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追放勇者バベル

 俺達はアマタが襲われたという場所へ着くとさっそく野営を始めた。

 いつ現れるか、もしくは現れないかもしれないバベルを待つための野営。

 できればクリーチャーと化し人を喰らった元仲間をの姿など見たくはないのだが、事実そいつがこの世界に存在しているのだ。

 倒さないわけにはいかない。それ勇者であったバベルへのせめてもの手向けだ。

 俺は、野営のためまずテントを広げ、雨風を防げるようにした。

 こんなことをしていると、やはり荷物運び時代のことを思い出す。

 あの頃は、こんな雑用ばかりさせられていて冒険者らしいことなど一切したことがなかった。

 しかし、その経験が皮肉にも今いやこれからも生きてくるかもしれない。

 そう考えると全ては無駄ではなかったのだと一人で感慨深い気持ちに浸っていた。

 そんな虚ろな気持ちで作業をしているとだ、近くから甲高い悲鳴が聞こえてくる。

「イッタ!」

 俺は何が起きたのかと思い、悲鳴が聞こえた方に武器を持って走って向かった。

 そこには、釘を打ち付けるハンマーで手を打ってしまった何とも鈍臭いレイの姿があった。

「レイ。お前、なにしてるんだ?」

「……何って、そりゃあ見たらわかるだろ? テントの設営準備をしているのさ」

 俺はそのあまりに滑稽な姿に思わず吹き出しそうになったが、本気でやっている人を馬鹿にするのはよくない。

 そう考えてこみ上げてくる笑いを抑えて、レイに退くように言った。

「悪いね。私こんなことしたの初めてだからさ、あんま要領掴めてないんだ」

「いいよ。俺も最初のうちは全然できなくて、バベルにどやされていたから」

 あれだけ戦闘や職業に関しては強いレイも、いざ雑用をやらせればこの体たらくなのかと俺は微笑ましく思えた。

 ──しかしだ。逆に考えると、俺達も戦闘や職業に関する知識面をレイに尋ねる際俺達と同じようなことを思われているのかもしれない。

 そう考えるといつも呆れたような態度をレイが取るのも無理のないことのように思えた。


 俺はレイに代わって、雑用をテキパキとこなし炊事担当のルリが役割を終えるのを待った。

「それにしてもルリの奴遅いな、もう出来ていてもおかしくないはずなのに」

「確かに言われてみれば、そうだね」

 俺はなにか胸騒ぎがしたので、ルリがいるはずの炊事場へと急いだ。

 しかし、その炊事場には本来いるはずのルリはいなかった。

「ルリ!」

 俺は叫び声をあげ、同時にスキル『利き鼻』を使ってルリの消息を追った。

「あっちだ!」

 俺が指差した方向には、魔物が棲み着く森が存在しそれこそ今のバベルがいそうな場所だ。

 ──無事でいてくれ。俺はそう願いながら森へと足を急いだ。

 しかし、俺の期待に反して森の中を進むにつれルリとあともう一人バベルの臭いが濃くなっていくのを感じた。

 しかもだ。血の匂いがする。

 これは間違いなくルリの血の匂いに違いない。

 アマタを一瞬でズタボロにした程の実力を持ってしまったバベルだ。

 もうルリの命はないかもしれない。

 ──天は俺を見放したかと絶望感に沈みかけていたときであった。

「よお、ナユタ」

 そこには、ルリを戦闘不能状態に追い込んだバベルの姿があった。

 バベルの顔や胴体は人間時の美しさを保っているが、四肢は醜いクリーチャーの姿をしておりそれがより劣悪さを引き立てるコントラクトになっていた。

 俺はその醜さに吐き気を催しながらも、必死に抑えて短剣を構えた。

「おいおい、かつての仲間。それもパーティリーダーに刃を向けるのかよ? なあナユタ」

「お前は今の俺の仲間であるルリを傷つけた、それだけで俺はお前のことが許せない」

 バベルは不気味な笑みを浮かべながら、俺と対峙しそんな言葉を吐き捨てた。

 奴がどんな攻撃をしかけてくるのか? それがわからないうちは攻撃のしようがない。俺はなるべく距離を保ちながら虚空を貫く斬撃を放った。

 しかしその斬撃は、奴が身を翻すことで虚しく躱されてしまう。

「おいおい、忘れたのか? 俺がお前ごときに苦渋をなめた最初の戦いと同じ攻撃パターンだぜ。当然効くはずがないよなあ?」

「ああ、わかってるさ」

 俺は奴が一度仕掛けられた攻撃に対策出来ないほどの実力がないことは知っていた。

 だからこそ俺もその一手先をゆく対策をあらかじめ用意していた。

 それがもうすぐわかるはずだ。

「グフッ!」

 奴が情けない声をあげ、その場でフラつくのが見えた。

 そう。俺は斬撃を放った時躱されるのを見越して、最後の一発だけ敢えてスローになるように調整を行っていたのだ。

 それを傷つかず奴は、俺に近づいてしまったため斬撃が一発当たったのだ。

「チクショ……! ナユタめ」

 奴は憎しみの表情を浮かべ、俺を激しく睨みつけてくる。

 よし、これならいける。しかし、それは大きな俺の油断であることを思い知らされるのであった。


お読みいただきありがとうございます。

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