ルリの隠された才能
俺達は、役場へと向かうとさっそく能力測定を受付嬢に頼んだ。
するといつもの受付嬢は「またか」という表情を浮かべつつも、測定を行ってくれた。
「どうですか? 私のランクってどれくらいでしょう?」
ルリがウキウキとした表情を浮かべ、己の覚醒した力がどれほどのものか期待した様子がうかがえた。
それに対し受付嬢は、コホンと一度咳払いをした後各種ステータスを伝え後総合評価を下す。
「ルリ様の総合評価はAランク冒険者です」
「えー!」
ルリは嬉しさ半分、若干ガッカリ半分といった様子であった。
おそらく俺やレイと同じくSランク冒険者として肩を並べたと思っていたことだからだろう。
けれども受付嬢の話をようく聞いていたらちょっとだけ違っていた。
「ルリ様は総合評価ではAランク冒険者ですが、回復術師として特化すれば間違いなくSランク冒険者でございます」
「え、本当ですか!」
Aランク冒険者と告げられた後から、Sランク冒険者に匹敵すると言われただけでこの喜びようである。
勿論元がBランク冒険者のルリからすれば、Aランク冒険者になれただけでも十分過ぎるぐらい凄いのだが、一部才能
だけとはいえSランク冒険者と告げられたのである。
この喜びようにも納得するものがある。
そういえば俺の場合はどうだったけか? 確かいきなりランクアップした喜びよりも動揺の方が大きかった気がする。
兎にも角にもルリにも回復術師として、Sランク冒険者並の才能があることが今は純粋に嬉しかった。
「やったな! ルリ君もこれでSランク冒険者だ」
「はい! ありがとうございます。でも……」
「でも?」
「私今の職業だと回復魔法を使えないんです、だから転職しないとなって」
俺はSランク冒険者ではあるが、魔力がほとんどない。だから魔法使いに関する知識がないため、ここはやはりレイに助言を求めることとした。
「なあレイ、彼女が転職すべき職業とかってわかるか?」
そういって彼女のカタログスペック表を、レイへと手渡し勘案してもらった。
それを見て彼女は少し頭を傾げ、何やら考え事を始めた。
「えーと確か今彼女の職業は? 氷系のメイジか……だとすればビショップに転職するのがいいと思う」
他にも回復術師となれる職業は、パラディンやソーサラー等が存在するが彼女の職業適性などを踏まえた上で、ビショップが最適だと
彼女は語った。
「わかりました! 私ビショップになります、さっそく転職してきますね」
そう言って彼女は、今にもどこかへ走り出しそうな勢いで転職届を受付嬢へと提出した。
「まったく、回復術師なんて戦闘が起こらないと出番がないのに。今からこのはしゃぎようか」
俺はルリの興奮のしように戸惑いすら覚えたが、レイはなんだか神妙な面持ちを浮かべていた。
「どうした? まさか重傷者が近くにいるとでも?」
「わからない……けどなんだか嫌な予感しかしない」
女の勘というやつだろうか? レイは時折こんな不思議なことを言うことがある。
そんなレイの勘は数十秒もしない間に的中した。
「キャッー!」
役場の入口の方で、女冒険者の叫び声が聞こえてきた。
俺とレイそしてルリは顔を向かい合わせて、首を縦に振り叫び声が聞こえてきた方へと向かった。
叫び声が聞こえてきた場所、そこにはまだ年端もいかない少年か少女のような子供が倒れていた。
だが俺はこの子供が誰なのか義賊のスキル『利き鼻』を立てることでわかった。
「な! この子アマタだ」
「え!」
驚愕して顔を向かい合わせるレイとルリ、二人は動揺していて咄嗟になにをすればいいのかできずにいた。
俺はアマタの心臓に顔をあて、心拍がどれ程なのかを測るがもうほとんど危篤状態であった。
「レイ、ルリ。さっそく出番だ! お願い頼む」
うん。と二人は顔を向かい合わせて、二人同時に『ヒール』の魔法を詠唱した。
ヒールの掛け声と共に、徐々に塞がっていく傷口。
十数秒もしない間に、ボロ布の肉塊同然だったアマタは元の姿を取り戻した。
「迷惑かけて……ごめん」
そう一言呟いて、アマタは失神してしまった。
「そんな気を使っている場合じゃないだろ! クソッ」
俺は床を思い切り叩いて、失神したアマタを担いで医務室のベッドへと運んだ。
医務室のベッドで、苦しそうに眠るアマタを見て一言レイは「信じられない」と呟いた。
俺もそうであった。
まさかあのレイよりも遥かに才能があると見込んでいたアマタが、こんなボロボロの状態になって戻ってくるとは。
しかし、ありえないことが起きるのが冒険というものである。絶対など存在しない、それが恐ろしいところだ。
俺達は、アマタが起きて事情が聞き出せるようになるまで、ただベッドの横で起き上がるのを待った。
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