勝利の後に
「もう意味がわかりませんよ」
俺達はレイの帰還魔法で、ギルド役場へと戻りミッションを自分で発注して自分でクリアしたことを伝えに言っていた。
「何が意味わからないんだ?」
俺は思わず愚痴をこぼすルリに尋ね返す。
どうやらルリは、何か不服なことを一物抱えている様子だ。
「だって自分で受注したミッションを自分でクリアしたところまではまだいいです。あまり役に立ちませんでしたけど、情報
を集めることができましたから。けれど、最大の報酬である守護者の鍵をアマタさんに渡しちゃうなんて」
ああ、そんなことかと俺は鼻で笑いそうになったが、それを堪えてルリに笑顔で微笑みかけた。
「あげちゃっても大丈夫なのさ、そもそも俺達はアイツがいなかったらここにいないかもしれない」
「それはそうですけれども……」
アマタがいなければ、俺達はここにいなかったそれは紛れもない事実だ。
それを言われたら元も子もないと言った様子で、ルリは口ごもってしまった。
生来気の弱い性格のルリは、こういう時何か言い返せない癖がある。それを見越して俺はこう返したのだ。
それを傍から見ていたレイは俺の考えを察したようである。
「なるほどね。もしかして鍵をアマタよりも多く集める気なんだろう? そうすれば今あげちゃっても問題ない。そういう考えなんだね?」
「まあそんなところかな」
俺はズバリと満点の回答をされ、少しくすぐったい気持ちになるが逆にそれはレイが俺の考えを完全に理解してくれている証でも
あるので、全く構わないむしろ好ましいことであった。
「けどあんまりアマタを舐めないほうがいいと思う。今回は、運悪くあの追放勇者にやられてしまったけれど次回はどうなるかわからない」
「ああ、それはわかっている。それにアマタのことを舐めているっていうのは誤解だ。ただ貸し借りなしの対等な立場でありたかった、それだけのことなんだ」
──もしかしたら俺は嘘をついているのかもしれない。アマタのことを舐めてはいないといったが、事実彼はバベルに負けた。俺達もまずい状況
にまで追い込まれはしたが、彼のおかげとはいえ勝つことができた。
この世界では勝った負けたが全てだ。負けたものは全てを失い、勝ったものだけが何かを得る。
そのルールにおいて、アマタは一度負けてしまったのだ。だから、無意識に彼を見下していても不思議ではない。
だが俺は胸に誓わないといけないことが一つある。
彼は一度負けたが、それを乗り越えることができた。
それは紛れもなく彼の糧となることであろう。
始まったばかりのこの王位を賭けた、守護者の鍵争奪戦必ず勝って彼を味方につけたい。
それがレイとの約束を果たすことの第一歩になることだ。
そんな時ふと俺の頭にある疑問が浮かんだ。
「なあレイ、アマタは何の職業なんだ? やっぱりあの圧倒的な魔力の量からして魔導師系の職業か?」
「わからない……けど、魔導剣士系列の職業であることは知っている」
「魔導剣士か……え!? それは本当か?」
魔導剣士とは、普通魔力が魔導師より劣り剣の扱いも剣士よりも劣るという器用貧乏な職業だ。
更に言うならば、勇者のように特別なユニークスキルを持っているわけでもない。
しかし俺が見たところ、魔力の量はレイすら凌駕し剣の腕前は、両手剣なら俺よりも上手だ。
器用貧乏でない魔導剣士とは、すなわち万能を意味する。
──そうか。この世の中には、不遇と言われる職業でも極めれば未知の領域に到達できるそんな凄い人々がいるのか。
俺はまた新たな世界をほんの少し垣間見た感じをした。
「でもアマタって仲間を全滅させられたんだよな? どうやってダンジョン探索をするんだ?」
「たぶんお祖父様のところへ言って、精鋭部隊を用意して貰ってるんだと思う」
「そっかあ、やっぱ権力者って奴はそういうとこ有利だよなあ」
その発言にレイはちょっとムッとした表情を浮かべ、いかにもそれは違うということを言いたげだ。
「悪い、悪い。本当に他意はなかったんだって。で、レイ。相談なんだが、俺達にもその精鋭部隊を回してもらうこととかって?」
「無理。私あなたの言うような権力者じゃないから。それと精鋭部隊を用意する手段なら他にもあるわ」
どうやら、相当レイの機嫌を損なうような発言を俺はしてしまったらしい。しかし、なんなのだろうか? その精鋭部隊を用意する方法とは。
「本当に悪かったって。それで精鋭部隊を用意する方法ってなんなんだ?」
「はあ、君は本当になにも知らないんだね。ついておいで、その場所へと案内してあげるから」
そういって俺達は、彼女の案内の元ある場所へと移動した。
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