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俺だけが頼める裏メニュー

「すみません、大将。もしかして例のアレ入ってたりしないか?」

「おう、久しぶりだなあんちゃん。ちょうど例のアレ入ってるぞ!」

「おおマジですか! それじゃあ裏メニュー二つ頼みます」

「おう、わかったぜ。あんちゃん」


 そう言って俺は店主に、レイとアマタの分の裏メニューを頼んだ。


 これで準備はよし、あとは二人が裏メニューを食べててくれば万事オーケーだ。


 そう考えて俺は、店主が裏メニューを作るのを待った。


 裏メニューは普段お店に提供しない料理を、特別に作ってくれるものだ。


 思えばこの裏メニューから俺の冒険は始まった。


 この裏メニューを食べたことにより、俺はFランクから一転Sランクに。


 そして色々あって、仲間も増え今では夢物語と思っていた魔王討伐すら

現実味を帯びてきた。


 それもすべてこの裏メニューがもたらす、圧倒的なステータス強化によるものだ。


 元々Sランクのこの二人がこの裏メニューを、食べたら一体どうなるのだろう?


 考えただけでも、胸が高まりゾクゾクしてたまらない。


 新たなランクの新境地を開拓するだろうか? それともサーシャの如くスキルに目覚めるのだろうか?


 妄想に妄想が膨らむ。


 そんなことを考えていると、ルリからツッコミが入る。


「どうしたんですか? ナユタさんいきなりニヤニヤして」

「リーダー、少し気持ち悪い」


 ちょっとキツめの罵倒を浴びせてきたのは、サーシャだ。


 戦闘では守備職だが、口撃力は高い。


「いや、実はさ。今頼んだ料理っていうのは、この店の裏メニューなんだよ」


 俺は喧嘩している二人には聞かれないように、ボソリとルリとサーシャに呟く。


「えっ! 本当ですか?」

「マジマジ。どうなるか楽しみじゃないか?」

「それは楽しみですね」

「ワクワクです」


 どうやら彼女達も俺と同意見なようだ。


 やはり仲間のパワーアップというのは楽しみなものだ。


 そんなことを駄弁っているとだ。


「お待たせしましたー」


 店主が、裏メニューを届けてくれた。


「ん? 大将、なんじゃこりゃ」

「何ってこれが夢に出てきた裏メニューだけど?」

「……マジっすか」


 店主が裏メニューとして出してきたものは、ご飯の上に茶色い液体がかかった料理であった。


 確かに臭いはスパイスの利かせた芳しい香りがするが、どうも見た目に食用はそそられない。


 これは食べさせるのに苦労しそうだ。そんなことを考えていると匂いに釣られた二人がその裏メニューに目を向けた。


「うわっ!」


 二人は口を揃えて一言そう呟く。


 やはり見た目がまずかったか……? そんなことを考えているのも束の間。


「何だこれ! 美味しそう」


 俺は二人の反応を見て、思わず腰を抜かした。


 案外宮廷の料理とは、珍味ばかりが出されるのだろうか?


 世間ずれとは怖いものだ。まあ今回はプラスに働いたからがよいが。


 二人は食前の祈りもそこそこに、ガツガツとその料理をかきこんだ。


「ンー、辛いけど美味しい!」

「おう、それはよかったよかった」


 本当によかった。二人も喜んでくれたし、それに──これで戦力増大は確定だ。


「じゃあ大将、ここにお代置いておくぜ」

「おう、また来てくれよな」


 本当にまた来れるならまた来てみたい。


 俺たちは、食堂を最後に王国を後にした。

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