逆走
俺達が右に進んであらかたモンスターを倒し終えた時であった。
何か地響きのような音が聞こえてきた。
「なあ、皆このダンジョンちょっと揺れていないか?」
俺はそんな不穏な気持ちに駆られて、皆に大丈夫かと尋ねるが誰も物音に気がついていないようであった。
これは俺の職業による、特性によるものなのかそれとも俺の考え過ぎなのかはわからなかった。
しかし、俺の感覚を頼りにするならば確実にこのダンジョンから物音が聞こえてきいた。
しかもその数は多い。五や十では効かない程ガチャガチャとけたたましい音をかき鳴らしていた。
もしかするとモンスターかもしれない。そう考えて俺は、皆に攻撃に備えるよう伝えた。
その軍勢が目の前にやってくるころにはもう、ガチャリガチャリというような音ではなくドドドというような
猛牛が爆走してくるような音となっていた。
軍勢の正体は、アマタ達であった。
「やあ、ナユタ。わざわざこっちのモンスターを狩り尽くしてくれてありがとう」
そう言って開口一番に俺のことを煽ってきた。
そうか俺達は嵌められたのだ。俺達がアマタの位置を感知できていたのと同様に彼も俺達の位置を感知できていた。
つまり俺達のことを最初からアマタは知っていて、あえて俺達に右にいるモンスターを倒せるため左に行ったフリをしたのだ。
そんなこととも知らず俺達は、ご丁寧にアマタが通りやすいように右にいるモンスターをあらかた倒し終えてしまったのだ。
悔しいという感情よりも先にしまった。という感情の方が来た。
俺達はなんて間抜けなことを晒してしまったのか! それに、引き換えアマタの機転の利かせ方に恐れ行ってしまった。
動揺する俺達を尻目に、アマタ達は先へと進もうとした。
「どうしますか?」
ルリが不安そうな目でこちらを見つめてくる。
正直言って予想外の事象に俺も対処に悩んでいたのだが、ここは落ち着いて決断をくださなくてはならない。
「やられてしまったことはしょうがない。ここで文句を言い合っても虚しいだけだ。それより奴らが先攻してモンスターを
倒してくれている間に俺達は別のことを考える時間があるじゃないか」
「別のこと?」
ルリは呆気にとられたのかポカーンとどこか虚ろな表情をしていた。
「ああ、そうだ。守護者を討伐するための作戦会議だ。奴らちょっと俺達に先攻できたと思っていい気になっているはずだ。
そこを逆に攻勢に撃って出れば俺達が逆転できる見込みだってまだまだある」
俺はそんな負け惜しみに近いような理屈を展開したが、ルリ達はどうやら納得してくれた様子であった。
「確かに、今のあの人達はちょっと浮かれているかもしれません。そうなればこちらが勝てる可能性だってまだまだありますも
んね!」
ルリは気がついていないようであったが、少し声が震えていた。
やはり俺達が彼らのアシストをしてしまった事実にまだ、動揺している様子だ。
しかし、そんな時こそ強く前にでろ! それが俺の自論だ。
とにかく彼らが馬鹿正直にモンスターを俺達に狩ってくれている間に、守護者攻略の道筋を立てるのべき。
それが俺達の出した結論であった。
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