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追放勇者の亡霊

 医務室のベッドで眠りについていたアマタが目を覚ました。

 出会った時はほぼ無感情な子だなと思っていたが、この時ばかりは流石に彼も動揺していた。

「ぼくのせいで……ぼくのせいで」

 彼はポロポロと泣き出し今にも気持ちが溢れ出しそうな勢いであった。

 それを俺は察して、優しく彼の背中をさすってやる。

「ゆっくりでいいから何があったか話してくれないか?」

「あぁ……ああ……」

 彼は身体上は元通りになったものの、どうやら精神的にはまだボロボロの状態のままのようである。

「あの私……ちょっと出ていきますね」

 あまりにいたたまれない雰囲気に、耐えきれなくなったのかルリは部屋から出ていってしまった。

「ああ、まあ兄弟でなら話せることもあるだろうしな」

 俺もそれに同調して、部屋から出ていこうとしたがアマタが制止する。

「ナユタだけ残って。姉さんには出ていって欲しい」

「はいはい」

「悪いな、まあ男同士だからこそ話せることってのもあるんだよ」

 そういってその場をなんとか取り繕って、アマタと二人にだけなれる状況を作り出した。

 そこまではよかったのだが、、次に何を話しだせばいいのかはどうも尻込みしてしまった。

 何があったかを下手に聞き出すと、彼のメンタルをまた大きく傷つけてしまうかもしれないからだ。

 沈黙を先に破ったのは、彼の方からであった。

「ナユタ、ぼく恐ろしいものを見た」

「ああ、わかってるよ。お前があんなにボロボロになるぐらいだもんな、そりゃあ恐ろしいに決まってる」

 俺は赤ん坊をあやす母親のように、優しく語りかけるがアマタの身体の震えは止まらなかった。

「ぼくのせいでいっぱいの仲間が死んだんだ」

「魔王を倒す過程においては、そういう犠牲もつきものだ、それに悪いのはお前じゃない。お前の仲間を殺した魔物だ」


 魔物その言葉を聞いて、アマタはまた震えだしてしまった。

 それには俺もしまったと感じ入り、どうしたものかと首をひねる。

 ともかくアマタをこんな状態にした魔物は危険だから倒さなくてはならない。

 それに、彼のトラウマを克服させるにも彼自信の手で魔物を倒せさせるのが一番だと考えた。

 ──当然それが荒療治で、至難の道であったとしてもだ。

 そのためにはまず彼から魔物の情報を聞き出すのが一番であったが、それは今の状態からだと難しいだろう。

「──そういえばなんだが、どうして俺だけを残したんだ? 姉であるレイを残した方が話もしやすかったんじゃないか?」

「……仲あんまよくないから」

「それは悪いことを聞いてしまったな」

 そうか、アマタとレイは仲がよくないのか。確かに最初に再会したであろう時もあまりいい印象ではなかった。

 これはまずいことを聞いてしまったかもしれない。だが彼は俺を残した理由を話しだしてくれた。

「あの魔物、ずっとずっとナユタの名前を叫んでた。とても恨めしそうに。それが耳からずっと離れないんだ」

「俺の名前を?」

 魔物が俺の名前をずっと叫んでいるのか、想像してみたが身震いをしそうになった。

「そう、それでその魔物四肢がクリーチャー化してるんだけど、それ以外は……」

「それ以外は?」

 その先の言葉をいい出そうとした矢先、アマタは物凄い吐き気のような感情が湧き出てきたのか、とても体調が悪いような真っ青な顔となった。

 やはり無理をさせるのはよくない。アマタを横にさせ今日はもう眠りにつかせることにした。

 俺はくれぐれも無理に思い出さなくていんだぞと繰り返しアマタに言い残し部屋を出た。


「どうでした?」

「いや、俺の名前を叫ぶ四肢がクリーチャーと化した魔物に襲われたってことぐらいしかわからなかったよ」

「そうですか」

 ルリはがっくしとした態度と表情を示した。

 しかし、実力の底知れないアマタをこてんぱんにするとは、その魔物如何ほどの力を備えているのだろう。

「ところでレイ、アマタとはあんまりそのよくないんだってな?」

「まあ。でも君には関係ない」

 確かに、王族ということもあり何か訳ありな家庭環境で育ったのだろう。

 これ以上俺が土足でずけずけと踏み入れる領域ではない。

 その時であった。俺の頭の中に閃光のようなものがよぎったのは。

 そうだ。この方法ならもしかすれば彼の口から以外でも、情報を得られるかもしれない。

「なあビショップってのは味方の嫌な記憶も消せるって聞いたことがあるけど本当か?」

「えーと、待ってくださいね」

 ルリは受付嬢から貰った膨大なスキル表の中から、それらしきものを必死に探しだした。

「あ、ありますね!」

「じゃあその記憶を他者に見せることってのは?」

「うーんうまく魔法を応用すればできなくはないかも?」

「やってみてくれないか!」

 俺はわらにもすがる必死な思いでルリに訴えかけた。

 それに対しルリはなるべくの範囲でと付け足して応えてくれた。

 一呼吸おいてルリは俺にアマタの記憶を見せる魔法を唱えてくれた。

「ビショップルリが命じる、彼の者の記憶を見せよ!『メモリー!』」

 ルリがそう唱えると、アマタの記憶が俺の脳内に映し出された。

 そこでは、仲間を虐殺される凄惨な記憶が刻まれていた。

「これならアマタがあんな調子になってもしょうがないな」

 俺は吐き気を催しながらも、グッとこらえて続きを見ているとあることに気がついた。

 相手している魔物の顔だ、あいつの顔は忘れもしない。

 なんと相手している魔物の顔は、俺を追放した勇者バベルであったのだ。

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