装が危うかった。見えそうで見えない…」


「やば…」


 幸か不幸か受付をせずに済んだ受付嬢は、そんな伝説のような存在を前にしていたのに平常運転な同僚を見て、同じ言葉を繰り返してしまうのであった…


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