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俺がSランク!?

「おいお前随分遅かったじゃねえか、何してたんだ? あん?」

 勇者は俺を睨みつけてくる。

 どうもこうもない。俺はただ夕食を食べてきたばかりで定刻通りにギルドの宿泊場まで荷物を持ってきた。

「チッ、まあいいや。行くぞ」

 俺はホッと胸を撫で下ろし、今日はこれ以上ドヤされないことに安堵した。


 しかし、いつもならあれだけ四苦八苦して持ち運んでいる荷物だが、さっきから妙に軽い気がした。

 そんな違和感を覚えつつも、俺はチェックインを済ませるためギルドの受付までやって来た。

「勇者バベル様、荷物運びのナユタ様、後他数名ですね」

 そう言って事務的な対応で、受付嬢がチェックインの鍵を俺へ手渡した。

「おい待て! なんで荷物運びのこいつに鍵を手渡すんだよ! 普通勇者の俺に手渡すんだろ」

 バベルは激昂し、受付嬢へと突っかかっていくが、俺は敵わないと悟りつつも勇者の手を掴んだ。

「おい、離せよ」

「この人は関係ないだろ? ミスは誰にだってある、そんなことで一々怒っていたら勇者の名が廃るぞ」

「うるせえ!」

 そういってバベルは俺に向かって思い切り、拳を振り上げ殴りかかる。

 いつもならばこんまま勢いよく吹っ飛ばされるところだ。


 だが、どうだろう。殴られたはずなのになんの感触も沸かない、痛くないのだ。

 それを見ていた受付嬢は黄色い声援を浴びせてくる。

「流石Sランク勇者様ですわ! Aランクとはいえ荷物運び程度の攻撃じゃびくともしない」

「え?」

 俺たち二人はSランクという言葉を聞いて、硬直した。

 SとFの聞き間違えだろうか? そんな疑念を抱きつつも、もう一度受付嬢に確認をとってみる。

「あのー誰がSランクで誰がAランクなんでしょうか?」

「何をご謙遜を。あなた様がSランクでAランクで荷物運びがあちらの方でしょう?」

「えーーー!」

 俺は驚きのあまり、腰が抜けそうになる。

 一体何が起きたというのだろう、ただ裏メニューを頼んで食べただけだというのに俺がSランク!?

 しかもなんだか知らないが、俺が勇者ということに間違えられあいつが荷物運びということになっている。


「おい! なんかの間違いだろ!あいつはオールFランクのはずだ」

「えーっとすみませんが、あの勇者様の能力は私が見たところSランクで間違いございません」

 受付嬢は手元にあるステータス表示パネルを指差しながら告げた。

 それをバベルはまじまじと見て、遂に怒りは頂点に達した。

「なんだこりゃ馬鹿げてる! そんな偽ステータスなんて信じられるものかナユタ俺と決闘しろ」

「え? 決闘?」

 俺は困惑気味に首を傾げる。なぜならば俺は一度も剣など振るったことがなく、対してバベルは歴戦の猛者である。

 もしステータスの表示が何かの間違いであったら、間違いなく瞬殺されてしまう。

「いや、決闘だなんて」

 俺が後退りしようとしたその時、ギルドの周りにいた奴らから歓声があがった。

「おいおい、今から決闘が始まるらしいぜ!」

「相手はあのバベルとFランクのナユタらしいぞ」

「そいつはおもしれえ、何秒で惨殺されるか賭けようぜ!」

 こうなると俺が降りたくても、周りがそれを許してはくれなかった。

 俺たちは、そのまま地下にある決闘場へと連れて行かれた。


 決闘場へと連れて行かれた俺とバベルは、互いに対峙し目を向け合う。

 俺はここは穏便に済ませたかったのだが、相手は殺気だち開始のゴングが鳴ると同時に斬って殺さんばかりの熱を発している。

 それに怯えながらも、俺は剣を構え必死に戦う姿勢だけは見せた。

 すると周りの奴らから野次が飛んでくる。

「おいおい見ろよなんだあの屁っ放り腰」

「こりゃあ面白い虐殺ショーが見れそうだな」

 そういって周りはおもしろおかしく囃し立てる。

 それに呼応するかのように、ブツブツとバベルはこんなことを何度も繰り返し呟く。

「俺は強い。俺はAランクだ。あいつみたいな偽Sランクなんかに負けない」

 俺はその狂気じみた様に一層怯えていた。そして、始まりのゴングがなると奴は獣の如く一直線に俺へと斬りかかってきた。

 しかしその攻撃を軽くステップを踏んで俺はかわす。

 それに両者驚く。

「なんで俺よりアイツのがはやく動けるんだ!」

「なんで俺はこんな身軽に動けるんだ?」

 そんな疑問を浮かべつつも、俺は反撃とばかりによろよろと剣を振り下ろした。

 当然バベルはそれを軽い足踏みで完全にかわした。そのはずであった。

 俺の放った斬撃は空を斬り、真空波として奴へと伝わり完全に一発でのしてしまった。


「け、決着です!」

 レフェリーを務めていた受付嬢が、終わりを告げた。

 勝負は一瞬にして俺の勝利で終わった。

 それに対し、観客の声は歓声というよりかは一瞬動揺したかのような空気の揺らぎであった。

 だが、それも一瞬で黄色い声援へと変わりバベルへの声援は、罵倒へと変わった。

「おいおいなんだよ、Fランクにやられてやんぜ」

「本当はあいつ勇者じゃなくて荷物運びがお似合いなんじゃねえの?」

 自分自身なにが起こったのか全く理解できなかったが、とりあえずその日はバベルを一等室へと連れてベットに横にさせた。

 俺はというと、元々用意されてあった最下層の三等室で横になり一夜を過ごした。


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