暗号解読
俺たちは、食堂を後にし魔界への扉のある街エンドラへと向かった。
エンドラでは、最強の守護者ゼロに随分と苦戦させられた。
そんな苦い思い出のある街エンドラだが、今は意気揚々としていた。
──これから、行くのは魔界。前人未到の地だ。
おそらくその地を踏みしめただけでも、歴史に名を残す冒険者になることは
間違いないだろう。
だけれどもそれが理由で、気分が高揚しているわけではない。
本当の理由は、ワクワクとはむしろ逆。
無理にでも自分を奮い立たさないと、不安に押しつぶされてしまう。
そんな理由から、俺たちは空元気で平常を装っていた。
それは、まるで特攻を命じられた決死隊のようであった。
俺はそんな死地へと向かうため、マジックアイテムを使ってエンドラへと向かった。
───
エンドラの風景は相変わらず荒涼としていた。
それもそのはずである、この間守護者ゼロを倒してから数日と経っていない。
俺は古文書を頼りに、魔界への門がある場所を探し求めた。
「えーと、んー。なんて書いてあるんだ?」
「ちょっと見せてくれるかい?」
俺は庶民の出で、文字を読むのが苦手だ。
それに数百年前に書かれた古文書となれば、現代ともかなり勝手が違う。
ここは、学のあるレイに任せた方が無難であろう。
「なにかわかったか? レイ」
「ちょっとまっておくれよ。読めないことはないんだけれど、どうも意味が通じなくてね」
「ふーん、そんなもんなのか」
そもそもだがこの古文書自体、出どころがあまりはっきりとはしていない。
噂によれば、数百年前に起きた戦争を鎮めたレイやアマタ達のご先祖様、つまり今の王族が
書いたとされている門外不出の書物だ。
しかし、その肝心の王族でも解読が不可能なのでは──お手上げである。
「なあ、アマタ。なにかこれを見てわかったこととかないか?」
「んー、ちょっと見せてくれるかい?」
レイから古文書を手渡され、解読を試みるが彼もまた沈黙してしまった。
どうやら、解読に時間がかかる、もしくは相当な難易度なのだろう。
これでは埒があかない。一人、一人がうんうんと頭を捻ってもしょうがない。
ここは全員で、意見を出し合ってみるのも手であろう。
「なあ具体的には、どこらへんで詰まっているんだ?」
「このあたりだね。どうも文章が抜け落ちているみたいで意味が通じないんだ」
アマタは、文章の中盤あたりを指差して答えた。
──そこは俺も詰まってよくわからなかった場所だ。
完全に手詰まりかと思っていた時意外な人物が声をあげた。
「もしかして! 魔法の光を照らしてみると、文章が浮き出てくるとか!」
それを言ったのは、ルリであった。
まさかファンタジー小説ではないのだからそんなことはないだろうと思ったが、アマタが
真剣な顔で「ありえるかも」と呟く。
おいおい、まさか──と言いかけたが、とにかく挑戦してみることが重要だ。
今はそれほど手詰まりな状況なのだ。
「よし、やってみよう」
「わかった。賢者レイが命じる魔法の灯よ古文書を照らせ!【ブライト】」
レイがそう唱えると、なんと古文書に文字が浮き出てきたのではないか。
「えっ、うっそ!」
それを見たルリが一番驚いた反応を示した。
当てずっぽうで言っていたのかと呆れそうになったが、ともかく大収穫だ。
「でかしたぞルリ! これで魔界に行ける」
ここで俺たちは、魔界探索の第一歩を踏みしめたのである。
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