俺だけが頼める異世界食堂の裏メニューin王都
「すみません、注文大丈夫でしょうか?」
そう俺が声をかけると、はーいという声だけが裏から聞こえてくる。
時間帯はお昼時を少し外れているため、店員さんの数は少ない。
店員さんは主に、裏に引っ込んでいることが多く呼び鈴を鳴らしてもなかなかやってこない。
そのためわざわざ声がけをする必要があった。
俺達がしばらく待っていると、一人の若い女の店員らしき人物がやってきた。
若い女の店員はやってくるなりなんなり、俺に気がついて声をかけてきた。
「あ、もしかしてナユタさん?」
「え? どうして俺の名前を?」
俺が尋ねると、店員さんは笑って答える。
「こんなことを言うのも可笑しいかもしれませんが、昨日あなたがやってくる夢を見たんです。いや自分でも可笑しいこと言ってるって
わかっていますが、はい」
この会話どこかでしたことがある。
そうだ。いつも行く店の店主とついこの間したばかりだ。
そうなると当然気になることが一つある。
「あのもしかして俺にこれから裏メニューとか提案したり?」
「え! なんでわかったんですか? そうです、夢に出てきた裏メニューをこれからご提供しようかなと思いまして」
やっぱりだ。思っていた通りこれから裏メニューを提供してくれるようだ。
こうなればもう聞くまでもない。俺は迷わずその裏メニューを注文した。
裏メニューはステータスアップにばかり目が行きがちだが、実は味もなかなかのものだ。
特に俺が最初に頼んだあの裏メニューの味は忘れられない。
今もあの味が食べたくて、何度も店主に作ってくれるようせがんだが、どうしても手に入らない材料らしくそれは叶わなかった。
今回はどんなグルメが出てくるのか出てくる前から楽しみでしょうがない。
それを考えると今からニヤケ顔が止まらない。
「何ニヤニヤしているんですか?」
おっと、これはしまった。ニヤケ顔をルリに見られ、それを咎められてしまった。
いつも食事をする際は、一人で食べることが多い。
なのでついつい口元が緩んでしまう。
しかしそれではパーティリーダーとしての威厳が保たれない。
俺は固く口元を閉ざし、なんでもないような風を装う。
それを見てルリは「もう変なの」と苦言を呈する。
「いやー、すまんすまん。今からどんな裏メニューが出てくるのか楽しみでな。つい」
それを聞くとルリはより呆れた顔を浮かべる。
「もうナユタさん忘れたんですか? 今ここで食事をしているのは、サーシャさんの歓迎会を兼ねてのことですよ? ただ料理を楽しもうとしてどうするんですか」
「いや悪い、悪い。それぐらいあの裏メニューの味が忘れられなくてな。ルリもあれうまかったろ?」
「それはまあ……」
そういうと一転攻勢ルリも口をすぼめてしまう。
やはり上手い飯にはどんな人間も本能的に抗えないものなのだ。
うんうんとルリを丸め込めたなと思った時であった。
「ってなんで、ナユタさんが食べる前提なんですか! これはサーシャさんの歓迎会を兼ねてるってさっき言いましたよね! ここはサーシャさんに召し上がっていただきましょうよ」
「あ……」
そう言われると俺はなんて言ってよいかわからず苦しい。
確かに道理で言えばサーシャが裏メニューを食べるべきだ。
だが一つ気になることがあった。
「でもさ、ルリ。もしサーシャが裏メニューを食べてめちゃんこ強くなったらどうするよ? 突然抜けるって言い出したら困るぜ?」
「それってサーシャさんを信頼してないってことですか?」
コソコソ声で俺達二人は会話をする。
でもルリも確かにと言った顔で、俺に同意を示す。
そんなことを考えていると裏メニューが届いた。さてどうしたものか。
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