追放勇者の倒し方
「それでだけど、バベルの倒し方については当然もう考えてあるんだろうね?」
「ああ、勿論さ」
レイが訝しんで尋ねてくる顔に対し、俺はニヤリと口角をあげる。どうやら俺が勢いだけで進む男のように思われているらしい。
この数日間俺は地道に足や人の伝手を使って、情報を地道に集めてきた。
それは確かに実らないものだったが、アマタの証言によって状況は覆った。
敵。つまり、バベルは明確に俺を敵視しており、人間まで喰らう外道にまで成りさがった。
つまりは、俺が撒き餌、囮となって奴の出現しそうな場所に行けば、自然と奴のほうからやってくる。
それがまず第一の作戦だ。それをまず皆に口頭で説明した。
「なるほど。確かに筋は通っていると思うし、まず遭遇しないことには倒しようがない。第一関門は恐らく突破できるだろうね」
「そうだろ? まず倒すには遭遇しないといけない。それが最大の関門といっても過言ではないからな」
俺が自慢げに展開した自論は、基本辛辣なレイをも唸らせるものであった。
まず遭遇しなければ情報すら集まらないということは、この数日間で身を持って体現してきた。
そこから導き出した答えなので我ながら自信があった。
「それでだけれど、具体的にバベルという魔物の弱点について教えて欲しいな。それがないとせっかく遭遇しても有効に戦えるかはわからない」
レイは次の段階である具体的にどう倒すかについて聞いてきた。
ここは自信を持って、具体的にどう対処すればよいかについて語れるなにがあればよかったが、残念ながらそれは持ち合わせていなかった。
そのことを俺は素直に伝える。
「すまない、これといった具体策はないんだけれど、絶対に勝つという自信はある。俺は奴よりも絶対に強い。それにだ」
「それに?」
俺は息を一呼吸整えて、今言おうとしていることを頭の中でまとめあげた。
それはアマタへの思い、バベルに対する気持ち、そして自分から皆に対しての決意表明など様々な感情であったため、まとめあげるのに時間をとても
要したが、ゆっくりと噛みしめるように話した。
「それにだ。レイ、アマタっていうお前の弟がやられたんだ。悔しいとかやり返してやりたいとう気持ちは沸かないのか? 少なくとも俺ならそう思う。
ただ、俺がバベルを倒したいという気持ちはただ単純な仇討ちではない。あいつを元仲間として認めて、これ以上凶行を繰り返す前に倒して
罪を償わせてやりたいんだ。そのために具体的に勝つための作戦はないんだけれど皆俺についてきてくれないか?」
たったこれだけのことを言い切るのに随分と時間を費やしたと思う。自分で言っておいてなんだが大変勝手な提案だと思う。
俺がもし付き合わされる立場なら御免被りたいところであった、しかし。
「わかったよ、私は君のパートナーとして着いていくよ」
「わ、私もナユタさんの力になりたいです」
「みんな……」
俺は溢れ出る感情を抑えきれなくなりそうであったが、必死に抑えて「ありがとう」と深々とお礼を言った。
「それで今からバベルさんを倒すために出発するんですか?」
「いや、流石にそんな闇雲に歩みを進めることはできない。ちょっと事前準備をしてから奴を討ちに行く」
そう言って俺達は、事前準備のため市場へと向かった。
まずは武器や防具を調達し、回復薬等の消耗品、後は単純に長丁場になることも想定しての食料の買付のためだ。
そのための費用として、守護者を討った時やダンジョン攻略を行った際の報酬金を沢山ばら撒いた。
正直言ってこのお金は、あぶく銭だと自分でも理解はしていた。
きっと何か大きなことをする際に一気になくなってしまうお金だと。
しかし、それが元仲間であったバベルを討伐するための資金になるとは。
そう考えるととても辛かった。
そのせいか俺は後ろ向きな気持ちなってしまい、レイに思わずこんなことを尋ねてしまった。
「なあ俺達って世界を救えるのかな?」
「救えるさ。私が見込んだパートナーだもの、間違いない」
レイからはいつも通りの答えが返ってきたが、根拠は全く提示されなかった。
だが、今は逆にそれ安心できた。それくらい盲信できる何かがないと世界なんて救えない、そう考えたからである。
「ごめんな、ちょっと後ろ向きになってた。よし! 世界を救いに行こう」
「ああ、そうだね。ここで足踏みなんてしていられないよね」
そう言って俺とレイ、そしてルリは事前準備を行った後アマタが襲われたという場所に行って、バベルが現れるのを待った。
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