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作戦会議

「にしても無理だって! いきなりこんな高難易度ミッション」

「でももう後戻りはできないよ?」

「できなくさせたのは一体どこの誰だよ……」

 俺は思いっきり溜息をつき、どうしたものかと頭を抱えた。

 レイが受諾したミッションの内容とは、なんと『魔王の守護者討伐』という未だに達成したパーティ

の少ないミッションであった。

 『魔王の守護者討伐』ミッションがどれ程キツイものかというと、基本的に魔王の守護者は魔王軍を率いて

地上界を侵攻してきている。

 その魔王軍の包囲網を突破し、魔王の幹部である守護者を討伐しないといけないのである。

 今回受諾した七人の守護者中でも最弱と呼ばれるライアンですら、百人のAランク冒険者が必要と言われているのだ。

 どれだけ可能性の低いミッション成功率なのかは察しがつくだろう。

 人脈が使えないのであれば、最後は何かの策に頼るしかない。

 俺は彼女に何かいい案でもあるのか試しにだが聞いてみた。

「なあ、当然ライアン軍を討伐するいい作戦があるからこのミッションを受けたんだよな?」

「それを考えるのがリーダーの仕事でしょ?」

 レイは、半ば呆れたような顔を浮かべながら俺にそう返してきた。

「な……! お前なあ」

 元はといえばだが、レイが勝手にこの最高難易度ミッションを受けたせいで今困っているのだ。

 元々俺はもっと簡単なミッションを受けるつもりでいたが、正直ここで口論をしてもしょうがない。

 できる限り勝率を高めることができるように、まずは情報を集めるべきだ。

 俺はミッション内容に書かれてあった、ライアン軍の詳細を読み始めた。


 ライアンとは、元々魔界に一番近い国の騎士王として名高い人物であった。

 彼は大変誇り高い人物で、つい近年まで魔王軍と戦いを続けていたが落城したことにより魔王の軍門に下ったと聞いた。

 そのため彼が指揮している軍は、基本的に元人間のクリーチャーで人語を話す。

 総戦力は二千で、個々の戦闘能力もBランク冒険者級に匹敵すると聞く。

 敵軍の状況は、今現在近隣の弱小国を侵攻中で殿軍には五百の護衛兵が待ち構えている。

 この五百の護衛兵を、たった二人の戦力で掻い潜って敵の大将首を取らないといけないのである。

 そんなこと果たして可能なのか? 俺は思案を巡らせる。

 いや……おそらく無理だろう、そもそもライアンの軍がどこにいるのかすらわからないのだ。

 場所すらわからないのであれば、戦いに挑みようがない。そう考えた時であった。

「なあ、レイ。お前ってこの街ぐらいの広さなら覗き見が可能なんだよな?」

「うん、そうだね。やろうと思えば、その十倍だろうと可能だよ。それがどうしたんだい?」

「だったらさ、その魔法を使ってライアンがどこにいるのか突き止めることとかってできたりするのか?」

「造作もないことだね」

「おお、さっそくやってみてくれないか!」

 俺がレイに魔法を使うことを頼むと、彼女は何やらブツクサと魔法を唱え始めた。

「賢者レイが命じる、彼の者に四方を見渡す千里眼を与えよ『マップ!』」

 その詠唱とともに俺の頭の中に、この世界を空中から見た時のような映像が浮かび上がってきた。

 そして俺は望んだとすれば、この世界に広がる事象を好きなように観測することができた。

 あるところでは、勇者パーティが魔王軍と戦っている様子が浮かんだり、またとあるところでは

盗人が民家から空き巣を働いているところが浮かんだりと怨嗟に満ち溢れたこの世の情勢が手にとるようにわかった。

「これがお前の見てきた世界なのか?」

「そうだよナユタ、これが私達の住んでいる世界の現状。だから私は救いたい」

 俺は少しだけれどもこの少女が生まれてこのかた、何を見て育ってきたのかを考えるといたたまれない気持ちになった。

 確かにこんな世界の惨状を見て育ったならば、ちょっと行き過ぎた世界を救うなどといった青臭い思想になるのもわかる気がする。

 そして彼女はついに、俺という同格以上のパートナーを見つけることができた。

 だから、俺に積極的にアプローチをかけて来て、かなり急ぎ気味ではあるが守護者を討伐するというミッションに挑んだ。

 その意思だけは否定したくないなと思う。

 そんなことを考えているとだ、偶然にだが何やら数百のクリーチャーがウヨウヨとしている異様な光景を発見した。

「これは……?」

「ああ、ちょっと待って今拡大する」

 そういうと、一番奥に布陣している王と思わしきものの姿が見えた。

 俺はミッションの詳細に書かれてある大将首のイラストと、今見えている王の姿を見比べてみた。

 間違いない! あいつが守護者ライアンだ。

 しかし、場所を特定できたとしてもあのクリーチャーの山を突破して、ライアンに近づくことができるのだろうか?

 いや、できる。俺はある方法を閃いて彼女に提案した。

「なるほど流石だね、やり方がいかにも義賊っぽい」

「フフフ、そうだろ?」

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