追放勇者のスキル『搾取』
よし、敵は怯んだ。このまま一気に押し込んでしまおうそう考えて俺は連撃を放った。
その攻撃をバベルは真正面から受けた。
(おかしい……! 弱っていたとはいえあれぐらいの攻撃なら避けれたはず……?)
俺がそんな疑念を抱いた次の瞬間であった。
バベルは妖しげな笑みを輝かせたのがわかった。
(しまった……! やっぱり何かの罠だったんだ。でも何をする気なんだ?)
バベルは答え合わせをするかのように、右手を真上に掲げてその拳を輝かせだした。
「スキル発動!弱き者を虐げるユニークスキル『搾取!』」
「何!? ユニークスキルだって」
俺はユニークスキルというものは、冒険者だけが使える特別な力だと思っていた。
しかしそれを真っ向から否定する存在が、目の前に現れたことに俺は面食らう。
「グハハハ……! どうよどうよナユタ! 俺は新たな力を得た、さぁどうするかなぁ?フフン」
奴は雄叫びのようにそんな言葉を吐き捨て、俺が与えたダメージが見る見る回復していくのがわかった。
(なんなんだこのスキルは。俺には効いていないようだけれど……)
そう考えた次の瞬間奴がスキルを発動する前に放った言葉を思い出し、ハッとした。
弱き者から力を吸い上げるスキルだということは推察できた。つまり弱っているルリから更に生命力を吸い上げる
凶悪なスキルなのだと。
「やめろ! バベル」
「クハハハ。やめないねえ、お前は相変わらず足元がお留守なんだよ」
確かにその通りかもしれない。何度も同じように先手を食らってはそれを後手後手に回って対処しているのが俺だ。
バベルは俺からわざと攻撃を食らうことでおそらくスキルの発動条件を満たし、わざと弱らせたまま放置しておいた
ルリから生命力を奪う。
まるで、人をただの回復ポーションと同等の存在としか考えていないような、そんな下卑た考えが透けて見える嫌なスキルだ。
バベルのユニークスキルを食らってしまったルリは、苦悶の表情を浮かべバタバタともがき苦しむ。
それに反比例するように、バベルの肌ツヤがよくなっていくのが見て取れる。
「悔しいよなあ? ナユタ。さあそこで何もできない無力感をたっぷり味わってな。ルリが死んだら次はお前を斬り刻んで喰い殺してやる」
バベルにいけしゃあしゃあと出し抜かれたのは確かに悔しかった。だが俺は今までのような命令されるだけの荷物運びではない。
今はパーティリーダーとして、ルリとレイを守っていかないといけないのだ。
そしてその力が俺にはある。そのことをバベルに示すいい機会だ。
「確かに悔しいよ。だけどだからといって俺は負けねえぜ? 俺もユニークスキル発動! 富める悪から恵まれない善良なる者に力を分け与える!」
「何……!」
次の瞬間醜悪なる化物となったバベルから生命力を引き剥がし、善良なる弱気ものルリに生命力が行き渡っていった。
バベルの使ったいわば引き算のスキルと、俺の使った足し算のスキル。
どうやら奴が搾取する分量よりも俺がルリに力を分け与える分量の方が多いようであった。
奴の身体はみるみる生命力を失っていき、逆に先程まで苦悶の表情を浮かべていたルリは加護の力により安らかな表情へと変化していった。
「チキショ……! ナユタアアアッ」
どうやらこれが奴にとってのとっておきの秘策だったようだ。 しかし、奴のとっておきの秘策も俺には通じなかった。
肉弾戦でも俺の方が上、スキルでも俺の方が上と来るともう奴に勝ち目はない。
奴は恨めしそうにこちらを睨みつけ、手詰まりだということが伝わってくる。
よし、これなら! そう考えて俺は一気に畳み掛けるように斬撃を放つ。
奴は今度は仰け反ることで躱そうとするが、生命力を奪われ弱った奴の動作は遅い。
回避が間に合わずに、あえなく攻撃を何発も受けてしまう。
「グハッ……!」
それにより、より多くの生命力を消耗し奴の動作はますます鈍くなっていった。
更に畳み掛けるように、奴の不運は続いた。
「いきなり走り出してどうしたんだい?」
レイが俺に追いつてきたのである。
これにより、こちらは戦えないルリを除いても数的有利をとることができた。
俺は奴の凶行を終わらすことのできる日は今日なのだと確信した。
しかし、奴の反応は俺が予想していた者とは真逆の者であった。
「ナユタ、お前もついていないな。これで俺にも勝ちの目が出てきたよ」
「なに……!」
ほざけと俺は思ったが、どうやら奴の態度を見るに何かしらの勝算があるということは間違いなさそうだ。
そしてそれを裏付けるように、「あっ。これマズイ」と小声を漏らした。
おそらくユニークスキルで十秒後の未来を見たのであろうが、一体何が起こるというのであろうか。
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