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銀髪の美少女

 俺はギルドの宿場を勢いで飛び出した後、思案にくれていた。

「はぁ……。パーティ追放かあ」

 今思えば辛い思い出しかないパーティであったが、いざ追放されてみると寂しい思いがしてくる。

 そんな感傷に浸りつつも、俺はある不味いことに気がついた。

 俺は今お金どころか武器も持っていない。

 これではたちまち俺は、何もできずに野垂れ死んでしまうではないか!

 俺は頭を抱え、ギルド役場の前で打ちしがれていた。

 するとだ。ポンポンと誰かが俺の肩を叩いてくる。

「あのー」

「ハァ……」

 俺は意にも介さず、溜息をつき悩み続けていた。

「あの!」

「うわ!」

 俺の肩を叩いていた声の主は、いきなり耳元で大声をあげそれに対し俺は驚きの声をあげた。

 ゆっくりと目線をあげ、声の主の顔を見る。

 するとどうだろうか。透き通るような長い銀色の髪に、サファイアのような美しい瞳。

 格好は冒険者らしく、茶色のコートに革のガターベルトを巻いた美少女が目の前にいた。

「えっと……どうされました?」

 俺はあまりの衝撃にこんな情けない返答しかすることができなかった。

「どうかしているのはあなたの方です! なんですかこんなところでショボクレて。正直言って通行の邪魔です」

 少女は溌剌とした声で俺のことを注意した。

 彼女の声を聞いた時、不思議と驚いたとかそういった感情よりも先に綺麗な声だなと思った。

 水面のように透き通った美しい声であった。

 そんなことを考えていたため、俺はまたボーッとしてしまっていた。

「まったく。Sランク冒険者が現れたと聞いて迎えに来たというのに。こんな情けない人だったとは」

 銀髪の美少女は、ヤレヤレと首を横に振って俺のことを見下してきた。

 なぜ出会ったばかりの少女に呆れられ、見下されなければならないのか理解ができなかったが、俺はある言葉に引っかかった。


(ん……? 迎えに来た?)

 迎えに来たとはどういうことだろう。

 それにどうして俺がSランク冒険者だということを知っている?

 そんな考えを逡巡させているとまた銀髪の美少女は、大声を出して通告した。

「もう! 私の声が聞こえていないの? 迎えに来たって言っているの!」

 少女は今度は少し怒気のこもった声で、俺のことを注意した。

「あー、ごめん。聞こえてるよ。でも迎えに来たってどういうこと?」

 そう聞くと少女は、胸を張ってキメ顔を見せながらこんなことを言ってきた。

「君を私のパーティに入れてあげる。そう言ったら君はどうします?」

「え、ええ!?」

 俺はついさっきパーティを追放されたばかりの人間だ。

 パーティという言葉には、しばらくいや下手をしたら一生関わらずに人生を終えるかと思っていた。

 そんなことを考えていた俺が、まさかパーティに勧誘されるとは思っていなかった。

 だが、この少女どう見ても強そうには見えない、パーティ勧誘を行える程強いのだろうか? そんなことを考えながら、少女のことを訝しげに眺める。

 するとそれを察したのか銀髪の少女は、こう反論してきた。


「あれ? もしかして私の実力が疑われてる? 当然だけれど私もSランク冒険者ですよ」

「え、ええ!?」

 俺はまた、驚きの声をあげてしまった。

 それを見て彼女は呆れた表情を浮かべる。

「もうあなたさっきから驚き過ぎですよ? こんなんじゃ私のパーティについて来れるか心配だわ」

「いや……話がさっきからぶっ飛び過ぎててついていけないというか」

 そう返すと少女はなるほどという顔を浮かべた。

「ところで、君のパーティは何人の人がいるんだい?」

「一人ですよ」

「じゃあ俺を入れて三人か」

「いや? 君を入れて二人ですよ?」

「え? は?」

 待て待て、それはつまり誰も同じパーティに人がおらず俺が初めてのパーティ員ということではないか。

 大丈夫なのか、この娘。そんな疑念が一気に沸いてきた。

「つまり俺が最初のメンバーということでいいのかい?」

「ええ、そうよ!」

 少女は一点の曇りもない笑顔を浮かべ、俺に返した。

「私のパーティの目的は、ずばり世界を救うこと! そのために強いメンバーが欲しいの」

「世界を救う……?はぁ」

 俺はイマイチ要領の得ない回答をする。

 世界を救うと言ってもどうやって? というよりも世界を救うってつまりはどういうことだ?

「君、疑っているでしょう? 私は本気よ。私は本気でこの世界を救いたいと思っている」

「でも具体的にどうやって?」

「ずばり魔王を倒す。 それだけよ」

「魔王を倒す……?」

 俺にとってそれは遥か雲の上の話で、本気でそんなことを考えたことなどなかった。

「いや確かに魔王を倒せば世界は少しは平和になるかもしれない。けれど、それで本当に世界が救われたことになるのか?」

「なる!」

 少女は純粋で真っ直ぐな瞳を煌めかせ、俺に夢を語りだした。

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