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事件

 奥からやって来たその人物は、俺達の顔を品定めするかのように舐めるように見渡した。

 それに対して俺は何を言われるのだろうと緊張し、喋るのをグッと堪えていた。

 するといかにも偉そうな威厳ある人物はコホンと一つ咳払いをした。

 俺はその意図を察知できずに、ポカーンとただ突っ立っていた。

 すると受付嬢は忙しなくおたつき始めた。

 それでも俺にはその意図がいまいち理解できずに、ボケーッとしていた。

 それに対しまたゴホンゴホンとわざとらしく咳払いをする件の人物。

 ここまで咳払いをするということは、何か体調に異変があるのかもしれない。そう感じた俺はやっと口を開いた。

「あの……先程からずっと咳をしていらっしゃいますが、大丈夫でしょうか?」

 そうすると、その件の人物は待ってましたといばんわかりに口を開き、俺達を怒鳴りつけた。

「これ君たち、いくら高位の冒険者とはいえちょっと口の聞き方がなっていないんじゃないかね?」

「え?」

 どうやら俺達は何か不味いことをしてしまったらしい。

 そのことに気がついて、俺は近くにいた受付嬢にこの人物のことを尋ねることとした。

「ねえ、すみません、この人って一体どなた何でしょうか?」

「え! この方をご存知ではないんですか?」

 そう言って受付嬢は、驚いた表情を浮かべ俺をまるで変人かのように扱う。

「え、ええ。ところで一体誰なんですか?」

 俺が尋ね返すと、受付嬢は顔をしかめながらなるべく周りに聞こえない声でボソボソと耳元で囁いた。

「あの方は、このギルド役場で一番偉い人なんです」

「へええ、それは凄い」

 俺は感心した様子を浮かべるが、それでもいまいち彼がどのような人物かピンと来ない。

「で? それがどうしたんだ?」

 俺がまた受付嬢に聞き返すと、彼女は呆れた様子で一から十まで説明しなければダメなのかといった感じだ。

 それでも彼女は職業柄か、何も知らない俺に丁寧に説明してくれた。

「あのですね、王都のギルド役場というのはつまりこの国の直接の管轄の役場というわけです。

つまりあのお方はこのギルド役場のトップであると同時にこの国の大臣でもあるということです」

「大臣!」

 俺はそれを聞いて息を飲んだ。

 確かに大臣ともなれば、あのような尊大な態度をとるわけだ。

 俺はなんとなく合点がいった。しかし、それでも俺には腑に落ちないことがある。

 大臣とはいえ、この国のトップではない。それに、俺のパーティには王族であるレイもいる。

 それに俺は仮にではあるが、王になるための試練を与えられた者でもある。

 つまりは、大臣にも引けをとらない存在だと自分では思っているわけだ。

 そのことに引っかかりを覚えながらも、俺は一応形式上彼を敬うこととした。

「すみませんでした、世間知らずなもので」

 そう言うと彼は、いくらか機嫌を直したようであった。

「まあそれならばしょうがないな、してちょっと君に頼みがあるのだが」

「頼みですか……?」

 これが俺が巻き込まれる面倒な事件の始まりであった。

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