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魔物と化した追放勇者

「バベルだ……」

 俺は言葉を失い、その場に立ち尽くしていた。

 なぜ彼が? 未だに生きていたのか? 等様々な疑問が浮かんできた。

 それにしてもバベルはついに魔物にまで身をやつしてしまったのかと憐れな気持ちになってしまう。

 つい数日前までは、俺を顎で使い倒し決して逆らえないランク制度にあぐらをかいていたあのバベルが、今や

魔物となり俺はSランク冒険者として守護者を倒すまでになった。

 人生どこに分岐点があるのかわからないものだと思い知らされるばかりであった。

 しかし憐れんだからといって、彼を野放しにしておくわけにはいかない。

 なぜならばもう既に、アマタや彼の部下が彼の手にかかってしまっているからだ。

 迅速に彼を見つけ出し、対処しなければ。それがかつての仲間だった者のせめてもの手向けだと俺は考えた。

 俺は唖然としてその場に棒立ちしていると、ルリが何があったのかを尋ねてきた。


「バベルさん……? 彼がどうかしたんですか?」

「いや、その」

 このままルリに真実を伝えてもよいのだが、俺も正直言ってバベルがここまで堕ちたということは信じ難いし

なによりも、まだアマタの記憶を覗いただけなのでバベルだと確定したわけではない。

 だがだからといってこのことをいつまでも隠しておくわけにはいかない、俺はそう考えて包み隠さず見えてきた

映像そのままのことをルリへと伝えた。

 するとだ。ルリも神妙な面持ちになり、まるでこれが嘘だと言って欲しそうな顔を浮かべているではないか。

 俺はレイの方を向くが、彼女はあまり興味なさそうな顔を浮かべていた。

 それもそうか。彼女にとってバベルは、つい数分一緒に居合わせただけの冒険者であり、むしろ自分の弟を傷つけた

魔物なのだから。

 魔物は全て倒すというのが信条の彼女にとって、バベルといった魔物がどういった存在なのかはこれっぽっちも興味

がなくてもしょうがない。

 むしろ彼女にとって、興味があるのは奴が今どこにいるのか? 奴がどんな攻撃をしかけてくるのかといったそういった

情報のほうであろう。

「何はともあれ倒さなくちゃな。特にこれだけ危険な魔物ならな」

「ナユタさん……本気ですか? 元仲間ですよ」

「元仲間だからこそこれ以上奴の魂が堕ちていく前に止めてやりたいんだ!」

 俺は声を荒げ、ルリを説得した。それに対しルリは涙を流しながら、「そうですね」と二度呟いて肯定した。

「で? 倒すといってもどうするんだい? しばらくはアマタから情報は聞き出せないだろうし。方向性だけでも考えているんだろうね?」

 レイが妙に嫌味ったらしく尋ねてくるが、確かにどういう方向性でバベルを倒すかは決めておかないといけない。

 でないとアマタのように……考えたくはないがああなってしまうかもしれない。

「とりあえずここは人の力を借りる! ギルドにミッション依頼を出して少しでも情報を集めにかかるんだ」

 それを聞いたレイはニッコリと笑みを浮かべ言った。

「まあ妥当な線だね。とりあえずアマタは私が看護しておくから、君たちは役場へと行ってきなよ」

「わかった!」


 俺はレイをその場において、ルリと一緒に役場へと向かった。

 役場へと着くと、いつもいる受付嬢がまた来たかと言いたげな面持ちで俺達を待ち構えていた。

 俺はそんなことに目もくれず、受付嬢にこう尋ねた。

「ミッションを依頼したいんだができるか?」

 そうすると受付嬢は、「でしたらそこにある依頼書を提出してください」と事務的な対応で俺達に応えた。

 俺はこんなところで足踏みはしていられないのに……とせかせかする気持ちを抑え、依頼書に詳細な情報を記載し受付嬢へと提出した。

 すると受付嬢は依頼書を受理する際に依頼料が必要だと言ってきたので、今日貰ったミッションの報酬ほとんどをその依頼料にあてることとした。

 それに対しルリが何か言うかと思ったが、彼女もそれに異存はないようであった。

 受付嬢は目の前に置かれた金貨の山に少々驚きつつも、また事務的な対応で俺達の依頼を公布してくれた。

「頼む……! 一日でも早く何か情報をくれ」

 俺はそう願いつつ不安な気持ちを抱えながら、数日を過ごすことになった。

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